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【コミカライズ配信中】傷だらけの公爵令嬢は、隣国の皇太子に溺愛される  作者: 束原ミヤコ
二章

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フレアの冒険 1



 ◇


 白いタイツにふかふかの毛皮のブーツ。いつもはふわふわひらひらのドレスが好きなのですが、動きやすいワンピースにしてもらいました。

 ルディお姉様の髪はまっすぐなのですが、私はふわふわしています。

 ふわふわの薄紫色の髪の毛は、猫の毛みたいで気に入っているのです。


 髪の毛も一つに結んでもらって、準備はばっちり。

 

 今日は、シフォニアに誘われて、皇都の外れにある星見の丘にピクニックに行くのです。

 

 私と、ルディお姉様と、リリステラお姉様とシフォニアだけです。

 秘密の女子会なのだと、シフォニアのお手紙に書いてあったそうなのですね。


 先日の晩餐会から、リリステラお姉様とシフォニアは仲良くなったようでした。

 アルベールお兄様はにこにこしながら「リィテに友人ができて嬉しいよ」と言っていましたが、アルベールお兄様のいないところで、キルシュお兄様が「あれは嘘ですね」と教えてくれました。


 どうして嘘なのかと首を傾げる私に、ルディお姉様が「アルベール兄様はリリステラお姉様を独り占めしたいのですよ」と教えてくれました。


 ひとりじめはよくありません。

 私は、お菓子が一つしかなければ、ルディお姉様と半分こしたいと思うのです。


「リィテ、気をつけて。本当に大丈夫だろうか。心配だな」

「それは心配しすぎというものです、アルベール様。リリステラ様は責任を持って、私がお守りします」

「シフォニア様のことも、私がお守りします」

「じゃあ、私がフレアを守ります」

「私も、がんばります」


 皇城の入り口、お迎えに来てくれたシフォニアと馬車に乗り込む前に、見送りにきてくれたアルベールお兄様がリリステラお姉様の手を握って、心配そうにしています。

 皆で守る守ると言うと、アルベールお兄様は困ったように笑いました。


「か弱い女性たちが守りあうというのはとても健気で、余計な口を挟めなくなってしまうな」

「アルベール様、ピクニックには当然護衛の兵もついていくのですから、心配ありませんよ。アルベール様と同じぐらいにガウェイン様も心配性ですから、この日のために公爵家の兵たちを戦にいくのですか? というぐらいつけてくれたのです」

「ガウェインは君のことを、よく転ぶしよく道に迷うと言っている。そこが可愛いのだと」

「まぁ……! それはわざわざアルベール様にお伝えすることではありません……!」


 シフォニアが照れています。

 ルディお姉様が私の耳にこっそりと「シフォニアは昔から方向音痴と評判です」と教えてくれました。

 ほうこうおんちとは、地図がよめない人のことです。

 私は心配になりました。

 シフォニアが方向音痴では、もしかしたら星見の丘で迷ってしまって、お城に戻れなくなるかもしれません。


「リリステラお姉様、私、ちゃんと道を覚えますね……!」


 リリステラお姉様はこの国に来てまだそんなにたっていませんから、もちろん星見の丘に行くのもはじめてだと思います。

 それなので、私よりもずっとずっと、リリステラお姉様のほうが心配でしょう。

 

 私が両手を握りしめて、リリステラお姉様を安心させるように言うと、お姉様は目を丸くしたあとに、にっこりと笑いました。


 私は、リリステラお姉様の笑った顔が好きです。

 すごく、あったかくて優しい感じがするのです。


「ありがとうございます、フレア。頼りにしていますね」


 リリステラお姉様に、頼りにされてしまいました。

 頑張らなくちゃいけません。 


「フレアに道が覚えられるかしら」

「覚えられます、ルディお姉様! 今日は、フレア隊長です。任せてください」

「フレア隊長……今日のフレアは頭にうさぎさんがついているから、野うさぎ探検隊の野うさぎ隊長ですね」

「はい! 野うさぎ隊長です!」


 リリステラお姉様が私を隊長と言ってくれたので、私はぴょんぴょん跳ねました。

 お姉様は絵本をたくさん読んでくれるし、文字も教えてくれます。

 アルベールお兄様は優しいですけれどお忙しいですし、キルシュお兄様は厳しいので、私はリリステラお姉様にお勉強を教わるのが一番好きです。


 アルベールお兄様が私の頭を撫でてくれました。


「では、フレア隊長。皆をよろしく頼む。フレア隊長には部下に、コルフォルをつけよう」


 アルベールお兄様が指を指すと、私の手の中にひんやり冷たい氷の小さな狐さんがあらわれました。


「まぁ、かわいい!」

「氷の狐コルフォルだ。何かあれば皆を守るだろう」

「ありがとうございます、お兄様! コルフォル、皆を守ってくださいね」


 小さな狐さんは、私を青いガラス玉みたいな目でじっと見て、こくんと頷いてくれました。



 

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