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065話



 山を下っていく途中でひとつの村を見つける。


 草原の中に存在しているその村はテントに似た住居がいくつも目につく限り、ここは移動民族が生活しているのかなと、遠目に見ての僕の感想だ。


「あら、主様(マイロード)あちらに囲いが見えますが、村でしょうか?」


「そのようだね」


……え?

2人の決着はどうなったかだって?


勿論、置いてきたさ!


「通販番組で見掛ける外国人の笑顔。なのです」


……そうそう、『HAHAHA~』見たいな。


って、なんで知っているんでしょうか?!イリスさん!


通販番組、天界でもやっているのでしょうかっ?!


……だとしたら、天界侮りがたし!


「カナタは、変顔の練習中なのかの」


「ふふっ、たまに主様(マイロード)とイリス様は不思議なやり取りをなさる時があるのですよ。何だか、微笑ましいですよね」


……何だか、恥ずかしい。


「コホン。姫華、村に入るけどそのままで良いの?」


「むっ?そうじゃの」


 僕のフードから飛び降りた姫華が、その場で軽く宙返りを一回転すると少女の姿に変わる。


 そのまま、とてとてと僕に歩みより僕と手を繋ぐ。


「じゃ、行きますか」


「のじゃ」


「「はい」なのです」


 僕達が村へと到着すると見た目が若い僕達は特に警戒されることなく、むしろ「大変だったな」と気を使われてしまった。


 ブリタという名の村の住民は、皆獣人族だった。


 イメージ的に高原地帯に住む獣人族と言えば、狼系の獣人とか鳥系とか猿系があったりしたのだが、このブリタ村の住民の村長は虎系のおじいちゃんであり、熊系や兎系や鹿系の若者達だったり、もちろん狼系のおじさんも居たりする。


「多種多様な獣人の集まりだね」


 グレナ王国にいる間は見かけなかった獣人がこんなに沢山目にできたことに僕は驚きだ。


「……カナタ」


 不意に手を引く感覚と共に姫華の声がしたので、下に顔を向けると……


「妾、狐の獣人なのじゃ」


「……あ、そうだったね」


……忘れていた。


というより、ここ最近はずっと子狐の姿だったからな。子狐が本来の姫華だと思い始めていた自分がいた。


「い、痛い痛いよ」


「むぅ〜〜」


 察しの良い姫華は、プク顔で僕の胸をポカポカ叩く。


 彼女なりの怒りの表現らしいのだが、なんせ見た目が幼い女の子。ほんわかな雰囲気を醸し出している。


……しかも、正直な話痛くないし。


「取り敢えず、ここでゲイツさんを待とうか」


「イエス。主様(マイロード)


「はい。なのです」


「のじゃ」


 そうして、なるべく村の民たちの邪魔にならないような場所を確保した僕達は、のんびりゲイツさんを待ちながらそれぞれ過ごすことにする。


 僕は、サクラから淹れてもらった紅茶を飲みながら、姫華の様子を見ていた。


「ーーへぇ。やっぱり、姫華の絵は上手いよね」


 どれくらいの期間を、あの城の塔のテッペンで過ごしたかは分からないが姫華だが、本来は己の足で各地を旅をしてその目で見たことや経験したことを故郷に戻った時に、故郷の皆に話して聞かせるつもりでいたのだ。


 その話を聞いた僕は、前にいた世界のことを思い出していた。


 SNSが普及していた世界。


 どこからでもスマートフォンやデジタルカメラなどで撮影した写真を一言添えて共有している友達に、現状を知らせることができた。


 例え、そこが世界の裏側でも。


 でも、この世界ではそれができない。手紙を出しても、郵便屋というシステムがない為、届けたい相手が住む土地まで行く行商人や冒険者に手紙を託すので、いつ相手に届くかわからない。


 書いた頃は妊娠中であっても、届いた頃には新しい命が誕生していたりする。それがこの世界の常識だ。


 そこで、僕は姫華に話したのだ。僕の祖父がしていた旅に出た時にしていた事を。


「この絵手紙というのは、なんだか見ていて胸が温かい気持ちになりますね」


 姫華が描く絵を見ていたサクラはが、、うっとりした様子で胸に手をあてながら言う通り、なんとも心がほっこりする絵だった。


 そう、僕が彼女(姫華)に絵手紙の話を聞かせたのだ。これも、旅をする上での楽しみになる。


 だが、葉書大の紙で書いてその度に故郷に送るには、この世界は不便すぎるので、姫華には一冊のスケッチブックと二十四色の色鉛筆を与えた。


 普段は、僕のフードの中で眠っている姫華だが、こうして時間が出来た時には、気になった物や景色をスケッチブックに色鉛筆で描くようになった。


「ーー確かに上手いし、ほっこりするけど……所々に嘘があるのはどうしてなんだろう」


「嘘なんか描いていないのじゃ!」


 姫華はまたプク顔になって、僕のスネを軽く蹴ってくるが、それを甘んじて受け止める。


……だって、痛くないから。


「だって、何か飛んでいるし。明らかに、オリジナルが混ざっているじゃんか」


「イマジネーション。なのです」


……あ、また。


 イリスさんが、おかしなこと言い出した。

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