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第20話:湖底の汚物神、あまりに硬いので『メラミンスポンジ』として再利用される

「……あー。ムサシさん、回しすぎたかな。何か変なのが浮いてきたぞ」


透き通った五大湖の中央。

 水面が激しく盛り上がり、ドロドロの泥を纏った巨大な異形が姿を現した。

 それはかつて、この地の大地を腐らせ、数千年の汚れを喰らって眠っていた『古代汚物神・マッドガデス』。


『オォォォ……我を呼び覚ましたのは何奴……! この清浄な空気、耐え難し……! 再び世界を泥で塗り潰してくれよう!』


汚物神が咆哮すると、周囲の湖水が再びどす黒く染まりかける。

 エレンが慌てて魔導測定器を突き出した。


「総帥、大変です! 汚れの指数が……計測不能オーバーフロー! 攻撃ではありません、あいつ自身が『汚れそのもの』なんです! 物理攻撃は全て泥に吸収され、魔法も腐食されます!」


「……汚物神か。……なるほど」


俺はモップを地面に置き、腰のポーチから「特製・高濃度クエン酸スプレー」を取り出した。

 アイアン・ビル団長たちが「逃げろ! あれは人類には触れられない禁忌だ!」と叫んでいるが、俺の関心は一点にあった。


「ねえ、シブキ。あいつのあの、表面のザラザラした突起……。あれって、研磨剤ダイヤモンド・パウダーと同じ成分じゃないか?」


『……左様にございます、マスター。あの神の表皮は、数億年分の鉱物汚れが凝縮され、極めて硬い「研磨面」を形成しております』


「……よし。……エレン副総帥、特大の『持ち手』を持ってきて」


「えっ……? 持ち手、ですか?」


俺はシブキに命じて、汚物神の両腕を「空間清掃(固定)」で無理やり束ねさせ、そこにリバティ・フォースの戦車用ワイヤーを巻き付けた。

 

「……いいか、お前。せっかく出てきたんだ。五大湖の壁面にこびりついた、頑固な『水垢』を落とす手伝いをしろ」


『……な、何だと!? 我は神だぞ!? 破壊と汚濁の――ギ、ギギィィッ!?』


俺は汚物神の首根っこを掴み(シブキの結界で直接触れないようにして)、そのまま湖の護岸へと叩きつけた。


「そら、磨け!!」


ゴリ、ゴリゴリゴリゴリィィィッ!!


汚物神の「硬すぎる身体」が、天然の巨大なメラミンスポンジとなって、湖の岩肌を猛烈な勢いで研磨していく。

 

「……ひえっ。神を……神をタワシにしてる……」


ムサシが絶句し、エレンが呆然と見守る中、俺は汚物神を右へ左へと高速スライドさせた。

 あんなに頑固だった古代の水垢が、汚物神の悲鳴と共にみるみる削り取られ、美しい岩肌が露出していく。


『やめろぉぉぉ! 我の神聖な泥が……削れていく……! 磨り減ってしまうぅぅぅ!』


「文句言うな。お前、角張ってて持ちにくいんだよ。もっと角を落として丸くなれ」


数分後。

 五大湖の全周は、高級ホテルの大浴場のようにツルツルに磨き上げられた。

 

 役目を終えた汚物神は、当初の10分の1ほどの大きさにまで「使い切られて」小さくなり、ただの真っ白な『ただの石』になって湖の底へ沈んでいった。完全に浄化されて、ただのパワースポットになったらしい。


「……ふぅ。……いい仕事したな」


俺が軍手を外すと、背後から雷鳴のような大歓声が上がった。

 アメリカ大統領がヘリで駆けつけ、俺の手を握りしめた。

「ミスター・サトウ! 貴方は神を倒したのではない、神を『有効活用』したのだ! 自由の国アメリカは、今日から貴方を『地球の洗濯屋』として全権を委託する!」


つぶやいたーの反応:

『【衝撃】古代の邪神、掃除神に「特大タワシ」として使役され消滅』

『「磨り減ってしまうぅぅぅ」は歴史に残る命乞いwww』

『今日の五大湖:磨きすぎて湖面が空を100%反射。もはや「ウユニ塩湖」超え』


「……よし。エレン、これでアメリカ編は終わりかな。……あ、副総帥だったっけ」


俺が冗談めかして言うと、エレンはスマホの画面を凝視したまま、顔を青ざめさせた。


「……総帥。お疲れのところ申し訳ありませんが、日本から緊急の入電です。……ついに、あの場所の『封印』が物理的な限界を迎えました」


画面に映し出されたのは、日本近海の衛星画像。

 そこには、かつて**【世界ランク上位の冒険者パーティーが全滅】し、高名な大魔導士たちですら「生命への冒涜」と断じて封鎖した伝説の浮遊島――『極夜島ごくよとう』**が、どす黒い霧を吹き出しながら浮上する姿があった。


「……極夜島。……十年前、俺がまだ駆け出しの頃に、島から漏れ出す『呪いの澱み』のせいで、持ってたホウキが数秒で腐った……あの因縁の場所か」


「ええ。かつての英雄たちが武力で挑み、その尽くが『浄化不能』と匙を投げた、地球の排泄口……。今や、そこから溢れ出した呪いが、日本全土を飲み込もうとしています」


エレンの言葉に、ムサシが鞘を鳴らし、シブキが瞳に冷徹な光を宿す。

 だが、俺の心にあるのは、世界を救う義務感なんて高尚なものじゃなかった。


「…………。……ああ、あれか。……十年越しの『磨き残し』。……ようやく、俺のモップで決着がつけられるな」


俺はボロい軍手を脱ぎ捨て、WCO特製の『黄金の滑り止め付き軍手』をはめ直した。


――こうして、アメリカの全土をピカピカにした俺たちは、冒険者たちが諦めた「史上最大の汚れ」を洗い流すべく、日本への帰路についた。

第20話をお読みいただき、ありがとうございます!


アメリカの邪神すら「使い切って」しまったカズマさん。

次なる舞台は、かつての英雄(冒険者)たちが武力で挑んで敗北した、最悪の汚染地帯「極夜島」です。


第2部完結! ここまで応援してくださり、本当にありがとうございます!

次回、第3部(第21話〜)。

「日本・極夜編! 英雄の剣すら腐らせる『究極の酸性汚れ』に、総帥はどう立ち向かうのか!?」


「冒険者が逃げ出した汚れにモップで挑むw」「因縁の対決、熱い!」と思った方は、

ぜひ【ブックマーク】や、下の【☆☆☆☆☆】の評価をお願いします!


第3部も、さらに磨きをかけてお届けします。よろしくお願いします!

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