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初めての回転する生魚【時は満ちた編】

「いらっしゃいませー。お客様は何名様でしょうか?」

「二名です」

「かしこまりました。コチラのテーブル席へどうぞ」


ようやくだ…ようやく寿司にありつける。

長かった…とても長い戦いだった。

だが!それも全て終わった話!


「さぁ!心美!食うぞ!」

「うん!」


席に座り、早速注文しようとタッチパネルに手を近づけると。


「あ!やる!わたしやりたい!」


突如として心美が駄々をこねた。


「えと…これ?」


念の為にタッチパネルを指さし心美に確認させる。当の本人は「うんうん」と言いたげに首を激しく上下に振っていた。首を痛めそうだからやめてくれ…。


「わかった心美、操作して良いぞ」

「いいの!?やったあ!」


という事で心美が注文の担当をしてくれる事になったのだが…。問題発生。


「ふっ…んんん」

グググッ

「んんんんん!」

ググググッ

「あと…ちょっとぉ…」


手が届かない!!


「あの…やっぱり俺が」

「やるの!」

「…はい」


不毛な議論が繰り返されるという輪廻はしばらく続き。俺達が寿司にありつけたのは十分ほど経った頃であった。

結果として、注文する際は俺がいちいち心美を持ち上げてパネルを触らせる。というやり方に辿り着いた。

ぎゃふん。






☆●◇■△▼完食▽▲□◆○★






「ふぅ…食った食ったぁ」

「おいしかった!」

「そっか。そりゃ良かった…んじゃ会計を…って、あれ?」

「ん?」


無い。

俺の。

財産が。

無い。


「そんな馬鹿な!確かにズボンのポケットに入れてあったはずなのに!」


右ポケットを探す。

無い。

左ポケットを探す。

無い。

パンツの中に手を突っ込む。

やはり無い!

ふざけるなああああああああぁぁぁ!!

って、そうじゃない!某作品のノートで人を殺すキャラの真似をしている場合じゃないんだ!


「どうしたの?おにーちゃん」


血相変えて慌てる無様な俺を見て、心美が心配してくれている。あぁ…なんて優しい女の子。


「こ…心美よ。落ち着いて聞いて欲しい」

「?」

「サイフが…無いんだ」

「はいっ!」

「…へ?」


この絶望ムードの中。心美は俺の運命を大きく変えてくれたのだ。

そう。心美が元気よく俺に突きつけた物は。


俺のサ★イ★フ。


「なんで…これを…心美が?」

「おすしまってるとき、とれそうだからとってみたの!すごいでしょ!」

「…」


その後。無事にお会計を済まし、家に帰った後。心美に「人の物を勝手に取ってはいけません」の教育をほどこしました。

小一時間ほど。

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