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27 思わぬ再会

『ここでは人目があるから……』


と言われて、取り敢えずメグと簡単に挨拶だけ交わした後、第二王子はメグと一緒に邸の方へと戻って行った。そして、何故か、メグが慰めるように第二王子の背中を優しく撫でていた。

それを見る限り、第二王子がマトモに動いていると言う事が分かった。

それと同時に、ハーヴィーさんが窶れていた原因も判った。


「どうして、第二王子が変装してここに?しかも聖女(メグ)まで……」


別に、聖女だからと言って国外に出てはいけないと言う事はない。ユーグレイシアは今、特に穢れが酷い訳でもないし、シーフォールスとは友好関係で、聖女が3人も居るから取り囲まれるような事もない。それに、聖女に害をなす者は居ない─ユラ以外は。

それでも、アレでも第二王子は現時点で王位継承者第二位だ。身分を隠してまで来る意味は?


「私の商会がシーフォールスに行く事を耳にしたメグが『私も行ってみたい』と言ってね」

()()メグが!?」


それは驚きだ。いつも周りを気にして自分の事は我慢していたメグ。そこにつけこんだのがユラだった。


「あ、もしかして、ユラも?」

「来てるよ。アラール様を含めて4人、私の商会の者として同行してる」


ー“4人”─まだ、もう1人居るのかー


ぐるりと周りを見回してみるけど、後1人の人は見当たらない。


「ひょっとして、第二王子()()ですか?」

「そんな感じかな………」


これまた、歯切れの悪い答えだ。身分を隠して来たのだから、目立った護衛を付ける事ができない代わりに、影から護衛する者を付けたと言う事だろう。その影が4人目だ。


「それじゃあ、私から連絡をするから、また後でゆっくりと…あ、それと、これは私達だけの秘密でお願いしますね」

「はい。分かりました」


去って行くイーデン様の背中を見送りながら─


ーユラ…ここでは問題を起こさないようにして欲しいもんだわー


と、そっとため息を吐いた。





*アラール視点*


「アラール様、良かったですね」

「…ありがとう………」


私の背中を優しく撫でながら微笑んでいるのは、ユーグレイシア王国唯一の聖女メグ。第二王子でしかない私なんかよりも尊い存在である筈なのに、メグは奢るような事も他者を見下すような事をする事もなく、とても穏やかな性格の女性だ。

かつて、ユラの言葉だけを信じて、メグには酷い言葉を放ったのにも関わらず、今ではこうして私にも優しく接してくれるのだ。それも、私が“王族だから”とか“王子だから”ではなく、1人の人として接してくれているのがよく分かる。育った環境のせいかもしれないが、それがとても嬉しい。



その話は置いといて──


「クレイオン嬢が元気そうで良かった」

「ですね。でも、私の我儘のせいで、アラール様に変装させてまで許可してもらって…すみませんでした」


ーシュン─と俯くメグは可愛らしいー


「これぐらい、我儘ではないよ。メグにだって、やりたい事があるならやる権利があるし、他にも行きたい国があるなら、行っても良いんだ。ただ、何処に行ってもユーグレイシアに帰って来てくれるならね」

「勿論、私の国はユーグレイシアですからね。でも、本当にありがとうございます」


実のところ、お礼を言いたいのは私の方だった。何としてでも、シーフォールスに来たかったから。



『そのお花の咲いた頭でよく考えて下さい』



あの時の微笑みは、一生忘れない。忘れてはいけない。アレを本気で怒らせてしまえば、第二王子の私など簡単に消されてしまうかもしれない。


「取り敢えず、当初の予定通り、夕食に交換訓練生5人を招いて食事をするから、その時にでもクレイオン嬢とゆっくり話をすると良い」

「はい、ありがとうございます」


夕食に招待した後は、何とでもなるだろう。シーフォールスに滞在するのは2週間。その間、特に問題がなければ大丈夫だろう。


「……ところで、ユラはどうした?朝一に挨拶を交わしてから見掛けないが………」


部屋に控えている侍女に視線を向ける。


「それが…何か探しているようで、護衛を伴ってお出掛けになりました」

「…探し物?」


そう言えば、学校でも何かを探しているからと、友達に色々聞いたり探してもらったりしている─と報告があった。特にこれと言って問題を起こしているようでもなかったから、そのままにしておいたが、他国に来てまで探すモノとは一体……?


「他国に来てまで問題を起こされたら大変だから、よく見張るように言っといてくれ」

「承知しました」


そう言って、侍女はすぐに部屋から出て行った。


「……ユラは、何を探してるんだろう?」

「………」


メグさえも知らない、ユラの探しモノ。


ー厄介なモノで無ければ良いがー





もう、これ以上の怒りは買いたくない。




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