第7話:海外の超巨大ギルドからの招待状、パスポートがないのでシュレッダー行き
「サトウ様、大変です! アメリカの最大手ギルド『リバティ・フォース』から、あなた宛てに特使が来ています!」
『J-クリーン』の事務所。社長が鼻血を出しそうな勢いで、一枚の黄金色に輝く招待状を突き出してきた。
横では、すっかり清掃つなぎが板についた聖女エレンさんと、黙々と事務所の窓を磨いている剣聖ムサシ(※修行中)が顔を上げる。
「リバティ・フォース……。世界ランク2位から10位までを独占する、文字通りの最強軍団ですね。彼らが動くということは、ついにアメリカが『掃除神』を国賓として招くつもりか……」
ムサシが雑巾を握りしめ、深刻な顔で呟く。
直後、事務所の前にリムジンが止まり、金髪の屈強なエージェントたちがゾロゾロと入ってきた。
「ミスター・サトウ! 我々の国には、百年以上放置された伝説のSSS級ダンジョン『デス・バレー』がある。そこを『掃除』してほしい。報酬は……1億ドル(約150億円)だ!」
事務所が静まり返った。
150億。一生、いや十代先まで遊んで暮らせる金額だ。
だが、俺は招待状を一瞥して、ため息をついた。
「……すみません、無理です」
「……なっ!? 金が足りないのか!?」
「いえ、そうじゃなくて。俺、パスポート持ってないんですよ。作るの面倒だし、手数料も高いし」
「「…………は?」」
エージェントも、社長も、エレンさんも固まった。
150億円の依頼を、数千円の手数料がもったいないという理由で断ったのだ。
「それに、アメリカまでの飛行機代、自腹ですよね? うちの会社、海外出張の規定なんてないし。成田までの電車賃だってバカにならないんですよ」
「サトウ殿……! 交通費を気にして世界を救う機会を逃すとは、なんと無欲な……。これぞ『足るを知る』という東洋の神秘!」
ムサシが勝手に感動して涙を流しているが、俺は本気だ。
知らない土地に行くのは疲れるし、何より日本の「半額弁当」が食べられなくなるのは死活問題だ。
「あと、俺のシフト表見てください。来週は町内会の『ゴミゼロ運動』のボランティアが入ってるんです。地域の信頼関係、大事なんで」
「国……家……レベルの依頼より、町内会のゴミ拾いを取るというのですか……!?」
エージェントたちが崩れ落ちる。
世界最強の『掃除神』は、一国の予算よりも、近所の公園に落ちている空き缶の方を優先した。
案の定、つぶやいたーでは祭りが発生していた。
『【伝説】掃除神、150億円の依頼を「パスポート代がもったいない」と拒否』
『時給1200円の男、1億ドルをゴミを見る目で一蹴www』
『理由:町内会のゴミ拾いがあるから。聖人君子すぎて草』
『リバティ・フォースの団長、ショックで寝込む』
――俺は、事務所の隅にあったシュレッダーに招待状(たぶん金箔入り)を放り込み、明日使う新しい洗剤のカタログを開いた。
第7話をお読みいただき、ありがとうございます!
150億円よりも「パスポート代」と「町内会の行事」を優先する佐藤さん。
読者の皆様から「いや、行けよ!」というツッコミが聞こえてきそうです(笑)。
佐藤さんにとって、最強の敵は魔王ではなく「手続きの面倒くささ」なのかもしれません。
「価値観が庶民すぎて好き」「ムサシの深読みが加速してるw」と思った方は、
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次回、第8話。
「掃除神のせいで、世界中のダンジョンの不動産価値が爆上がりする」
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