第21話:帰国した総帥。だが空港では冒険者たちが『魔物を消すな!』とデモをしていた
「……エレンさん。あの横断幕、なんて書いてある?」
成田国際空港。専用機から降り立った俺の目に飛び込んできたのは、華やかな歓迎……ではなく、殺気立った武装集団と、高く掲げられたプラカードの群れだった。
『清掃神は日本から出て行け!』
『魔物を洗うな! 俺たちの素材(ドロップ品)がなくなるだろ!』
『掃除のせいでダンジョンの地価が上がって、家賃が払えない!』
エレンが眉間にシワを寄せ、副総帥としての冷徹な声で呟く。
「……日本の冒険者ギルド加盟員たちですね。総帥がアメリカのダンジョンを『除菌』して回ったせいで、魔物が湧かなくなり、素材バブルが崩壊することを恐れているんです。要するに、自分たちの利権を守りたいだけの、不衛生な連中ですよ」
「……いや、不衛生って。彼らも仕事なんだからさ」
俺が苦笑いしていると、デモ隊の先頭から一人の男が進み出てきた。
日本ランク3位の重戦士、ゴウダ。背負った大斧には、まだ魔物の返り血がこびりついている。
「おい、佐藤カズマ! 貴様が渋谷や五大湖でやったことは聞き及んでいる! だがな、ここは日本だ! ダンジョンに魔物がいて、それを俺たちが狩る……そのサイクルを『清掃』なんていう暴力で壊されてたまるか!」
「……暴力、か。ただモップ振ってるだけなんだけどな」
ゴウダが斧を地面に叩きつける。
「極夜島にも手を出すな! あそこは危険だが、落ちている素材は国宝級だ! 貴様が『除菌』しちまったら、ただの綺麗な島になっちまうだろうが!」
俺は、ゴウダの斧の刃先をじっと見つめた。
「……あのさ。ゴウダさんだっけ。その斧、手入れしてないだろ。返り血が酸化して、刃こぼれの原因になってる。……それに、君の靴。泥がついたまま空港の絨毯を踏むのは、マナー違反だ」
「あぁ!? 何を言って――」
「ムサシさん。……ちょっと、彼らの『身だしなみ』を整えてあげて」
「御意!!」
ムサシが音もなく動いた。
シュシュシュシュッ!!
抜刀したかと思えば、ムサシが手にしていたのは刀ではなく、WCO特製の『高速研磨クロス』と『泥落としブラシ』。
コンマ数秒の間に、デモ隊数百人の武器の汚れを落とし、靴の泥を完璧に払い落とした。
「……なっ!? 俺の斧が……新品同様に輝いている……!?」
「バカな! 踏ん張りがきかなかった俺のブーツが、吸い付くようなグリップ力を取り戻しただと!?」
呆然とする冒険者たちに、俺は静かに告げた。
「いい道具を持って、綺麗な場所で戦えば、生存率は上がるはずだ。……魔物がいなくなるのが怖いなら、もっと奥まで掃除しに行けばいい。極夜島は、君たちが諦めた場所だろ?」
「…………っ!!」
言葉に詰まるゴウダたち。
そこへ、空から巨大な影が降りてきた。銀龍のシブキ(空中清掃艇形態)だ。
『マスター。空港の駐車場に、許可なく放置されていた「違法駐車車両」をすべて洗車し、ワックスがけを完了いたしました。……次は、このデモ隊を「洗浄」しますか?』
「……いや、彼らはもういいよ。……エレンさん、行こう。極夜島が待ってる」
「了解しました、総帥。……皆さん、道を空けてください。ここから先は、本物のプロの仕事ですから」
俺たちが悠然と歩き出すと、さっきまで怒鳴っていた冒険者たちは、自分たちの「ピカピカに磨かれた武器」を呆然と眺めながら、自然と道を開けていった。
つぶやいたーの反応:
『【速報】掃除神、帰国早々デモ隊の「武器」を勝手にメンテして黙らせる』
『ゴウダの斧が光りすぎて、自分の顔が映ってて草www』
『「汚い道具で戦うな」――佐藤カズマの説教、重みが違いすぎる』
『極夜島、ついに掃除神が上陸決定。日本の不動産王が震え始めたぞ』
「……はぁ。日本に帰ってきて早々、これか。……エレンさん、コンビニ寄っていい? アメリカのより、おにぎりの海苔がパリパリしてるやつ食べたいんだ」
「……調印式の後で、山ほど買ってあげますから。今は我慢してください、総帥」
こうして、世界最強の清掃員一行は、デモ隊すら「綺麗にして」黙らせ、最終決戦の地へと向かうのだった。
第21話をお読みいただき、ありがとうございます!
日本の冒険者たちからすれば、カズマさんは「生態系ブレイカー」なわけですが、当の本人は「道具の手入れがなってない」ことの方が気になるようです。
次回、第22話。
「極夜島上陸作戦! だが、島全体が『ヘドロの要塞』になっていて、上陸した瞬間にシブキがブチギレる!?」
「ムサシさんの高速メンテw」「コンビニのおにぎりを愛する総帥」と思った方は、
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