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58 ワイアットとモニカ

*ワイアット視点*



ユーグレイシア王国クレイオン侯爵家は、シーフォールス王国トルガレント辺境地の騎士であれば、誰もが知っている家名だった。おまけに、クレイオン家の三女リュシエンヌは歴代一と言われている事も。


一体どんな令嬢なのか──






「リュシエンヌ=クレイオンです。3年間宜しくお願いします」


ミントグリーンの瞳がとても綺麗な令嬢だった。

本当に武の才能があるのか?と思う程華奢で、普通の令嬢と何ら変わりのないように見えた。


ー噂は、ただの噂だったのか?ー


第一印象は、そんなものだった。





********


他人(ひと)は見た目で判断してはいけない…」

「ん?何か言った?」

「何でもない……」


首を傾げているのはリュシー。見た目は可愛らしいのに、騎士としての実力はトルガレントの騎士の中でもトップクラスだった。どこにそんな体力が?と思う程体力があり、身のこなしも軽い。これは、『獣人だから』だけでは済まない。きっと、今迄努力をして来た積み重ねの結果なんだろう。しかも、侯爵令嬢でありながら、誰にでも気さくに対応するリュシーを好きになるのに、それ程時間は掛からなかった。


恋人も婚約者も居ないと聞き、リュシーがユーグレイシアに帰ってしまうまでに何とかしたい─と思っていたのに。



アラスター=ヴェルティル


俺からすれば、少し胡散臭そうな笑顔を浮かべる彼は、女性から見れば爽やか系の男前だ。そんな奴が、リュシーの婚約者だと言って現れた。


ーリュシーは、騙されているのでは?ー


とも思ったりもしたが、リュシーが奴を見つめる目を見ると、本当に奴が好きだと言う事が分かったし、奴のリュシーを見る目もまた………


ー俺の出番は、最初から無かったんだー


それでもリュシーへの想いを断ち切る事はできず、最後の最後で想いを告げると


『ワイアット……ありがとう。ワイアットの恋人や婚約者にはなれないけど、ワイアットと同じチームで仲良くなれて良かったって思ってる。ワイアットも、()()()()()幸せになって……』


と、サラッと止めを刺された。リュシーは、奴にはチョロ甘なのに、それ以外には厳しいようだ。心は痛みを訴えはしたが、止めを刺されて良かったのかもしれない。すぐに忘れる事はできないだろうけど、ゆっくりでも前に進む事はできそうだから。








*モニカ視点*



「ようやく2人が纏まって良かった」

「そうですね……」


私の目の前でホッとした顔で紅茶を飲むのは、クライド=スタンホルス様。宰相であるスタンホルス公爵様の嫡子で、王太子殿下の側近の1人だ。

どうして、そんな令息と2人でお茶をしているか?と言うと………つい先日、婚約が調ったからだ。


「まさか、本当にクライド様が私との婚約を結ぶとは思ってもみませんでした」

「何で?私、会った時からモニカが好きだと言っていたよね?」

「会ってすぐに『好きだ』なんて言う人の言葉なんて、信じられる訳ないですよね!?」

「えー…それは仕方無くない?モニカが私の好みド真ん中だったから」


ーいやいや、そんな事言われても知らないから!ー


クライド様と初めて言葉を交わしたのは、リリアーヌ様に誘われたお茶会の時だった。そのお茶会の3日後にクライド様からお茶のお誘いを受けて、その時に『好きなんだ。モニカと呼んでも良い?』なんて言われて─断ってもモニカと呼ばれ、注意しても呼ばれ、もう面倒くさくなって放置すれば、モニカ呼びが当たり前になり、会う度に『好きだ。婚約しよう』と言われるようになってしまったのだ。


「一体、私なんかのどこが良いのか…」

「それ、聞いちゃう?そうだね…第一に顔は本当に私の理想とする顔で、晴れた空の様な水色の瞳に、ハニーゴールドの髪がキラキラ輝く姿はまさに天使そのものだよね?モニカは声も可愛いよね?その声で名前を呼ばれる度に嬉し過ぎて抱きしめたくなるのを我慢するのが大変なんだよね……それに何よりも、他の令嬢とは違って、私に媚を売ったり色仕掛けしないところが良いよね…でも、モニカからなら色仕掛けされても大歓迎だけどね?それに──」

「いや、もうそれ以上喋らないでもらえますか?」

「え?何で?まだまだ言い足りないんだけど?」

「黙らないと…婚約破棄しますけど?」

「……………」


ユーグレイシア王国の頭脳と謂われる宰相のスタンホルス公爵の嫡子クライド様が、こんな人だと……誰が信じてくれるだろうか?


ーあ…リュシーだけは、黙って私を抱きしめてくれたわねー


「…………」

「はぁ…喋っても良いですよ」

「婚約破棄しない?」

「しませんから……クライド様次第ですけど」

「ありがとう、モニカ!」


普段キリッとしている人が、屈託の無い笑顔を浮かべると、可愛くて仕方が無くて、胸がキュンッと音を立ててしまうのも仕方無いと思う。結局は、私もクライド様に想いが傾いていると言う事なんだろう。


『リュシーはヴェルティル様にチョロ過ぎるわ』


と、言う私も、クライド様にはチョロいのかもしれない。



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