第22話:極夜島上陸! だが、あまりのヌメリに銀龍(ルンバ)が空中でスリップする!?
「……おい、エレンさん。これ、本当に島か? 巨大な『ナメクジ』の背中じゃないのか?」
WCO(世界清掃機構)直轄の空中清掃艇――もとい、銀龍の背中に乗って、俺たちはついに極夜島の上空へと到達した。
視界に入るのは、緑豊かな日本の風景とは程遠い、ドロドロの黒い粘液に覆われた異形の島だ。
「……総帥。これが、かつての英雄たちが『浄化不能』と断じた絶望の地です。魔素が酸化し、呪いとなって物理的な『ヌメリ』に変質しているんです。……シブキ、高度を下げて!」
『承知いたしました、マスター。……ですが、妙です。この大気、脂ぎっていて……翼がっ!?』
ズザザザザァァァッ!!
突然、銀龍の巨体が空中で不自然に姿勢を崩した。
まるで氷の上でバナナの皮を踏んだような、情けないスリップ。
『ギ、ギギィィッ!? マスター、申し訳ありません! 空気に含まれる「呪い(油分)」が濃すぎて、空を掴む感覚が……滑る……滑りますぅぅぅ!』
「……マジか。龍が空中でスリップするなんて、どんだけ油っこいんだよ、この島」
ムサシが鞘を握りしめ、冷や汗を流している。
「……佐藤殿、これは拙者の剣でも斬れませぬ。斬ろうとした瞬間に刃が滑り、力が逃げていく。これぞ正真正銘の『無敵のヌメリ』……!」
島から放たれるドス黒い蒸気が、銀龍の白い鱗をみるみるうちに茶色く汚していく。
シブキが「私の……私の中の潔癖(マスターへの愛)が、この汚れを許さない……!!」と半狂乱でブレスを吐くが、ヌメリはそれを吸収し、さらに粘度を増していくようだった。
「……よし、シブキ。無理しなくていい。一旦、ホバリングだ」
俺は立ち上がり、軍手をキュッと締め直した。
そして、おもむろにリュックから、アメリカで大統領から貰った『最高級・工業用アルカリ脱脂剤(原液)』を取り出す。
「エレン副総帥。……これ、銀龍の足裏と翼の先に塗って。あと、俺のモップに『超強力・界面活性剤』をフルチャージ」
「……総帥、まさか。あのヌメリに直接挑むおつもりですか!? 触れた瞬間に、装備が腐食して溶けますよ!」
「……溶ける前に、拭き取る。それが掃除の基本だろ」
俺は銀龍の背から、ヘドロの海へと飛び降りた。
「シブキ! 散水用意! ……ムサシさんは、俺が剥がした『ヌメリの核』を、空中で細かく刻んで廃棄しろ!」
「「御意ッ!!」」
着地した瞬間、俺の足元はズブズブと沈み込み、猛烈な異臭が鼻を突く。
だが、俺は動じない。
十年、この瞬間のために、俺はあらゆる「こびりつき」と戦ってきたんだ。
「……一〇年越しの磨き残し。……まずは、玄関(海岸線)から綺麗にしてやるよ」
俺がモップを一閃させた瞬間。
シュパァァァァァァンッ!!
銀龍すらスリップさせた「呪いのヌメリ」が、俺のモップの通った跡だけ、面白いように『親水性』へと書き換えられ、真っ白な砂浜が露出した。
『……なっ!? 呪いが……呪いの分子構造が、佐藤様の洗剤によってバラバラに分解されている……!?』
シブキが驚愕の声を上げる。
つぶやいたーの反応:
『【特報】掃除神、極夜島に上陸! 第一声は「脂ぎってて不快」』
『伝説の英雄が滑って転んだヌメリを、マジックリン(特製)で無効化www』
『銀龍、ついにスリップ。それを助ける主人がイケメンすぎる』
『極夜島が「白浜アドベンチャーワールド」になるまであと数時間か?』
「……エレン副総帥。……悪いけど、日本の本社に電話して。『替えのモップ、あと百本持ってきて』って」
「……了解しました、総帥! すぐにヘリで輸送させます!」
――史上最大の「大掃除」が、今、日本の最北端で幕を開けた。
第22話をお読みいただき、ありがとうございます!
龍ですら滑る「究極のヌメリ」。
冒険者たちが諦めた理由は、攻撃が効かないのではなく「まともに立てないから」でした。
次回、第23話。
「ヌメリの正体は、数千年分の『不燃ゴミの怨念』!? 佐藤さん、分別を間違えた神を説教する回」
「銀龍のスリップ、絵面がひどいw」「モップ100本、本気だ……」と思った方は、
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皆様の応援で、佐藤さんの「界面活性剤」の濃度が上がります!




