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075話



……取り敢えず、落ち着こう。


 『色欲』の持ち主が、日本人の木下謙二という20代半ばの男だったのは理解した。


 何となく、フィギュアという単語を口にしていたから、僕個人の偏見でコイツは二次元大好きオタクだと思うことにする。


 で、だ。


 何故、コイツがこの世界をオンラインゲームの中だと思い込んでいるかかが問題である。


……考えられる事は、2つ。


 1、いきなり見ず知らずの世界に落とされたコイツが勝手にそう思い込んだ。ということ。


 2、この世界で出会った誰か(・・)にそう吹き込まれて、素直に信じた。ということ。


 1つ目は……まぁ、納得出来る。落ちた先が、剣と魔法の世界なのだから。その上、もし向こうで似たようなゲームをプレイ中で、その途中に落ちてきたとなれば、尚更そう思ってしまうだろう。


 しかし、思い込んでいる理由が2つ目だったとしたら、それは問題である。


……2つのミックスということも有り得そうだけど。


 アナベル姉さんに聞こうかと思ったが、目の前に当人が居るのだから直接聞いた方が早いな。と、思い直す。


「――ってかさぁ。君達はプレイヤーなんだよね?どうして、僕の邪魔するの?ココは僕のテリトリーになっているハズなんだけど……あ、もしかして!?PKなのか!」


……本気(マジ)で、頭が痛くなってきた。


 コイツが言っているPKとは、プレイヤーキラーという意味で、ゲームをしているプレイヤーを殺すプレイヤーの事だ。


 決して、サッカー用語でも、パンツ食い込んでいるという隠語でもない。


「でも、おっかしいよなぁ?アノ(・・)人は、ココのエリアにいるプレイヤーは僕だけって言ってたのに……あれからかなり時間が経っているから、新たに受け入れたのかな?」


 木下謙二は、そんな事を言いながらも、まだ腕を組み頭を傾けながら、ブツブツと「おっかしいなぁ」「困ったなぁ」等と呟き始める。


……はい。第3者介入決定!


 何で、まだ何も聞いていないのに、コイツはこうもペラペラと話すのか。


 引きこもりのニートさんは、友達がゲームだったり掲示板にしかいないと、独り言が増えるって聞いたことがあるけど、本当なんだなぁ。


「……質問です。木下さんが、ココにきてどれくらい時間が経過しているのですか?」


「――また、質問かよ!……まぁ、いいや。えっと……多分1ヶ月位だな」


「確かですか?」


「おう!この時計は正確だからな!」


 木下謙二は、自慢気に右腕に嵌めているデジタル表記の時計を此方へと見せてくる。


 それは、有名なスポーツブランドの腕時計で、時間表記だけでなく、万歩計やカロリー消費を教えてくれたりと、多機能で便利な時計だ。


「先程、木下さんが言ったアノ人って誰ですか?」


「うん?何?オマエら、会ってねぇの?……う~ん、確かにオマエら見た感じ高レベルのプレイヤーっぽいもんな。アノ人は、どっちかってえと初心者向けのナビキャラっていう感じだったし」


……ナビキャラって、何だ?


 ナビゲーターっていう意味か?


 取り敢えず、このままクズの話の腰を折るのもどうかと思い、そのままスルーを決め込む。


「気が付いたら、何処かの原っぱにいてよぉ。で、訳が分からないまま歩いていたら突然、モンスターが現れてさぁ。で、それを助けてくれたのが、その人だったんだけど。事情を話したら、コレくれてココに連れてきてもらったんだよなぁ」


 コレと言って見せてくれたのが例の『色欲』の腕輪だった。


 魔物に襲われそうになった所を、助けてくれた者がいる。


 ソイツが、元の持ち主なのか?


「趣味がフィギュア集めだって教えたら、コレくれて。んで腕に嵌めたら、コレを自在に出せる様になってよ。で、ココに来るゲーム内のNPCを石にしてコンプ目指し始めたってわけ」


……ふむ、成る程な。


 趣味を教えたら腕輪を貰い、それを身に付けたら、石化させられる尾を自在に操れる様になって、洞窟に入って来た者達を次々に石化させていったと。


 ちなみに、NPCとはノンプレイヤーキャラクターの略で、ゲーム内にいる村の名前を知らせてくれる村人だったり、武器や防具の店員だったりと様々な人達や動物を、ゲームプログラムとかサーバーが自動制御するキャラクターの事を指す。


 僕は、モブキャラと呼んでいるけどね。


……ええい!面倒な話し方するなよ!


 この、可愛いイリスをご覧よ!


 口をポカンと開けたまま、固まっているではないか!


 凄く可愛いッス!


『イリス、ゲームって分かる?』


『大富豪が好き♪なのです』


 トランプかぁ。


 カードゲームって、イリス達に教えてこの前遊んだんだよねぇ。


『また、皆で遊ぼうね』


『はい♪なのです』


 ニッコリ。と、此方へと微笑むイリスが超絶可愛くて、ささくれ始めていた僕の心を癒してくれる。


 うん、和んだから良し!


「質問です。そのナビキャラはどんな風貌でしたか?」


「えっとなぁ。あぁ、いかにも魔法使いみたいな。真っ黒な布1枚で作ったっぽい服、紐を腰に巻いているっていう定番の服。目深にフード被っていたから顔は分かんないわ。声は男だったな、話すと少しノイズが混じって聞こえたな。やっぱ、CPUだなって思ったわ」


 ノイズか……おそらく魔術か魔道具を使い、声を変えていたのだろうと思われる。


 性別も、断定は厳しいか。


 ちなみに、CPUとは…………


 もう、一々説明するの面倒だから割愛で。

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