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34 毛並みの綺麗な白

意識的に獣化するのは久し振りだった。目立つ事もあって、獣化する事は殆どなかったから。


『兎に角、あの香りがしないって事は、近くにヴェルティル様は居ないって事よね?』


耳を澄ましてみても、人の足音も聞こえない。


『…………』


過去一の速さで逃げて来たお陰で、それなりに森の奥まで来てしまったと思うけど、陽の光が燦々と降り注いでいてとても明るい。


ー日光浴をすれば気持ち良いだろうなぁー


『──って、それどころじゃないよね……』


本当に、ユラはトラブルメーカーだ。まさか、ユラが高価な魔道具、しかも珍しい“無効化”の魔道具を持っているとは思わなかった。おそらく、厄介な友達にでも借りて来たのだろう。しかも、その魔道具の効果の範囲は広そうだ。その魔道具が発動されている限り、ヴェルティル様の近くには行けない。


『先に、この森を出るしか…ないか……』


スッと辺りを見回して、誰も居ない事を確認した後、私はゆっくりと歩き出した。






**ユラ**


「もう!一体何なのよ!?折角掛けられてた魔法を解いて、周りがちゃんと見えるようになったのに!こうなったら、何が何でも白色の生き物を捕まえないと!」


アラスター様が喜んでくれると思っていたのに。リュシエンヌも、アラスター様の気を惹こうとしたのか急に走り出して、アラスター様も追い掛けて行ってしまうし…。やっぱりリュシエンヌは気に食わない。


「排除…しないとね………と、それは帰国してから考えるとして……白色の生き物を探さないと。ねぇ、あなたも白色の生き物を探してちょうだい!」

「………」


ヒューゴ=イーデンが私に付けた護衛は、私に反抗する事はないけど、口を利く事もない。護衛としての腕は良いそうだけど気味の悪い護衛だ。


ガザガサッ──


「「──っ!!」」


その時、私達の目の前に現れたのは───


「見付けたわ!白色の生き物よ!アレを捕まえて!」






**アラスター=ヴェルティル**


「………始末してしまおうか?」


ユラ=カミジョー


聖女メグ=ツクモの召還に巻き込まれてやって来てしまった、ただの異世界人。本当に、()()()異世界人だったら良かったのに───

最初こそ、巻き込まれてしまって可哀想に─などと思っていたが、ユラの性格からして、自ら召還の魔法陣の中に飛び込んでやって来たのではないか?と思っている。自分を悲劇のヒロインにして、メグを陥れる。この世界のルールを学ぼうとも身に付けようともしないくせに、そう言ったやり方は、この世界の質の悪い貴族の女性そのものだと思う。


『アラスター様』


名前で呼ばれる度に嫌悪感を抱く。

元の世界でも、ユラは親しい友人は名前呼びをしていたらしく、その流れで名前呼びをしているのかも─と、メグが申し訳無さそうな顔で言っていた。


ー俺とユラは、親しくもないのだが…ー


そんな嫌悪感を抱いているユラに、俺の欲しいモノを知られていたとは……俺の一生の不覚かもしれない。もし、これで怖れられたりしたら───


「やはり、ここで始末しておくか?………はぁ──」


どうしても、アレが絡むと感情が大きく動いてしまう。ようやく、ここ迄来たのに──。


「クレイオン嬢には追い付けないだろうから、取り敢えずは…ユラを捕らえて……レイモンドに報せないと…だな……」


王都の森に掛けられていた魔法を解いてしまったのだ。ここだけの話では済まないだろう。本当に……傍迷惑でしかない……。


少し気持ちを落ち着かせてから、俺は元来た道をまた歩き出した。




「───っ!!」

「ん?」


元の場所迄もう少しと言った所迄戻って来ると、何やら叫び声が聞こえて来た。


ー何か、現れたか!?ー


その現れたモノが何であれ、攻撃なんてしてしまえば更に問題が大きくなってしまう。


「あんの……馬鹿女!」


一言叫んでから、俺は急いでユラの元へと走り出した。






「何をノロノロしてるの!?もう──いいわ!私が捕まえてやるわ!」


ユラが護衛が腰に付けていた短剣を奪い取ると、その護衛は途端に狼狽えだした。その護衛とユラが見つめている先には──


「───な……はく…ひょう…!?」




白豹


俺が見間違える筈はない


毛並みの綺麗な白色


薄っすら浮かび上がる珍しい白銀色の模様は、月の光に照らされると神秘的に輝き、陽の光を浴びると白銀色の模様が隠れて、より綺麗な真っ白な毛並みに見える。

凛と佇むその姿を、忘れた事などなかった。


「なのに…どうして?」


その白豹は、フラフラと苦痛を耐えるように佇んでいる。


「逃さないわ!当たれ!!」

「──ユラ!!!」

『──っ!!』


ユラが投げた短剣は、真っ直ぐにその白豹へと飛んで行く。


普通であれば、簡単に避けられるだろが───



ドスッ


鈍い音と共に、その短剣は、簡単にその白豹の左足に突き刺さった。







❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋


“白豹”とは“雪豹”であって正しくは豹ではないそうですが、この話で出て来るのは、あくまでも“白色の豹”です。独自の設定となります。

(。>ㅅ<。)




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