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彼氏は三国志、隻眼の猛将「夏侯惇」 ※ただしヒモ

作者: 赤ポスト

連載が一段落しましたので、リフレッシュ投稿。

今日も疲れて家に帰ってきた。

社会人生活3年目のOLである私。

家と会社を往復する毎日。

ただ日にちが過ぎ去っていく。

同じ風景を見ながら通勤し、同じような仕事を繰り返す。

ウロボロスの輪のような生活。

そんな、私の生活がある日一変した。



くたくたになって家に帰ると、なんと部屋に、三国志武将、「夏侯惇かこうとん」がいた。

気性が荒く、軽率なところがあるものの、武勇に秀でた猛将として有名な彼。

呂布軍の配下、曹性そうせいに目を矢で射抜かれながらも、刺さった矢を眼球諸共引き抜き、「父之精母之血不可棄也(父の精、母の血、棄つるべからざるなり)」と叫びこれを喰らい、その後に左目を射抜いた曹性を、次の矢を番える暇もなく顔を突き刺し、討取るとった彼。全部wikipedia知識だが。


その彼が、私の1ルームマンションの部屋にいる。


僅かに目にかかる黒い前髪。

左目を隠す黒い眼帯。

男気溢れる口髭と顎鬚。

そして身長190cmの長身と筋肉の鎧。

部屋が小さく見える。


そんな彼が甲冑姿で私の部屋のソファに座りながらオレンジジュースを飲んでいる。

ソファが物凄く沈んでいる。あれ、大丈夫かな。

積載量超えている気もする。

そんな彼と目が合うと


「姫も飲むか?」の一言。


私はただ茫然としていた。

姫?誰のこと。

もしかして私?

