表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/86

060話



「いやぁ、早速来てくれるなんて。あたしは嬉しいよ!さぁ、思う存分食べておくれよ」


 陽気な声と共に、目の前のテーブルには次々と料理が盛られたお皿が置かれていく。


「どんどん食べなよ!遠慮は要らないからね!」


「これは、美味しそうだのう」


「見た目も楽しめるのは良いことですね♪」


「頂きます。なのです」


……見ているだけで、お腹がいっぱいになりそう。


 僕は、取り敢えず目の前の肉料理に手を伸ばした。


 フォークで刺した途端、肉汁が出てきたのを見ると気持ちとは裏腹にお腹がグーと鳴った。


……やはり、成長期の男の子だった。


 そこからは、美味しく料理をお腹に収めていく。


「それにしても、開店日が目出度い日と重なるなんてねぇ。お陰で、沢山の人が店に来てくれて、幸先が良いよ!」


 上機嫌のエルマさんを見ていると、こちらまで嬉しくなってしまう。


 厨房では、忙しく動いているアマデオさんの姿が見える。


 エルマさんの言う通り、店は大繁盛。


満員御礼。

というやつだね。


 知り合いの店が賑わっているのは、僕としても嬉しい。


「でも、めでたい日……ね」


 僕は、ライムエールを飲みながら窓越しに外の騒ぎを見る。


 僕達が実行したクーデターは、計画通り進行。


 多少の混乱があったようだけど、無事にレイチェル姫が女王となり、今日はその即位式のイベントが行われている。


 今は女王の御披露目パレードの真っ最中で、レイチェル新女王を一目見ようと、王都の住人や情報を聞き付けた地方からの人達でメイン通りは溢れかえっている為、避難するように僕達はエルマさんの店を訪ねていた。


「それにしても、アッサリ即位できて良かったねぇ」


「クレイブのやつの根回しが、完璧すぎましたからの」


「あぁ。魔法省の」


 僕は、クーデターの顛末を詳しくは知らない。


だって、。

正直興味がなかったし。


 ゲイツが元宰相さんとその家来を王城へ連れて行ったら、「ご苦労」の一言を言われて終わったとしか聞いていなかった。


「あやつは、本当に抜け目がないからのぅ。計画を我らに持ち出す前に、自身で9割準備は終わらせていたのだろうのぅ」


「その元宰相さんを連れて来る方法に、頭を悩ませていたのか」


「おそらく」


 ワイングラスを傾けながら、一言呟くようにゲイツさんは答えてくれた。


 少し眉間に皺が寄っているのを見る限り、詳しい事は聞かないまでも、クレイブのやり方はゲイツさんにとっては余り良い感じがしないらしい。


 まぁ。魔法省のトップなのだから、清廉潔白ではいられない事くらい僕だって分かる。


 清濁会わせて……なんて言うくらいだし。


「――これは、美味しいのじゃ。のう、カナタ。コレは何と言う飲み物じゃ?」


「うん?コレかい。ライムエールという飲み物だよ」


「らいむえーるとな。……うん、実に良い。この喉を通っていく時の、ムズムズする感じが堪らないのじゃ♪」


 僕の膝の上で、ライムエールが気に入ったと言って無邪気に笑う少女。


うん。

本当に見た目少女だよねぇ。


 イリスも身長は低めの150cm前後だけど、彼女はそれよりも低い130cm前後。


 僕がいた世界の小学1・2年生くらいかな?


「……気に入ってくれて何より。体調の方はどうだい?姫華(ひめか)


「問題ないのじゃ。力はまだまだ足りんが、それでも日常の生活には、全く支障はないしの」


 僕を見上げながら、にこやかに言う彼女と同時にご機嫌の象徴的に、白いフサフサの尻尾が揺れる。


 そう。彼女・姫華は、あの時塔の最上階で僕とイリスが保護した狐族の獣人。


 あの後、家に連れて帰ってから衰弱している姫華を心配したイリスがアナベル(姉さん)に連絡をとって、彼女にとっての回復方法を聞き出した。


でも、その返事は「カナタを使えば良い」とのことで、イリスの必死さに負けた僕は彼女を治療することに。


 姉さんのアドバイスを受けながら、まず手始めに外傷を治癒を施し、そして狐の姿の彼女の頭に触れて全身に行き渡るイメージをしながら、治癒の神力を使っていった。


 この様子を見ていたサクラやゲイツさんは、「奇跡の力を目撃した!」と訳の分からないことを口走っていたっけ。


 そんなこんなで、無事に姫華は復活を果たしたのだが、彼女の力の魔力だけは僕の力ではどうにも出来ないので、のんびり回復を待つほかないのだから仕方がない。


 目覚めた彼女にそう言うと、空っぽの状態から回復していくと、前に比べて魔力の量が増えるとのことで、これでまた強くなれると逆に感謝されたのが、僕としては印象的だったけど。


 本来の姫華は、僕よりも年上らしい。


 今の見た目が小学生並みなので、実感は湧かないが。


 ただ、「女子(おなご)に年齢を聞くではない」と言われてしまったので、実年齢は定かではないが、ゲイツさん曰く、獣人は位によってまちまちだが、高位だと長寿の代表のエルフ族と変わらないとのことで、あの感じだと100歳は軽く越えているらしい。


……軽くって。


……1000歳まではいかなくても、500歳以上か未満か。


 そこまでいったら、何かどうでも良くなってくる。


 今の見た目は小学生位だけど、実際の姫華の姿は大人の女性という事なので、力が完全回復したらその姿に戻れるらしいが、彼女自身姿を自在に変えれるという事なので、今の見た目に大した不満もないらしく、この状況を楽しんでいるようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