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悪魔のように残酷で、悪魔よりずる賢い少年の話。

作者: リュナ

むかし、あるところに少年がいた。


少年の名はレオという。


彼は誰よりも優しく、そして賢かった。


少年には家族がいなかった。


両親は少年が赤ん坊の頃に亡くなってしまった。


なので、今は孤児院で暮らしている。


父は少年に一冊の本を、母はボロい布で作ったくまのぬいぐるみを残した。


その本は、ページをめくっても真っ白で、何も書かれていなかった。


そのぬいぐるみは、お腹のところの布が破けて、綿が飛び出ていた。




ある日少年は夢を見た。


いつものように父の本を読んでいる。


母がつくったくまのぬいぐるみを抱きしめて、


文字のないページをめくっている。



「なぜ何も書いていないのだろう…」


少年は言った。


「書いてないんじゃなくて、見えてないだけだよ。」


ぬいぐるみが答えた。


「わっ」


少年は驚いて、ぬいぐるみを投げてしまった。


「呪文を唱えれば、何が書いてあるか、きっとわかるよ」


倒れたぬいぐるみは起き上がって言った。


「呪文はね_______





目が覚めた。


まだ夜は明けていない。


少年は枕元に置いてある本とぬいぐるみを見つめた。


ぬいぐるみが教えてくれた呪文はまだ覚えている。


少年は唱えた。


「モウテル ムア」


すると本は光った。


文字が光とともに浮かび上がった。


本にはこう書かれてあった。




________________________________________________

【悪魔の召喚について】

月夜の晩に本を開き、呪文を唱えれば本に封印された悪魔が現れる。


悪魔が出てきたら、本で閉じて、身動きが取れないようにする。


そして、悪魔と契約を結び、己の願いを叶えることができる。


ただし、願いを叶えるのに代償がつきものである。

________________________________________________





今日は美しい満月の夜だ。


条件は揃っている。


少年は呪文を唱えた。




「ルジアブ ルジアン」



瞬く間に本が光った。


しばらくすると、その光の中に影が見えた。


少年は急いで本を閉じた。


しかし悪魔を閉じ込めることができなかった。



「お前か、俺を呼び出したやつは。」


悪魔は少年を睨みつけた。


思わず少年は後退りした。


「呼び出したということは何か叶えたい願いがあるのか?」


悪魔の言葉に少年は頷いた。



「お前の願いを1つだけ叶えてやろう」と悪魔は言った。


「なんでも?」


少年は悪魔に聞き返した。


「そうだ。ただし10年後お前の魂を奪いに行くぞ。」


悪魔は笑った。


少年はしばらくの間考えてこう言った。


「叶えてくれる願いの数を増やしてくれ。」


「何だと?」


悪魔は驚いた顔をした。


「何でも叶えてくれるって言っただろ?」


悪魔は何も言えなくなった。


「けど、魂を取るなという願いごとは受け付けないからな。」


「わかってるさ。」


少年は頷いた。


「僕の願いは3つだ。


まず、両親を生き返らせろ。


次に両親が一生遊んで暮らしていける分の金を用意しろ。


そして最後に



僕の存在を無かったことにしろ。」


「本当にそれでいいのか?」


悪魔は呆れた。


「その代わりと言っては何だが、1週間後に僕の魂を取りに来い。」


悪魔はにやりと笑った。


「契約成立だな。」





次の日、孤児院に少年の両親が迎えにきた。


「レオ」


初めて少年は両親に名前を呼ばれた。


両親はレオを抱きしめた。


レオは泣いた。







一週間後、ある女の人は部屋の片付けをしていた。


「こんなぬいぐるみあったかしら?」


女の人は首を傾げた。


近くには分厚い本が置かれている。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 少年の愛している両親は生き返り、不自由なく暮らせ、自分が消えたという悲しみもなく生きていけるのですね。 [気になる点] それでも思うのです。 ご両親は、時々ぬいぐるみや本を見ては、喪失感…
[良い点] 悪魔よりずる賢い少年……と、あったので悪魔を騙して魂をとられなくする話を予想していました。 が、最初から自分の存在を消すことを求めていたのですね。 [気になる点] この条件で、魂は悪魔に…
[一言] 願いには代償。 ちょっと怖いお話でした。 少年は何故自分の存在を消そうとしたんでしょうね。
2022/12/18 18:59 退会済み
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