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怒号

「それじゃ、お別れだな。これで」

「あの…それってどういう…」


心美について問い詰めた時にも言っていた「お別れ」。未だに俺はその意味が分からずにいる。俺の表情を読み取ったのか、月神は呆れた顔を向けた。


「正式な家族…引取人が現れたんだ。お別れだよ、アンタと嬢ちゃんは」

「はいっ!後は任せて欲しいのです!」


その言葉を聞いてようやく理解した。途端、脳に衝撃が走る。

なぜ気がつかなかったのだろう。月神が言っていたように俺は心美を保護している状態。親族じゃなければ正式な保護者でもない。心美の親、あるいはそれに近しい人物が現れるまでの繋ぎ役。それを俺はいつの間にか忘れていた。

心美がいなくなる。その未来を漠然と妄想し、思考が止まる。ただ何も無い宙を見つめた。


月神の無線に通信が入った。


「はいコチラ月神…はい…」


月神の声のトーンが下がった。どうやらただ事では無さそうな予感。


「どうかしたんですか?」

「篠原竜太が脱獄した」

「またかよ!」

「なのです!」


こんなに呆気なく二度も脱獄されるとは。日本警察の管理能力が不安になってきた。しかし日夜我々のために治安を守ってくれている訳で、あまり面と向かってグチグチと言うのは…


「またあのクソオ…クソお父さんを逃がすなんて、警察側の管理はどうなっているのですか!?役立たずなのです!」


言ったー。清々しいほどに言い切ったーこの娘。


「まぁ、そう責めないでくれ。どうにも状況がまるっと変わった。緊急事態らしくてな」

「緊急事態?」

「なのです?」


俺達は二人揃って首を傾げる。


「先刻、脱走の通信が来た時の詳細がこうだったんだ」




「捕らえていた警察官が、その場で皆惨殺された。と」




「それって…」

「想像したくないが、やられた警官達はほとんどグチャグチャのミンチだそうだ」


警察官達の手前、武器を隠し持っていた訳では無いだろう。だとすれば隙を見て武器を奪い取ったか、どこかで手に入れた…。

いや、そんな簡単な話では無い。そんな簡単に人はミンチにならない。もっとおぞましい何か。

おぞましい…。病院の惨状が頭をよぎった。


「ハハッ…さては何か飲んでやがったな…クソがっ!」


月神は急いでパトカーに乗り込み、エンジンをかけた。


「マジで危険な状況だ。どうするお前ら。三秒で決めろ。警官としてはもうー」


月神が言い終わる前。俺達は既に後部座席に着いていた。それを見て月神は一瞬キョトンとした後、複雑そうな笑みを浮かべて車を出した。


「どうしよう、お姉ちゃん」

「こんな事もあろうかとさっき…」

「おぉ、もしかしてあの時飲んだフラスコの中身が…何か重要な」

「いえ、あれはただのエナジードリンク(自作)なのです」

「なんやねん!」

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