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077話



「――先ほどは失礼を致してしまい、申し訳ありませんでした!」


「あの、お気になさらずに……」


「いえ!命の恩人に刃を向けてしまうとは、騎士として恥ずべき行為!謝罪として私の首をーー」


「いい加減おやめなさい。マリアンヌ」


 白い甲冑姿の高身長の金髪女性から、猛烈な謝罪を一方的に延々と受け続けていた僕の目の前に救いの神が現れた!と、言っても白い甲冑姿の彼女に庇われるような感じて後ろに居たのだけれどね。


「しかし、姫様ーー」


「謝罪のゴリ押しは、感心致しませんわ。むしろ嫌われますわよ、マリアンヌ」


……ゴリ押しって。

確かに、そうだけどさ。


「き、嫌われる!?」


 警護対象と思われる人物からの言葉に、少なからずショックなご様子の白い甲冑姿の女性は、どういうわけだか僕をチラチラと気にしているような素振りを見せ始めている。


……なんだろう?

何で、僕を気にする?


「えっと、僕は大丈夫ですよ?」


「あぁ、良かった……」


 意外に気にしぃな人なのかな?

僕の言葉に胸を撫で下ろした様子の彼女を見て何となくそう思った。


……それに、謝罪しなくちゃいけないのは僕なんだけどな。


「あの……こちらも……ごめんなさい」


 持て余しを感じながらも、どうして良いのか分からないまま手にしていたコレ(・・)を思い切って、彼女の前に出してみる。


 石化が解けた彼女が僕を犯人と勘違いして斬りつけようと向けた剣が、振り向いた僕の右手甲に当たった瞬間、見事に真っ二つに折れてしまったのだった。


 無意識の行動では、未だに力の制御が上手くいかない。


 だから希に、こうして物を壊してしまう事が多々あったりする。


 イリス曰く、「鍛錬あるのみ。なのです!」だそうだ。


 白い甲冑姿の彼女は、己の剣がいとも簡単に折れたのを目の当たりにして、勢いを削がれた後に戦意を喪失。


 目を見開き驚愕の表情でこちらを見続けていたのだが、僕に剣先を向けた事に対してイリスが大激怒。

僕には背を向けていたから、イリスの表情は見えなかったのだけれど、白い甲冑姿の彼女の表情が驚愕から恐怖に変わったところで物凄い顔をしているのだろうなぁと察したりして。


――そんな調子で、今に至ります。


「でも、本当に助かりました。隣国の式典後の帰り道に、魔物の大群に遭遇し横転させられた馬車の中からやっと抜け出せたと思えば、そのまま魔物に担がれ……この洞窟の前に投げ捨てられて……」


 隣国の式典というのは、グレナ王国のレイチェル女王誕生の祭典の事だろう。


 周辺国の偉い人達が、祝いの言葉を述べる為に訪れていたハズだ。


 仰々しい家紋入りの豪華な馬車が、王城へと向かって行くのを僕も見かけていたしね。


 その帰り道に、謎の民族の大移動ならぬ魔物の大移動に遭遇したのだと言う。大きな振動を感じたと思ったらあっという間にその魔物の大群の波にのみ込まれ、姫様はその大群の中にいたオークに担がれて為す術もなく。白い甲冑姿の彼女は、攫われた姫様を追ってこの洞窟まで来たそうだ。


……そして、石になった。


ふむ。

魔物の大移動かぁ。


 今までの棲み家から逃げ出すくらいの何か(・・)を本能で察知し逃げ出した魔物達の進路先に、自国への帰途の彼女達がいて巻き込まれた形だろう。


……何と運の悪い。


 他の騎士達や世話係の連中の無事は知ったことではないが、おそらく無事とは言い難いかも。


「そうです!姫様。早く姫様の無事を本国に知らせないと!あれからどれ程の時が経っているか分かりませんが――」


「落ち着きなさい、マリアンヌ」


 白い甲冑姿の女性……マリアンヌ・ギルバーツは、姫の親衛隊隊長を努めている。ところで彼女、石化が解除されてからこっち、物凄く落ち着きがない。僕よりも年上だと思うのだが……。


 逆に、姫ことアルバ共和国の第3王女、シャルロッテ・アイム・アルバは僕よりも年下っぽいのに妙に冷静にこの場を把握している。


「まずは、ここから出ましょうか」


 気が付いたら、もうこの場には僕達の4人しか残っていなかった。


 石化していた者達は、一同に首を傾げながらも、何かを思い出したかのようにいそいそとこの場から出て行ってしまった。


「そうですわね。では、我々も」


 シャルロッテは、マリアンヌを促し僕達の後について歩き出した。


 そういえば、あの馬鹿狼(ラック)はどうしたのか?目当ての彼女と会えたのだろうか?


 洞窟の先から光が見えてくる。


 どうやら出口のようだ。


「カナタ殿ぉ!イリス殿ぉ!」


「マイロード!」


「カナタ〜!イリス〜!」


 出口付近で3つの人影がゆらゆら揺れながら、僕達の名前を呼んでいる。


「しまった」


「バレてしまった。なのです」


 こうして、僕達は仲間と合流するのだった。

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