第11話:世界清掃機構『J-クリーン・グローバル』設立。なお、本人はガラケーを買い替えたいだけ
「……あの、社長。これ、何?」
数日後。俺がいつものようにボロアパートを出て事務所に向かうと、そこには古びた雑居ビルではなく、都心の一等地にそびえ立つ全面ガラス張りの超高層ビルが建っていた。
入り口には巨大な金文字でこう書かれている。
【世界清掃機構(WCO)/ J-クリーン・グローバル 本部】
ロビーに入ると、高級スーツに身を包んだエレンさんと、なぜか道着の上にタキシードを羽織ったムサシが、俺の前に跪いた。
「お待ちしておりました、佐藤総帥! 本日をもって、貴方を頂点とする世界規模の清掃組織が正式に発足いたしました!」
「……総帥? いや、俺はただの清掃員(非正規)なんだけど」
慌てて社長を探すと、彼は見たこともないほど高級な葉巻(※火はついていない)をくわえて、ふかふかの椅子に座っていた。
「ガハハ! 佐藤くん、いや佐藤総帥! 君の技術を世界が放っておかないんだよ。君には現場の『最高執行責任者』として、自由に世界を磨いてもらう。あとの面倒な書類仕事や組織運営は、エレンくんとシブキちゃんが完璧に整えてあるから安心したまえ!」
エレンさんがタブレットを操作しながら、テキパキと報告を始める。
「先輩、各国のダンジョン清掃依頼を統合し、専用のプライベートジェットを用意しました。機内には最新の『洗剤調合室』も完備しています。あ、あとこれ……新しいスマートフォンです」
差し出されたのは、最新型の超ハイスペック端末。
だが、俺はそれを手に取って、困惑した。
「……いや、俺、ガラケーの二つ折りする感触が好きなんだよね。これ、ボタンないじゃん」
「ご安心ください! 外装は特注で『二つ折りガラケー風』にしてありますが、中身は量子コンピュータ直結です。世界中の汚れ(魔素)を衛星から検知できます!」
「……便利なんだか不便なんだか……」
ムサシが俺の横に並び、厳かに告げる。
「佐藤殿。貴殿が自由に動けるよう、拙者が私設軍隊(清掃員予備軍)を組織した。貴殿がモップを一振りする前に、雑魚は全て拙者らが片付ける。貴殿はただ、世界の『核』を磨くことだけに集中してほしい」
シブキが俺の背後で、新しい軍手を恭しく差し出す。
『佐藤様。家賃一万二千円のアパートは、セキュリティ上の理由で昨夜、私が「空間清掃(解体)」しておきました。今日からはこのビルの最上階、地上三百メートルの特製ルームが貴方の「清掃待機室」です』
「……俺の、唯一の癒やしだった安アパートが……。てか、そこ、半額弁当売ってるスーパー遠いんだけど」
俺の意志を無視して、世界は「掃除神」を中心とした巨大な歯車を回し始めた。
本人はただ、慣れ親しんだガラケーと安い賃貸で、静かに床を磨いていたいだけなのに。
「……はぁ。とりあえず、初仕事はどこ?」
「アメリカ、デス・バレーの未踏破区域です! 現地では既に一万人の清掃待機列ができています!」
俺はため息をつき、二つ折り(風)のスマホをパチンと閉じた。
どうやら、俺の時給が「国家予算」に化ける日が来てしまったらしい。
第2部、スタートです!
佐藤さんの「庶民派なこだわり」を、周囲が「神の試練」や「深い考え」と勘違いして、超ハイテクな環境に無理やりアップデートしてしまいました。
ガラケー型の量子スマホ……ちょっと欲しいですね(笑)。
「総帥になっちゃったw」「家を勝手に解体するシブキちゃん、重いw」と思った方は、
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第2部も、熱い応援をよろしくお願いいたします!




