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15 違和感

私の内緒の卒業まで3ヶ月




「メグ、今日の放課後は予定通り、一緒にカフェに行ける?」

「アラール様から許可をもらってるから大丈夫。でも、ユラは……」

「あー…ユラは駄目なのね?」

()()()()()()と、約束があるみたいで。ごめんなさい」

「メグが謝る必要はないわ。ユラも、色んな友達ができて良かったわ」



メグとユラの学校生活が始まって3ヶ月。メグは控え目な性格の上“聖女”と言う立場もあり、ほぼ私とモニカと一緒に行動しているけど、ユラは私達以外の仲良くなった人達と居る事が多くなった。巻き込まれてしまったユラの事は心配していたけど、この世界にも慣れてきているようで良かった。

ただ──


「メグは…寂しい?」

「少し寂しいけど、私にはリュシエンヌとモニカが居るから…」


恥ずかしそうに笑うメグは可愛らしい。

メグの聖女としての能力は、少しずつだけど訓練する度に上がっているそうで、後数ヶ月もすれば浄化に出れるだろうとリリアーヌ様が言っていた。勉強に関しても、成績は良いようで、先生達からの評判も良好だ。


ただ、気になる事もある。

メグ達が学校に来始めた頃は、それなりにクラスメイト達との交流はあったのに、ここ最近はユラはあるけど、メグには殆どない。皆、メグを遠巻きに見ているだけ。聖女だからと遠慮?しているのか──


ーそう言えば、最近はまともにユラとも会話してないかもー




******



放課後、3人で訪れたお店には色んな種類のケーキがあって、来る度に何を食べるか悩んでいたけど、今日は1人2個ずつ選んで3人で分け合って食べる事にした。


「何とも贅沢な食べ方よね」

「メグが、分け合って食べる事に抵抗が無くて良かったわ」

「私の元の世界でも、嫌がる人も居たけど、分け合って食べる事はよくやってたから」


こちらの世界の貴族社会では、一つの物を分け合って食べる事はあまりしない。モニカとはよくやっているけど。兎に角、今日は6種類のケーキが食べれると言う事で、3人ともテンションが上がっている。

このカフェには扉がない半個室スペースがあり、今日はその半個室で周りの目を気にする事なく、ケーキを分け合って食べる事ができる。そんな感じで、3人で楽しくお喋りしながらケーキを堪能していた。





「────は聖女なのに、」


ーん?ー


「──聖女様だから、私を気に掛けている暇なんてないのよ…」


「「「…………」」」


私達の居る半個室の外側から、ボソボソとした声が、私達3人の耳に入って来て、私達3人はそのまま黙ったまま耳を傾ける。

“聖女”と言えば、今現在メグしかいないから、聞こえて来る話はメグの話と言う事だ。それに、女性の声はユラだ。


「一緒に王都に出て来たけど、学校では()()()()の中には入れないし、お城に帰っても私が側に呼ばれる事はないの。訓練の時も邪魔だからって…」


訓練の時に侍女なんかが居たら邪魔なのは確かだろう。その場に侍女が居たところで、何もする事もないだろうし。ただ、その“邪魔だから”と言う言い方は、誤解を招くのではないだろうか?そもそも、メグがそんな言い方をする筈がない。


「ユラが邪魔だなんて、酷い言い方だな。聖女の為に一緒に来てくれたユラに対して──」

「きっと、メグも必死だから────」


「「「……………」」」


モニカを見ると、モニカも複雑な顔でメグを見ている。そのメグは、視線をテーブルに落としたまま黙っている。モニカも違和感を感じているのだろう。ユラの言葉に。


()()()()の中には入れない”


いつも、私達が誘っても断って来るのはユラの方だった。


「リュシエンヌ様もモニカ様も侯爵令嬢で、おまけにリリアーヌ様の後ろ盾があるから、少しお高くとまってるって言うか…」

「それに、リュシエンヌ様は獣人だから余計に──」



「えらい言われようね…」

「お高くとまった事なんて一度も無いけど。そもそも、声を掛けられてもないし、こっちから掛けてもないよね?」


“獣人だから”と耳にしたのも久し振りだ。300年前とは違い、今では人種で差別するような発言をする貴族は殆ど居ない。極一部の古参の貴族を除いて、高位貴族であればある程、人種に関しての発言には細心の注意を払っている程だ。しかも、こんな人が多く、誰にでも聞こえるような所で話す内容ではない。聖女様の話なんて、以ての外だ。

ユラといつも一緒に入る人達を思い浮かべる。


ーなるほどー


差別をする訳ではないけど、子爵や男爵の嫡子ではない令嬢と令息達だ。同類には甘いけど目上に反感を持ち、弱者にはマウントを取ると言う、何ともバカ─厄介なタイプだ。そんなタイプの人間にとって、今のユラの発言は、聖女メグを攻撃するのにはうってつけの話だ。その話が、本当の事かどうかなんて関係無いのだ。


「そんなお馬鹿だから、嫡子にもなれないのよ」


ごもっとも。ユーグレイシア王国は、基本男女関係なく第一子が嫡子となるが、その第一子に能力が無いと判断されれば、第二子や傍系から養子縁組をして継がせる事もできる。


兎に角、そのお馬鹿達は置いといて──


「残っているのは持ち帰るようにしてもらって、続きは私の家で食べましょう」


そう言って、私達3人はユラ達に気付かれないように、そのカフェを後にした。




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