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連鎖  作者: せおりめ
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26歳 オペレーター 女

※教育的によろしくない内容です

 なんだろうこれ。なんなんだろう一体。

 目の前にはぽりぽり頭を掻いている男と、わざとらしくきゃあとか言って毛布を引き上げる女がいる。

 その毛布、私が昨日干したんですけど。シーツも私が洗濯して綺麗に敷いたんですけど。

 ちょっとでも頭を働かせたら、というか考えなくても一目瞭然の光景ではあるものの、思考停止した私は二人を指さして問いかけていた。


「……なにやってんの?」

「あーあ、お前くるなら連絡してこいよ。てか今何時だよおい」


 めんどくせー、と後に続きそうな口調で答えられた。もはや取り繕うつもりもないらしい。

 女の方はといえば怯えた素振りで男の胸へ身を擦り寄せ、でも傲慢な笑みを私に向けている。男からは見えないと思って。ああ効果的だよおまえのやりくちは、いつも私の心を抉ってくれる。

 どうしていつもおまえは従姉妹である私を目の敵にする? 成績も、容姿も、ちょっとずつおまえの方が上だった。そのちょっとの差で、二歳下のおまえにはいつも煮え湯を飲まされてきた。


 今までの彼氏と同じ。やっぱりこいつも奪われた。

 私はね、たまには平日の朝ご飯を一緒に食べようと思ったんだ。こちらは実家暮らしで、こいつは一人暮らしで。二人とも働いているから、泊まりでもしないと普段の朝なんてそうそう一緒にいられない。でも父親が外泊に敏感だし。

 びっくりさせたかったんだよ。昨日の日曜に材料買ってここの冷蔵庫に入れといて。今朝は五時起きだよ、旅行でもないとこんなに早く起きることないよ。

 今六時。こいつはいつも出社に間に合うぎりぎりの七時半に起きるはずで。なのにもうあちこち元気な感じで、服も着てなくて、裸の女と寝っ転がってるって……ねえ。


 二十四の時に知り合ってからもう二年。私だってこの歳になったら結婚も意識する。思い込みではなく、お互い真剣に付き合っていた。二ヶ月くらい前から妙に態度がそっけなくなってきたと気になっていて、だから私もこんな甲斐甲斐しいこと思いついたんだけれど。思いっきり裏目に出たみたいだ。

 そういえば、いつの間にかデートもしなくなった。食材の買い出しにさえ付き合ってくれない。私のために遠出の計画を練ってくれた彼氏はどこへ消えてしまったんだろう。

 この二年、過ごしてきた時間の中で積み上げてきたものが、二人の間には確かにあったはずなのに。崩壊する時はこんなにあっけないものなの。こっちがびっくりさせられた。

 情けなくて悔しくて、キーリングごと合い鍵をやつらに投げつけてやった。耳に届く短い慌て声は、面倒そうでも嫌みったらしくもなかった。ざまあみろ。

 ドアを開けながら、それでもどこかで期待していた追いかけてくる足音はなく、やっぱり私は一人きりで朝の住宅街を駆けていた。

 泣くのは家に帰ってからにしよう。これからまだ出勤しなければならない。社会人はこういう時辛いよほんと。


 夜、自宅にたどり着いてもスマートフォンは沈黙したままだった。タイミングを読んだかのように、友達からの着信すらなかった。

 私はその日、何度目かの恋に終止符を打った。

 泣いた。

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