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3笑【安全第一】

前回のあらすじ。

仮面の彼は仕事を終わらせて待ち合わせ場所に向かった。

「………やっと終わっていつもの店に来てみたんだが、これは」



 仮面を外した俺は目の前の状況に唖然としていた。



「うぃーっ、もっと持ってこーい、樽で持ってこーい」



 そこにはビールを樽単位で頼むピンク髪の酒豪が鎮座していた。


 おかげでいつのもの店、元いい【ミックスxウォーカー】の中では現在彼女がどのくらい飲むのかという野次馬でごった返していた。


 外野からは「もう一杯、そーれもう一杯、そーれもう一杯っ!!」やら「やれーやれーいいぞー、もっとやれー」やら「嬢ちゃん勝負だ。え…聞いてない?」やら「がはは、シカトされてやんの」やら「おいちょっとこっち来い俺と飲もうぜ」やら「おう、勝負だ」なんてもう正直わけがわからない状況だ。



「ったく、なんでコイツがここに来ると毎回毎回、毎回毎回こんな状況になるんですかねぇ!?」


 まぁこんなことになるのを知っているなら待ち合わせ場所変えろって話になるのだが……。


「ん? この声は……。おーいこっちだぞー」



 俺の上げた奇声は彼女に届いたらしく自らの方に呼び込んできた。


 その声を聞いてか周囲の目はこちらに向かってくる………。


 正直痛い、その目は興味ほぼ全てといった感じでこちらを見ている、まぁよくわからない理由の殺気も百パーセントに練りこまれているので正確には興味三十、殺気七十っていうところかも知れない……。



「ったく、なんでお前はたった一時間でこんだけ飲めるんだよ!?」



「一時間も待たせる君が悪いと私は思うよ、うん」


 彼女はそう言いジョッキをビールを煽った。


 その声に反応してか外野では「そうだそうだ」「こんな嬢ちゃんを一人で飲ませておくとは男の風上にもおけねぇ」「そんなやつほっといて俺と飲まねぇ?……って、またかよぉ」「あぁもういいから諦めて、俺が飲んでやるから、それで堪忍しろ兄弟」「あら、私も混ぜてもらおうかしら。それともお兄さん私と一杯どう?」「………遠慮します」「あたしの酒が飲めないっての!?」「そういうわけではないんですが……」と来ている。



 たった今恐ろしい展開をしそうな人がいた気がするが気にしない方向で行こう。


 ムチムチのオネェさんに連れ去られた人は知らない見てないことにしておこう、安全第一。


「というか待ち合わせにここ選んで他のお前だろう?本命ここじゃないのにこんなに飲んでどうするんだ?」



「大丈夫大丈夫、ビールはお酒じゃなくて水と変わらないからぁ」



「節操なさすぎだろ…」



「へへへぇー」


 褒めてないんだけどな…。


「まぁいいや行くぞ」


「ちょっと待って、これ飲んでからっ!!」


 そう言いて彼女は、脇に置いてある樽を指していた。


 中身を見ると樽底がはっきりと見えている。


 あとジョッキ二杯といったところか……。



「いやいやいや」



「まぁちょっと待ってて、ね?」


 こうなったらこいつは確実に飲み終わるまでてこでも動かない、経験則だが……。


「…………早くしろよ?」


 と俺はそう言いジャケットの中ポケットからタバコを取り出し火をつけようとした。



「すいません、本日店内禁煙でして……」


「ん?」



 声をかけられて振り向くと銀髪で小柄な少女がエプロンを装備して現れた。


 だが俺や、ここを使っているは知っている。


 彼女の年齢は見た目に比例していないことを。


 しかも怒らせるとかなり怖い、声色と雰囲気が変わり酔が覚めるほどに……。



「すいませんマスター知らなかったもんで。まぁ、しょうがない。なら外で一服してるから飲んだら出てこいよ」


「あいよー」


 と軽く挨拶を交わしマスターにコーヒーとオーダーを入れて外のテラスに向かった。


 店を出たあとに粗相をしたらしい初心者ビギナーが豹変したマスターに怒られているが正直無視だ、触らぬ神に祟りなし、安全第一。


「にしても災難だなあの初心者ビギナーオネェさんに捕まるわマスターに怒られるわ……。ご冥福お祈りします」


 多分彼は今日のことが一生消えないトラウマになってしまうだろう。



「まぁ大人への一歩だと諦めることを願うよ……」


 そう言いながら俺は特殊性癖に目覚めてしまった友人を思い煙を吐き出した。

読んでくれてありがとうございます。

トラウマが出来たであろう彼の話はやるかも知れないしヤラないかもしれないですw

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