1笑【苦笑う】
「やっちまったなぁ」
あぁ、と目の前の状況を見て感想を述べる。
「元はと言えばあんたが悪い、あんな戦法をかんがえつかなければ今頃は…」
軽く癇癪を起こしそうな顔をするな目の前のピンク髪さんよぉ。
俺が悪いことしてるみたいじゃないか……。
「あぁそうだな今頃はこんなところではなく天に召されてただろうな、お前の好きな(・・・・・・・)」
「そ、そんな言いかたないじゃないですかぁ。別に死にたいってわけでもないんですから」
ピンク髪はその長い髪を指にくるくると巻きつけながら小さく呟く。
「では、どういうわけだ?説明してみろよ」
「ボクは、体験したことのないことをしてみたいだけなんですよ、あんたの相棒になったのもいろいろな経験がたくさんできるかもですしね」
「ふーんだったら、体験したことがいまだかつてないこととして少し天に召されてみたいっていうのは興味本能なんだってことだな?」
「まぁ、そういうことになりますね」
まぁどこでもできますし、最後には体験できますし二回体験したら有象無象にいる凡人の二倍体験できるんですよ?すごくないですか!?などとほざいている。
「あー、はいはい」
またいつものが始まってしまった、この感じだと終わるまでに相当時間がかかってしまいそうだ。
あのピンク髪の変態の話をしている今のうちに現状を振り返っておこう。
現在いるのは日本の西部に位置する県が元あった場所らしい、らしいというのは俺たち、いわゆる進化人…まぁ今はこちらが普通の人ということになっているのだが俺たちが世界に存在する前に各地で大きい戦いが起こっていたらしい、その戦いでは人を破壊するために特化した技術はもちろんのこと大地を破壊するためだけに特化したものなど多種多様に存在していた。その兵器たちが各地で一斉に暴走したために地図か使えなくなったのはいうまでもない。
超高度に成長していた人類が原始時代に突如逆戻りしたことにより起こったパニックなどは予想以上でものの数年で人口はだいたい1/3にまで衰退していた。その当時の人類はである。そんな時代に生まれた我ら新人類は軒並み不思議な力が身についていた、まぁ平たいところをいうと魔法である。よくいうとそんなファンタジーで済んでしまうが、言ってしまえば人類が軒並み全員銃を常備しているようなものでよくよく考えてしまえばそれだけである。だが前人類はそのことに多大な畏怖を持ってしまい結果としてまた戦争が始まってしまった。当時誕生したばかりの新人類をである。もちろんのこと戦争の経験はなく、肉体も精神も未熟であったために加減がわからない。そのため世界は残っていた平和的な部分を全て失ってしまったのである。それがこの現在の世界の始まり、前人類の歴史の終わり…。まぁその日本という国の西部に位置していたところで何をしているかというと……戦争である。人類はその歴史を進化しても繰り返してしまうらしい。まぁその目的は最も原始的になっているわけだが……。
「にしても仲間になりたいからその強さを見せてくれって言われてもなぁ…」
相手になっているのはそう言う輩である、とにかく筋肉で脳みそができているんじゃないかという人種いわゆる脳筋。まぁ全てではないが、種族の特徴から考えてその種族はビーストである。いやまぁ種族的に魔法が使うのが苦手だからとその身を鍛え鍛えていると数十代の数を重ねてあのようになったというが……DNAに刻みつけるとはいかんせん神秘といってもいいのではないだろうか……。まぁ、そんなものにも特殊例というものは存在するもので……運悪く、ビースト製魔術師に出会ってしまった時にはどうなるかと思った。なんせ腐ってもビースト。腕力なんか前人類とエルフの間にカテゴリーされる俺たちヒュームの敵ではない。しかもいないだろうと踏んでいた魔法、こちらは対物理装備でやってきているのでたまったものではない。と逃げ帰ってきたのが、ものの4時間前、そして敵の本拠地にワープで飛んで一網打尽にしようぜなんてトンデモ発言をしてきたピンク髪の変人のオーダーをギリギリの所で無理やり修正してこんな荒野に飛んだのが1時間前。現在は手持ちにあるナビをで頼りにビーストに見つからないように移動しているのである。
「でここはどこなのよぉ、どこいってもどこ見てもこうやっていうか廃墟っていうか…」
「まーそのことは俺もチラチラ思ってたよ…」
あたりはまさしく廃れているという言葉がぴったりの風景。
