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41 レイモンド=オズ=ユーグレイシア

*レイモンド王太子視点*



ずっと不在だった聖女が現れた時は、本当に嬉しかった。


メグ=ツクモは、実年齢よりも幼く見えたが、とても落ち着いた雰囲気の女の子だった。

ここに来てからは、この世界について学ぶ事と、聖女の訓練を毎日必死で頑張っていた。頑張り過ぎではないか?とも思ったりもしたが、メグの後見人は弟であるアラールと言う事もあり、私は口を出さずに見守るだけに留めていた。それが……


まさか、アラールがあんな馬鹿女に()()()()()とは思わなかった。


華麗なる悲劇のヒロインぶりだった。


ユラ=カミジョーは、私が一番嫌悪するタイプの女だった。如何に自分が可哀想なのか、如何に自分がメグの事を考えているか。自分を上げながら、相手を落としていく。


「まるで、あの女のようだな……」

「何がですか?」

「いや、何でもない。それじゃあ、私がユラと話をしよう。申し訳無いが、2人きりで話をさせてもらえるかな?」

「駄目です─と言っても、聞いてくれないんでしょう?10分だけですよ?10分経ったら、私も中に入りますからね」

「ありがとう、アラスター」


そう言って、私は1人でユラが居る地下牢へと入って行った。







「気分はどうかな?反省は…した?」

「気分なんて良い訳ないでしょう!反省なんてする事はないわ!それよりも!怪我した所が痛いの!それに、少しずつ痺れて来て……何故私が……巻き込まれてやって来てしまっただけなのに、どうしてこんな酷い扱いをされなきゃいけないの!?」


やっぱり、反省をしてもいないし、自分の置かれている状況も理解していないようだ。


「人を刺しておいて、反省する事が無いなんて、よく言えたね?」

()ではないわ!獰猛な豹よ!正当防衛よ!リュシエンヌが豹の姿で出て来たのが悪いのよ!私はただ、恐ろしくて、自分を守る為にした事よ。それに、リュシエンヌは元気になったんでしょう!?」

「少しでも反省の色があれば、多少の手加減をしてあげようかと思っていたけど…する必要はなさそうだね」

「手加減?」

「私から、ユラへの贈り物だ」


左の手の平を上に向けてフッと息をかけると、そこに黒色の魔力の塊が現れた。


「私は、治癒の魔法が使えるんだ」

「だったら、私の怪我を今すぐに──」

「同時に、私が癒やした怪我を移す事ができるんだ」

「移す?──あ゛あ゛あ゛あ゛ーっ」

「…………」


私の治癒の力は、怪我や病気を吸収して消化させると言うモノだが、多少自分の体に負担は掛かるが、それを消化させずに溜めておく事もできる。そして、その溜めていたモノを、他者に移す事ができる。勿論、通常その能力を使う事はない。この能力は、治癒の力を手に入れようと悪事を働こうとする者達への対抗措置のようなモノだと思っている。その能力をユラに使っても問題無いのか?と問われれば、答えは『無い』だ。


「ユラ、お前は()()()でありながら、名も無き女神の遣いである聖女メグを陥れようとしたんだ。それでもユラに何も起こらなかったは、メグがユラを赦していたからだ」


あの時に反省しておとなしくしておけば良かったが、ユラは更に増長しただけだった。


「い゛たい!!おねがっ…たすけ──」

「何故、お前を助けなければならない?その痛みは、お前が白豹に与えたモノだよ。白豹からすれば、短剣を突き立てて来たお前の存在は、さぞ怖かっただろうね。何もしていないのに、そこに現れただけで殺され掛けたのだから」


私の目の前で涙を流しながら蹲っているユラの左足からは、血がポタポタと流れ落ちている。


「自分がした事が自分に返って来ただけだから、仕方無いよね?」

「なんで……いたい……たすけてっ」

「そうそう、ユラ、おめでとう。君はメグの召還に巻き込まれただけの可哀想な存在だったけど、元の世界に戻れる事になったよ」

「え?なん…で?うぁ…」


これには私も驚いた。メグから話を聞く迄は、異世界からこちらへは、片道切符だと思っていたから。




****


「実は、私がこっちに召還された時、女神様の声が聞こえたんです」



『私の愛しい子。もし、こちらの世界が貴方にとって、より辛いものになるのなら、貴方が戻りたいと強く願えばあちらに戻る事ができるわ。貴方の願いは、()()()()()でも……私に届くから……』



「私が強く願えば、ユラを日本に戻す事ができるのかもしれません。正直なところ、聖女じゃないユラが無事に戻れるのかは分かりませんけど…でも…ユラは、この世界には居ない方が良い……」


****



メグにとっては、辛い決断だったかもしれないが、その決断には感謝しかない。召還に巻き込まれただけとは言え、メグ(聖女)がユラを守り赦しているとなると、私達は簡単にユラに手を出す事ができなかったから。でも、メグがユラを切り離したのであれば、もう遠慮する事はない。



「ゔぅ……ど…して……メグや…リュシエンヌばっかり……」


ここまで来てもなお、ユラはユラだった。



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