表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

駅前にいる人

作者: 南波航助

どうしてだろう。




おじさんは、いつもそこにいる。


何故ですか。こんな寒い日に。どうして立っているのですか。


駅前に、いつも立っている。


そして、僕を見ている。


満面の笑みを浮かべながら。



僕は、とうとう話しかけてみた。


「どうしてあなたはそこにいるんですか?」


何も言わなかった。


「聞いてるんですか?」


何も話してはくれない。


それからというもの、僕は毎日駅前にいる人に話しかけた。








僕は、恋をした。


二十歳になってやっとだった。


その時からだった。


駅前にいる人は、いなくなった。


「どこへ行ったのだろう」


土砂降りの日にさえいたのに、今はいない。


僕は、駅員さんに聞いてみた。


でも、そんな人はいなかったと言う。





見えなくなってから二年後、僕は母と話をした。


「駅前に、人がずっといたんだ」って。


母は言った。


「私も、昔は見たわ。でも、結婚してから見えなくなったの」


同じだった。


母は続けてこんなことを話してくれた。


駅前にいる人


それは




死んでしまった





おじいちゃんだって。


信じられなかった。


どうしておじいちゃんがいたのか。




母は分かっているようだ。


僕にはまだ分からない。





駅前にいる人



どうしてあなたは



そこにいるの。






僕は歳を取った。


六十歳。




そして、死んでしまった。


今では分かる。


どうして駅前におじいちゃんがいたのか。




今では僕が




駅前にいる人。






こんな作品を描くのは初めてで、上手くいかなかったかも知れません。読んで下さってありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] テンポが素敵ですね、おじいさんをもっと描きこめばより最後の一行に感動が増したと思います。
[一言] 初めまして! このお話しを読んで、亡くなってしまった大好きな祖父を思い出して、 祖父もこのお話しのように、 私を見ていてくれているかな〜と温かい気持ちになれました。 (もしかしたら祖父が、俺…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