いつの時代に作られたのかよくわからない建物やなんのために作られたのかわからないものとかもそこらへんにちらほらと……、あ。
「お前の希望叶うかもしれないぞ」
「え、本当!?」
あぁ、あれ見てみろよ。
俺には全くの希望ではないのでこいつにおしつけてからそっこでとんずらするつもりではある。
「あ、本当だっ。やるねぇ、伊達にメガネかけてるわけじゃないね」
「俺のメガネにそんな素晴らしい機能は付いてねぇっ‼」
「まぁ、そんな金があったらここにいないよね」
「っせぇ」
とまぁそんなことは置いといて遠くに見えている米粒のような点の集合体は動き方と持っているものなどのの行動を見る限り十中八九ビーストである、おそらくそれの接近戦闘型。
証拠に俺たちではおそらく所持するだけでも大変な苦労をするであろう質量を持っていそうな棍棒のような長物を軽々しくその手にしてブンブン回しているのが見たくないが眼に映る。
まぁあれを見ると一目散に逃げるのが普通だが……だがこの横にいるやつは普通ではない、まぁ、その、目をキラキラさせてるのだから……。
「ねぇ、ねぇ、少しお願いがあるんだけどぉ……」
「な、なんだ」
嫌な予感がする、こういう時の予感は悲しいかなよく当たってしまう傾向が多い。
「ボクにあのふわわーってのをやってよ、この前みたいに。あれやったらすごく調子良かったんだよね」
「あぁ、バフのことか…」
「はいはい、ちょっと待っててな」
バフというのは付与の魔法のことでステータス向上を目的とするものだ。
「ほいなー」
返事を待って俺は詠唱を始める。
目を閉じて付加するためのイメージを脳裏に定着、そのまま術式に集中。
今回は能力上昇のバフで対象者は……かなり癪だがあのピンク髪になるがそれを守るイメージ、かなり癪だが、かなり癪だが……。
「あぁもう気が散るぅ……」
集中しろ集中……。
頭を強めに振ることで意識を戻す。
んで中身は筋力強化、物理耐久強化、身体強化…後は何かいるか?
とちらりと横を向いたらそこには腕をブルンブルン回して目をキラキラさせているピンク髪がいた。
……属性付与と自動回復もかけておくか、どうせ特攻するだろうから。
「…効果定着」
最後の小節を唱えると横で今か今かと待っていた人物に淡い赤色の煙のようなものがまとわりつく……。
「おおおぉぉぉうおうおうおぉぅ、きたきたきたこれこれぇ」
「…………」
毎回思うのだがこの反応はいかんせん大きすぎると思う、一応女の子なのだからなんか、こう、おしとやかにしてほしいと思う、保護者兼任役としては……。
「すごいよね毎回思うけど、中から力湧いてくるこの感じーーっ」
と言いながらも彼女はめいいっぱい何かをためてためて……。
「ベリーーーーーーーーグットっ!!」
大げさに親指を立てて満面のサムアップである。
「あぁそうだな」
思わずこちらは苦笑いである。
「にしても相変わらずこれの効果すごいよねぇ全く負ける気がしないよ。それと君の詠唱の時の紋章の光り方も異様だよねぇ」
「そう、らしいな……じぶんで見えんからなんともいえないけど」
普通魔術を使用するにはそれに対応するには紋章と言われる魔法を練るための器官と言うべきか……。
普通ではその器官の発生位置で使える系統というか方向性が決まるらしいのだが俺のはなぜか詠唱中にコロコロ動いているらしい、キュルキュルと光っているというか…。自分で見てないからなんとも言えないがそれが唱える方向性によって普通は動かない紋章が動いているらしい。まぁそのおかげで火、水、風、雷などの4系統やバフ、デバフなど多種多少に富んでいるので便利ちゃ便利なんだけども……。
「後でなんかありそうでこわいなぁ…」
そんなことをかんがえている俺のことはつゆ知らず彼女は「いってきます」と一言いって駆け出していった。
彼女は根っからの戦闘狂だからあまり心配はしていないがあんまり事後処理のこととか考えていないからなぁ……それで普通はつけないリジェネまでかけたんだけども……。
「ウワァー」「ナンダオマエハー」「ピンクノピンクノオニダァー」「ヤメロクルナチカヨルナァ」などと遠くでビーストたちの悲鳴が聞こえているが俺の知ったこっちゃない、全てはそう戦争が悪い。戦争だから致し方ない犠牲だ。
そういうことにしておこう。
「自分の運のなさを呪うんだな…」
俺は右手を十字に切りつい苦笑った。
この戦いは無事にこちら側ヒュームの勝利に終わったがこの戦いでピンクの鬼と言う異名ができて大層喜んだ人物がいたことは秘密である。