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21 旅立ち

学年末ともなれば、1年生も2年生も授業がなく、卒業を控えた3年生も学校には来ない為、この時期の校内はとても静かだ。そんな静かな学校の図書室で本を読むのが好きで、私は午前中は図書室で本を読み、学校を出てお気に入りのお店でランチを食べて家に帰る─と言う日々を送っている。それも、後数日で終わりだ。


卒業式迄1週間。メグとユラは学校には来ていない。

メグは、新学期が始まる迄は訓練を中心に頑張るそうだ。ユラは、今でも厄介な友達と出掛けたりしているそうだけど、今はおとなしくしているそうだ─と言うより、おとなしくせざるを得ないよね。第二王子ではなく、王太子に釘を刺されたのだから。このまま、後一年おとなしく────


「──する訳ないか………」


申し訳無いけど、後はモニカとアデールに頑張ってもらおう。


「あら?リュシエンヌ?」

「え?あ、リリアーヌ様!」


今日も1人で食後のデザートを食べていると、リリアーヌ様に声を掛けられた。

リリアーヌ様は、王城からランチを食べに来たようだ。



「少し早いですが、卒業おめでとうございます。この1年ありがとうございました」

「こちらこそありがとう。リュシエンヌに毎日会えなくなるのは、少し寂しいわ」

「リリアーヌ様……」


ーリリアーヌ様と話せるのも、これで最後かなー


「また、落ち着いたらお茶でもしましょうね」

「はい……」

「それじゃあ、人を待たせているから失礼するわね」


リリアーヌ様は、そのまま奥にある個室へと入って行った。


ーあの個室で、ヴェルティル様と……ー


「……よし、帰ろう」


リリアーヌ様もヴェルティル様も好きだし、2人並んだ姿は眼福だけど、少し近付いてしまった分、胸が痛むのも確かな訳で……自分から胸を抉らない為にも、私は急いでデザートを食べて店を出た。



だから、私は知らなかった。その個室で誰が待っていたか──なんて。









******



卒業式の日は晴天だった。



「旅立ちにピッタリのお天気ね」

「1週間位掛かるだろうけど、気を付けて行くんだぞ」

「向こうに着く迄にも、手紙を書いてね」

「たまには帰って来るのよ?」

「ナメて来る奴には遠慮はいらないからな!」


「お母様、お父様、クロエお姉様、クレアお姉様、ありがとう。必ず手紙を書くわ。お兄様、ナメられないように頑張るわ」


学校で卒業式が行われている間に、私は家族と使用人総出の見送りの中、お別れの挨拶をしている。モニカとアデールとは、昨日のうちに挨拶を済ませていたから、今日は来ていない。別れが寂しくなるからと、私が断ったのだ。


『別に、今生の別れではないし、私からも会いに行くから!』

『リュシエンヌさまぁ……お元気でっ!!』

『『…………』』


何故か大泣きするアデールを見て、自然と笑みが溢れて、笑顔でお別れする事ができた。

メグとユラには手紙を書いてモニカに預けてある。新学期で登校した時に渡してもらう予定だ。正直、ユラには書く事が無くてかなり時間が掛かった割に…内容は薄っぺらいモノになったのは仕方無い。


リリアーヌ様にも手紙を書いたけど、ヴェルティル様とスタンホルス様とイーデン様には書いていない。


「お父様、お母様、我儘を聞いてくれてありがとう。必ず、クレイオンの名に恥じない立派な騎士になります」

「リュシーならなれるわ。体に気を付けてね」

「はい。それでは……行って来ます!」


「「「「お嬢様、行ってらっしゃいませ」」」」


皆に見送られ、私の乗った馬車が動き出した。

馬車の窓から、学校のある方へと視線を向ける。


ーヴェルティル様、どうかお幸せにー


リリアーヌ様とヴェルティル様が婚約、結婚すれば、時間差で私の耳にも入って来るだろうけど、その頃にはこの恋心も少しは落ち着いているだろう。新しい土地で新しい恋をしている可能性だってある…よね?


「兎に角、今からは目の前の事から全力で頑張ろう!」


寂しい気持ちには蓋をして、私は───




番から逃げる事にしました。







**????**



「あー……それは…ヤバイな…何故そんな事になったんだ!?何故今迄その情報を得られなかったんだ!?」

『申し訳ありません。アラール殿下が押さえていました』

「アラール……そう言う所だけは優秀だな………まぁ、その気持ちも分からなくもないが…さて、どうするか………」


左手を顎に当てて、右手の人差し指で机をトントンと叩きながら思案する。


「私が悩んだところで仕方無いか。暫くの間は怖ろしい事になりそうだが……」


結局、逃げられる事はないだろうから──


「…………」


ーその時は、全力で労うとしようー


「報告お疲れ様。これについての調査はこれで終わりで、ここだけの話としておこう……お互いの身の為に…分かるな?」

『承知しました』


それだけ言うと、張っていた結界を解除した。


「いつまで逃げられるやら………頑張れ……」





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