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078話



 ゲイツ・サクラ・姫華の3人と合流した僕達。


 一番最初に姫華に飛びつかれ、サクラに抱きつかれ、ゲイツさんには頭を撫でられたりと、それぞれの心配したんたんだという表現を僕は黙って受け止めている。


 顔を抱き締めうしろ髪をグチャグチャにしながら、幼子のように泣きじゃくる姫華。


 3人の中でダントツに、感情が爆発しているが……。


「ーーん〜っ!苦しいぃ!」


 姫華の体で鼻と口を塞がれ限界を迎え僕は、全く満足する様子を見せない姫華の両脇を掴んで引き離す。


窒息死とか、冗談じゃないぞ。


 引き離した姫華の顔は涙と鼻水でグズグズだが、咎めるような瞳を僕に向けている。


「たまに、イリス殿とお出かけするので今朝もそうなんだろうと思っておりましたがのぅ」


「朝食の時間には戻ってくると待っておりましたが、一向にその気配がなく……」


「とにかく!心配したのじゃ!」


「「ごめんなさい(なのです)」


 機嫌良く村に帰ってきたラックの登場により、事情が発覚する。


 尚且、己の目的達成したことへの満足感で、想い人を助けてくれたカナタとイリスの存在を忘れ、何の悪びれもなく「アイツら?知らねぇ」と言う始末。


 あまりの誠意の無い彼の行動や言動に激怒した村の連中から、ボコボコに痛めつけられたラックは、そのまま村内にある悪さをした者を閉じ込める場所に軟禁され、想い人にも会うことを禁止されたらしい。


 ラックの話を元に場所を特定した3人が村を出る時、村長に「お詫びしたいので戻って来て欲しい」と言われたとの事。


「「必要ない❨なのです❩」」


 僕とイリスの答えは一緒だった。


 このまま、アルバ共和国に行く事に決める。


 そして、3人にシャルロッテとマリアンヌを紹介する。


「お二人とも、災難でしたのぅ」


 顎髭を撫でながら、2人に同情を向けるゲイツさんは、本当に良い人だ。


 サクラは、紹介した後に一礼してからは僕の左側に控えたまま動かないし、姫華は挨拶もほどほどに僕のフードの中に入ってそのまま寝てしまったし。


 意外と人見知りをする2人なのだった。


 僕達はそのままアルバ共和国へと向かう道と言っても、ゴツゴツした山肌を歩き続けている。


 馬車や人が通る為に軽く整備した道は、洞窟がある場所からはかなり離れているのでそれまでは鬱蒼とした森や大岩がゴロゴロ転がっている道なき道を歩くしかないのだ。


「ごちそうさまでした」


 少し開けた草原にて、やっと食事の時間が取れた僕は満腹感に幸せを感じていた。


「私達もご相伴に預かり有り難うございました」


 シャルロッテは、上品にナフキンで口元を拭きながら僕達に頭を下げる。


 椅子に持たれてお腹を撫でながらリラックスしていたマリアンヌは、(シャルロッテ)の行動に慌てて姿勢を正して頭を下げた。


大丈夫か?親衛隊隊長(従者)


 ちなみに、食事はアナベル姉さん(女神)特製の料理だ。


 時間的にも朝食というよりは、昼食を過ぎていたので、ガッツリご飯を選択。


 なので、メニューはオムライス&ハンバーグとシーザーサラダをチョイス。


 僕自身はカツ丼を食べたかったのだが、シャルロッテやマリアンヌはいかにも見た感じ貴族然としているので、庶民の味は自粛した。


 彼女達は、食事中しきりに「美味しい」を連呼していた。


 こんなにも喜んでくれたら、姉さんもさぞかし嬉しかろう。


「ところで、カナタ様達はアルバ共和国へはどの様なご用事で?」


 ティーカップを持ち、サクラの淹れた紅茶を飲みながら、僕達にシャルロッテは訊ねてくる。


「観光です」


「……えっ?」


「カナタ殿。今、観光(・・)と言いましたか?」


「はい」


「「………………………」」


ん?

何かおかしな事言ったかな?

言ってないよな?

うん。

言っていない。


「――私共は、カナタ殿の見聞を広める為の旅をしております」


 ゲイツさんが、にこやかな雰囲気を醸し出しながら、シャルロッテ達に話す。


 やはり、貴族に対しての話し方に変えているようだ。


「えっ?……そうでしたか。見聞を」


「それなら、納得ですね。姫様」


「えぇ、そうね」


 にこやかなやり取りをしながら、2人は再びティーカップに口をつける。


アレ?

その理由だと納得できるの?


「この世界の住人に『観光』という概念は、あまり浸透しておりませんでのぅ」


 2人に聞こえないような小声で、こちらに向かって眉を下げながら申し訳無さそうに言うゲイツさんに対して、僕は気にしないでと答える代わりに首を軽く振るだけに留めて椅子から立ち上がり、再出発を皆に促す。


 最近、日が落ちるのが早くなってきた気がするし、なるべくなら今日中にアルバ共和国に到着したい。


 残念だけど、正体を明かしていないシャルロッテやマリアンヌを、僕達の家に招くわけにはいかないからね。


 そして、片付けを終えた僕達は、アルバ共和国へと歩き出したのだった。

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