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第3話:清掃員の朝は早いが、会社の前に黒塗りの高級車が並んでいるのは想定外だった

「……なんだ、これ。ドラマの撮影か?」


翌朝。

 俺――佐藤カズマは、いつものようにボロい自転車を漕いで勤務先の『J−クリーン』本社(といっても古い雑居ビルの一室だが)の前に到着した。


そこには、俺の年収を何十倍も超えそうな黒塗りの高級セダンが十数台、ずらりと並んでいた。

 それだけじゃない。

 ビルの入り口には、スーツを完璧に着こなしたSPらしき男たちと、テレビでしか見たことがない『日本探索者ギルド』の幹部たちが、顔を真っ青にして立っている。


その中心にいたのは、昨日救助したはずの聖女、エレンだった。


「あ、あの……!」


エレンが俺に気づき、駆け寄ってくる。

 昨日のボロボロな姿とは打って変わって、白銀のドレスに身を包んだ彼女は、直視できないほど眩しい。


「探しました……! 昨日は、お礼も言えずに……」


彼女が声を上げると、周囲のSPや幹部たちが一斉に俺に注目した。

 一秒後、バタン! と一斉に扉が閉まるような音がして、並んでいた男たちが一斉に最敬礼――いや、土下座に近い角度で頭を下げた。


「我が国の至宝を救い、SSS級ボスを『排除』していただいた英雄殿! ぜひ、我がギルドの最高顧問としてお迎えしたい!」


ギルド幹部の一人が、震える声で叫ぶ。

 周囲の野次馬が「え、あのおじさんが!?」「マジで掃除神じゃん!」とスマホを構え始めた。


だが、俺の頭の中にあるのは別のことだった。


「……あの、すみません」


俺はおずおずと手を挙げた。


「最高顧問っていうのは、時給いくらもらえるんですか?」


「…………は?」


幹部が呆然と顔を上げる。


「いや、実はこれから渋谷のE級ダンジョンで定期清掃のシフトが入ってまして。遅刻すると時給引かれちゃうんですよ。ここ、タイムカード厳しいんで」


俺が昨日倒したボスのドロップ品(魔石)だけで、国家予算レベルの価値があることなど、俺は知らない。

 ただ、今日一日を生き抜くための日銭が大事なのだ。


「……し、シフト……?」


エレンが絶句する。

 世界最強の『掃除神』が、時給千二百円のために世界の命運を左右するスカウトを断ろうとしている。

 そんな光景、前代未聞だった。


「そういうわけなんで、失礼します。あ、その車、搬入口の邪魔になるんでどかしておいてもらえます? ゴミ収集車が来ちゃうんで」


俺は、呆然と立ち尽くすエリートたちの横をすり抜け、古びた階段を駆け上がった。

 背後でエレンが「待ってください! せめて連絡先を――!」と叫んでいたが、あいにく俺のガラケーは電池が切れていた。

第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


世界最強のスカウトよりも、時給カットの方が怖い佐藤さん。

価値観が一般人(より少し下)のまま最強になってしまった男の悲哀です。


一方の聖女エレン様、完全にロックオンしてしまったようです。


「佐藤さん、金銭感覚w」「エレン様が不憫で可愛い」と思った方は、

ぜひ【ブックマーク】や、下の【☆☆☆☆☆】の評価をお願いします!


評価ポイントが増えると、佐藤さんの時給が上がる……かもしれません(笑)

よろしくお願いします!

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