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第10話:新入りの家政婦さんに、現在の『清掃シフト』を説明します

「……えーと、君。名前、なんて呼べばいい?」


事務所の片隅で、俺は新入りの「ダンジョンの精霊」に向き合っていた。

 彼女はメイド服の裾を正し、深々と一礼する。


『私は実体なき迷宮の意志。ですが、掃除神様……いえ、佐藤様が呼びやすい名をお付けください』


「じゃあ、シブヤで拾ったから『シブ』で。……いや、女の子にそれは可哀想か。『シブキ』でいいか。掃除すると水飛沫しぶきも飛ぶし」


『シブキ……。素敵な名をありがとうございます。この身、一生の汚れを拭う覚悟で仕えます』


こうして、俺の背後には常に浮遊する美少女家政婦が加わった。

 すると、さっそく「先輩」であるエレンさんとムサシが、新入りのシブキに現状を教え始める。


「いい、シブキちゃん。ここ『J-クリーン』は今、世界で最も注目されている場所なの」


エレンさんがホワイトボードを叩きながら説明する。


「まず、私たちの師匠である佐藤先輩。彼は十年間、世界中の誰もが見向きもしなかった『魔素の汚れ』を物理的に清掃し続けた結果、今や指一本でSSS級魔王を消臭できる域に達しているわ」


『……流石は掃除神様。その徳の高さ、宇宙の塵すら恐れおののくレベルです』


「そして私が、元聖女のエレン。今は佐藤先輩の第一弟子として、魔法に頼らない『拭き掃除』の修行中よ。……つぶやいたーでのフォロワーが三千万人を超えちゃったけど、今はバイト代の方が大事だわ」


「拙者はムサシ。かつて剣聖と呼ばれた男だ」


ムサシが窓を磨きながら、厳かに口を開く。


「拙者は佐藤殿の動きに『剣の極致』を見出した。現在はゴミの分別と、雑巾絞りによる握力の鍛錬に励んでいる。……最近、ギルド本部から『早く戻って魔王を斬ってくれ』と泣きつかれているが、掃除が終わるまでは動かん」


シブキは感銘を受けたようにメモを取っている。


『なるほど。佐藤様を筆頭に、元聖女と現剣聖が、時給千二百円で世界の汚れをリセットしている……。これが現代の「最強(ホワイト企業)」なのですね』


「いや、ホワイトっていうか、ただの零細企業だけどな」


俺がツッコミを入れると、シブキが俺のスマホ(二つ折りのガラケー)を不思議そうに指差した。


『佐藤様。先ほどからその機械に、とんでもない数の「念話(着信)」が入っていますが』


「……あ、本当だ。電池切れてたから気づかなかった。えーと、なになに?」


電源を入れた瞬間、メッセージが爆流した。


『【緊急】アメリカ、イギリス、フランス各国政府より、ダンジョン大清掃の正式依頼あり』

『【警報】世界各地のダンジョンが、佐藤さんの「洗剤」を求めて活性化中!』

『【相談】社長より:佐藤くん、時給二千円にするから世界を救ってくれないか!?』


俺は画面を閉じ、深くため息をついた。


「……シブキ。悪いけど、家政婦の仕事は後回しだ。どうやら明日から、シフトが世界規模で埋まりそうだよ」


『承知いたしました。ゴミがあるところ、どこまでもお供いたします』


エレンがモップを構え、ムサシが大剣のようなブラシを背負う。

 俺は新しい軍手をはめ直し、事務所の扉を開けた。


「よし、行こう。……世界中、磨き残しのないように、な」


――こうして、一人の清掃員による「世界大掃除」の幕が上がった。

第10話(第1部)完結です!


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

しがない清掃員だった佐藤さんが、聖女・剣聖・ダンジョンの精霊を率いて、世界規模の「大掃除」に乗り出すことになりました。


次の第2部(第11話〜)では、

「ついに海外進出! 砂漠のダンジョンを水拭きする」

「海底ダンジョンのヌメリを、シブキの特殊能力で丸洗い」

などなど、さらにスケールアップした清掃無双をお届けします。


「第1部完結おめでとう!」「続きが早く読みたい!」と思ってくださった方は、

最後にぜひ、【ブックマーク】と、下の【☆☆☆☆☆】の評価をお願いします!


皆様のポイントが、佐藤さんの時給と私の執筆エネルギーに直結します(笑)。


それでは、第2部でお会いしましょう!

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