彼は鋭い眼光で私を見る。


「何を呆けておる。全く、姫君は世話がやける」


彼は立ち上がり、私の横を通り台所からコップをもう一つもってくる。

そしてオレンジジュースをつぐ。


「俺が口を付けた物が嫌なのだろ。ほれ、これをやろう。姫君には不満かもしれんが」


夏候惇が私にコップを押し付けてくる。

思わず私はそれを受け取り、ぐびぐび飲む。

それを見た彼は、


「ほう、たいしたものだな」と何故かご満悦。


「どうも」と会釈を打つ私。


って、そんなことしてる場合じゃない。

何故、彼がこんな所にいるのか。

見た感じ、変質者の類ではないようだ。

オーラで分かる。


「あなた、夏候惇?」

「いかにも。拙者は魏の将軍、夏候惇である」


脇に置いてあった大剣を振りまわしながら変なポーズを決める彼。

絶妙な剣技で、大剣が部屋の物に当たらないのには驚いた。

私は夏候惇の迫力と決めポーズのドヤ顔に見惚れていた。

数秒して我に返る。


「分かった、分かったからその変なものを振り回さないで」

「あい、分かった!」


彼は再びソファに座る。すっごく沈むソファ。

私は机の椅子に座る。

彼と対面する形。


「それで、何故ここにいるの?」

「うむ。それを話せば長くなる」


そうして彼は説明を始めた。


「時は延康元年、豫州沛国譙県に生まれた私は・・・・」


長い説明だった。

出生から活躍するまでの日々。

途中寝てしまったが、彼は気にしなかったようだ。


「・・・というわけで、私もよく分からんがこの部屋にいる」


まとめると、なんだかよく分からないけど、気づいたらこの部屋にいたらしい。

部屋から出ようとしたが、何かに阻まれて出れないと。

そうして私と夏候惇の同棲が始まった。





彼は簡単言うと、ヒモだ。

部屋でごろごろしている。


「姫君、姫君」

「何、か~くん」


か~くんとは、夏候惇のあだ名だ。

私命名。夏候惇はさすがに呼びにくい。

渋い隻眼の猛将には似つかわしくないが、最近は馴染んできた。


「姫君、次はこれを買ってきて欲しいでござる」


渋い隻眼のイケメンの彼が、私に物をねだる。

ネットの影響か、何故か言葉づかいが色々おかしい。


「何?」


っと見ると、それは馬だった。

競馬の競争馬。

試に調べてみると・・・

無理だ。庶民が買える値段ではない。


「だめ」

「姫君。ですが、この馬が手に入れば我が軍の戦力は1.5倍程になると思われます。姫君もこれで通勤できるかと。なにとぞご再考を。なにとぞ、ご再考を!!!」


猛熱に私に頼み込む彼。

さすが猛将、熱風のようなものが伝わってくる。

一瞬「うん」といいそうになるが、私は喉まで出かかった言葉を飲む。

危なかった。


「だめ」


しょんぼりするか~くん。

彼は私を見る。

目がキラーンと光。


「姫君。私目、実は「気功活性化術」を会得しているのでござる。是非、姫君にお提供したいしだいでござる」


彼は腕の指をポキポキならしながら私を見る。

上手く鳴らし続けることができなかったのか、途中からポキポキ音を口ずさむ。

「ポキポキ」と唱えながら、手の指を動かす彼。

ちょっと怖い。


「何それ?どういう奴?」

「疲れが取れで元気になる技でござる。拙者も戦の前には仲間によくやっていたでござる」


疲れがとれる。

元気が出る。

その言葉は魅力的だった。

毎日の仕事で疲れがたまっている。

心が揺れる。


「かの、曹操様も私の術を大層気にいっていたでござる」

「そ、そうなの。それじゃお願いしようかしら」


私は試にか~くんの提案を受け入れた。

特に悪いことは無いだろう。

マッサージの様なものだろうし。


「それでは、失礼」


か~くんは、その太い腕で私を楽に持ち上げる。

え?何?

なんか宙に浮いている。

子供の時以来の感覚。

か~くんは、私を宙に放り投げる。

まるで、子供に「高い~高い~」をやっているように。


「ちょ、ちょっと!」


私は声を出す。

天井が近づいたら離れたりする。


「しゃべるのは危ないでござるよ。舌を噛むでござる」


確かに、私は微妙に噛んでいた。

血の味がする。


「これは、いわば序章。姫君は軽くていいでござる」


え?私、軽いの。

最近ちょっと太っていることを気にしていた。


「張允殿は重かったでござる」


がっかりした。

そりゃ、戦国武将にと比べれると軽いだろう。

同じぐらいだったら泣く。


「それでは、いきますぞ!」


彼は盛大に私を宙に投げる。

天井すれすれまで上がった私。


「―――気功術、白望波はくぼうは―――」


彼は大剣を振り回す。

絶妙な剣技で私の体の表面がなぞられる。

1秒の間に同時に何十カ所も押される。

僅かでも手元が狂ったら私は死んでいるだろう。

彼は体から闘気のようなものを出しながら大剣をふりまわす。

そして、彼は地面すれすれで私を受け止める。

しかも、大剣の刃で。


「ひょええええ」と思った私だが、心の中からあふれ出るエネルギー。

何かがあふれ出てくる。

私は落ち着かない。

というか、早く刃の上から降ろしてほしい。


「早く降ろして」

「おっ、かたじけない」


か~くんは、剣を引き、椅子の上に私も戻す。

だが、私はそわそわする。

エネルギーがあふれ出る。


「なんか、すっごく元気出てきた」


私の言葉に、か~くんは満足そうだ。

ニコニコしながら愛剣を撫でている。


「それはそうでござろう。この技を受ければ三日三晩働ける」

「へぇ~そんなに凄いんだ」

「それは拙者の術だからな。三日三晩は寝れないのが難点だが」

「え?」

「そして、エネルギーが出っぱなしで、4日目はきつい。死にそうなる。云わば、エネルギーの前借。拙者は久しぶりに技を披露して疲れたから寝る。姫君、おやすみなさい」

「・・・・・」


私は布団を引いて寝るか~くんを見ていた。

か~くんが、布団からこっそり顔を出してこっちを見る。

彼の渋い顔&逞しい体、それに正反対のかわいい子供の様な仕草にいいようのない何かを感じる。


「姫君、電気を消してほしいのでござる。明るいと寝れないでござる


私の中で何かが切れた。

有り余っているエネルギーが私の中で爆発する。


「お前だけ寝るんじゃねー!!!!!」


私は夏候惇の布団をひっぺ返した。


「姫君がご乱心だ~。ご乱心だ~」












私は一晩中夏候惇とトランプをした。

彼はとても眠そうだった。









ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

三国志風恋愛コメディです。


以下も三国志?物ですので、著者名からどうぞ。

「歴女の私が婚約破棄されたので、計略を発動した。我が師は天才軍師、「諸葛孔明」」



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― 新着の感想 ―
[良い点] stop○備くんのノリを思い出した。(雑兵Aのような引き出し力)
[良い点] とっても面白かったです。 [気になる点] ありません。 [一言] この夏候惇くんなら、〇王炎殺黒龍波も使えるんじゃないかなと思いました。
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