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001話



 以前読んだライトノベルには、白い部屋で神様と会話をする場面があったけど、今の僕がその状況に陥っております。


「本当に、ごめんなさいね」


 目の前には、白のワンピースに身を包んだ神様?らしき女性が胸元に両手をあてながら、申し訳なさそうに話しかけている。


 多分、明らかに僕よりずっと年上だと思うけど、見た目的には、二十代半ばに感じる綺麗なお姉さんってところかな。


「…あの、怒っています?」


 僕の返答がない事に不安に感じたのか、やや上目遣い気味に僕を見る神様。


 怒っているもなにも、僕にはそんな謝られる事に心当たりが無い。


 気が付いたらココにいて、いきなり目の前の人?が謝りだしたのだから、訳がわからない。


「あぁ、そうでしたね。私自身、想定外の出来事に少々動揺しておりました」


 いつからあったのか、神様?は椅子に腰掛けて僕と向かい合った。


「えっと、成瀬奏多さん。貴方は、本来死ぬ運命ではありませんでした」


 ん?死ぬのが間違いだったら、生き返らせてくれる……って感じではなさそうだね、その様子からすると。


「……そうです。もう貴方は、あちらには戻れません。肉体も無いですし」


 これまた、いつの間にか神様?はカップを手にしていて、それを口に運びながら悲しげに話す。


 まぁ、それなら成仏するしかないよねぇ。

  どれくらい時間が経っているか分からないけど、身体がないなら戻れないし。


「それも……無理なんですよねぇ、残念ながら」


 無理って?成仏もできないって事?


 ってか、今さらだけど、僕声が出てないのに会話が成立していませんか?


「はい。今の貴方は、魂しかありませんから。貴方の思念と会話しています。それと、成仏ができない理由は……色々な諸事情により、貴方を受け入れる事ができないのです」


 受け入れられないって、僕に何か問題があるから?ってか、色々な諸事情というのは?


「正直に申しますと、本来死ぬ運命ではなかった貴方を成仏させるには、手続きが本当に面倒(・・)ですし。ただ、そういうシステムという事だけ理解して頂けると」


 面倒という部分をやたら強調して言う感じからして、ぶっちゃけやりたくないように聞こえる。


 こういうのって、職務怠慢?っていうのではないのかと思ってしまう。


「いや、決してそういう訳では。私達の父が、やりたがらないのです。駄々をこねてしまって…」


 父?よく分からないけど、生き返りもダメ、成仏もダメって。じゃあ、僕はどうなるの?このまま、浮遊霊扱いになるの?


「いえ、魂のまま存在は出来ません。ですので、貴方に提案が二つ程あります。まず、一つは転生する事。これは、貴方がいた地球ではなく、別の世界で生まれ変わるという事になります。もう一つは、私の弟になる事」


 成仏できないのに、転生できるってなんか変じゃない?


「簡単なのです、手続きが。死産予定の赤子に貴方の魂を移すだけですから。結構、使われている方法なんですよ」


 結構使われているって、想定外って言ってませんでした?


「他の方達が使っているという事で、私自身は今回の事は初めてなんです」


 初めてって…。


 大丈夫ですか?というか、そうなった場合のメリットは?


「メリットですか?う〜ん。コチラの手違いなので、転生先は生活に困らない家庭と優しい両親とか、最大限の待遇は用意させてもらうつもりです」


 なら良いかなぁ。


 じゃあ、デメリットってありますか?


「そうですねぇ」


 神様?は組んでいた足を組み直しながら、持っていたカップをテーブルに置き、顔に手をあて考え始める。


 僕には、そんな神様?の姿が可愛らしいと思いながら、女性の神様?なのだから女神様?の方が良いんじゃないかなぁ。などとどうでもいいことを考えていた。


「はい。私は女神ですよ」


 考えているポーズはそのままに、視線だけこちらを移してニッコリ笑う。


 そうでした。思念読まれるのでした。


…… 恥ずかしい。


「自己紹介がまだでした?あぁ、言ってませんでしたね。私は女神アナベル・スフレール。神族です」


 女神様は、考えているポーズを解き、両足を揃え膝の上に両手を揃えて顔を傾けて微笑んだ。


「あ。デメリットと言えるか分かりませんが…」


 ポンッと1つ手を叩くと、再び考えているポーズをする。


「今の記憶?はなくなりますね」


 今の記憶?それって、このやり取りが消えるって事ですか?それとも…


「はい。成瀬奏多さんの記憶がなくなります」


……嫌です。


「はい?」


 女神様の笑顔が固まっていることなどおかまいなしに、僕は先程と同じ言葉を使う。


 嫌です。

 記憶引き継いで、転生出来ないなら、却下です。


「う〜ん。それだと手続きが面倒(・・)になりますから」


 あ。また、面倒ってところ強調した。


「では、異世界に転生する案は却下っと」


 女神様は、簡単に却下した。

 あれ?もっと奨めてくるかと思っていた僕は肩透かしをくらった気分。


「フフッ。では、私の弟になってくださるのですね♪」


 なんだろう?先程から女神様は、ずっと笑顔だったけど、今の笑顔はダントツ1番に良い。


「嬉しいです!私、弟がずっと欲しかったのですが、中々出会い運がなくて…ですが、奏多さんを見たときからビビってきたのですよ♪」


 弟?そういえば、最初の案にチラッと言っていたけど、聞き間違いじゃなかったんだ。


「安心して下さい。記憶はそのままで可能ですから♪」


 キラキラ笑顔の女神様って逆に…コワイ。

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