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巨人

走行する事約五分。事件の惨状が顔をチラつかせ始めた。ひっくり返った車、凹んだガードレール、血と思われる赤黒い液体が道のあちこちに見えた。


「あの野郎…派手に暴れやがって」

「ガサゴソ…ガサゴソ…なのです…なのです…」

「亜美?何してるんだ」


隣に座っている亜美が何やらずっとバッグの中を漁っている。


「こんな事もあろうかと…武器になりそうな物を携帯しているのです。全部自作ですが」

「へぇ、いったいどんなの…」


スタンガン

鎖鎌

メリケンサック

ナイフ


だいぶいかつかった。

ってかナイフ自作?打ったの?鉄打ったの?


「お前…ゴリゴリに銃刀法違反だぞ…」

「緊急事態なのです!しょうがないのです!」

「…」


亜美は「瞬間接着剤とかの小物もあるですよ」とバッグから物を出し続けたが、もうなんか怖いので見ないようにした。

突然、月神が急ブレーキをかけた。何事かと思い、運転席にいる月神を覗きこんだ。そこには愕然とした顔で前を見つめ、硬直している月神がいた。心做しか身体が震えているように見える。

俺達も前方を見る。そして理解する。今の現状を。月神がああなる訳を。

凹み歪んだ信号機、街灯、消火栓。

破壊されたパトカーが積み重なり、辺り一帯は火の海になっていた。見たくない生々しい者も隅に転がっている。

が、そんな物達がどうでもよくなるほど異様な光景があった。

数メートル先、見た事もない人間。いや、巨人が立っていた。身長は三メートルはあるだろうか。全身の筋肉が有り得ないほど膨張し、肌が薄っすらと緑がかってる。血管が酷く浮き出て今にも破裂しそうだ。

巨人が俺達に気づいた。ゆっくりと近づいて来る。


「お前ら耳塞げ」

「月神さん、何を…」


月神は運転席の窓を開け、持っていた拳銃を構えた。


「殺す」


月神はすぐさま巨人の向けて発砲。けたたましい銃声が響いて、弾は全て巨人に着弾した。が


「ぅあ…なん…だ…」


巨人はほとんど無傷。針で指をつついた時のような微量な血しか流していなかった。


「おいおい…マジかよ」


巨人は着弾した箇所を手で優しく撫でた後、上半身をねじった。

なんだ。何か来る。巨人の後ろに何かある。壊されたパトカーだ。巨人がソコにある何かを掴んだように見えた。


「っ!?全員車から降りろ!」


月神の声を合図に乗っていたパトカーから急いで離れた。そして巨人は勢いよくねじった上半身を戻した。その時の回転で何かがコチラに飛んで来た。タイヤだ。壊されたパトカーのタイヤ。巨人はソレを勢いよく投げて来たのだ。

投擲されたタイヤは俺達が乗っていたパトカーに命中。後方に弾かれた後、爆発した。もしあのまま乗っていたらと考えるとゾッとする。


「ぁは…あはははぁ…!」


巨人はまるで幼児のように喜んでいる。これほど不気味なモノは見た事が無い。


「殺…すう…こごみぃ…殺すうううううう!!」


巨人が叫び空気が揺れる。にわかに信じ難いが確定だ。

目の前の化け物は篠原竜太だ。

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