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これが私のアナザースカイ

公爵家で街に出る時に着ていた様な簡素なワンピースを着せて貰い、アンセルマは眼鏡、リカルドは帽子を被ることで認識阻害を付与する。

同様に簡素な服を着たエドゥアルドとガスパルと共に城を出た。

広場を取り囲む様に屋台が並び、祭りの為に作られたステージからは陽気な音楽が流れてくる。

その前の広場で老若男女問わず大勢の庶民が手を取り合って踊っていた。

剣舞や大道芸の様な事をして投げ銭を得ている者やテントを張った芝居小屋もある。

厚めの硬いパイ生地の上に野菜とチーズが乗せられて焼いたものと魔獣の串焼きを食べ、葡萄ジュースを飲みながら雑貨屋などを冷やかして廻った。


「芝居小屋はどんなお話をやってるのでしょう?」

「聖女の話じゃないかな」

「聖女様ですか?聖水の?」

「まぁ、そうだね。観てみるかい?」

「観たい!観たいです!」


護衛の兄達は苦笑したが、一行は芝居小屋に入った。

慈悲深い聖女は魔獣を聖なる光で撃ち倒し、農地改革をし、流行病を退け、国に巣食う悪をも打ち倒して王子に見染められて結婚し、結婚式では国中に聖なる光が降り注いでめでたしめでたし、という話だ。

観客達は口々に我が国を讃える言葉を叫ぶ。

あまりの熱狂ぶりにアンセルマは引き気味だ。


「随分庶民に人気な演目なのですね」

「実体験してるわけだから讃えたくもなるだろう」

「実体験?これ何年前のお話なのですか?」

「あれはアンセルマの事だよ?」

「えっ?!プロパガンダですか??」

「まさか。アンセルマがやった事が庶民にはこう見えているということだよ」

「そんな訳ないでしょう!?」

「全然嘘も誇張もない内容だったではないか、アン」


兄にまで肯定されて、アンセルマは目を丸くする。

あんな讃えられる様な立派な事をした覚えはない。

そもそも主人公が聖女で王子は聖女が困ってる時に颯爽と現われては手を貸す脇役だったのは良いのだろうか。

聖女を支える騎士として父様まで端役で扱われていた。

兄達は呆れた顔をするが、リカルドは可笑そうに笑う。


「アンセルマはアンセルマのまま、好きな事を好きなようにすれば良いよ」

「リカルド様は私に甘過ぎますよ」

「アンセルマ、様を付けたらお仕置きをすると言ったろう?今朝からもう23回も付けている」

「数えているのですか?!」

「その分お仕置きをしないといけないからね」

「お仕置きって何をされるのですか?!」

「さて、何にしようかな」


再び広場に出ると上機嫌なリカルドに手を引かれるまま、庶民が踊る中に加わる。

護衛をする兄達は困った顔をしたが、踊る女達に腕を引っ張られ兄達も巻き込まれた。


「アンセルマ、子供を10人産むつもりかい?」

「え?なんで知っているのですか?!」

「今朝起き抜けにそう言ってお腹を摩っていたじゃないか」

「それだけで?」


リカルドはにまりと笑う。

腰を掴み、音楽に合わせてアンセルマを高く持ち上げくるりと回る。


「神様が仰っていたのさ、10人の子供を持つ父として末永く我が愛しき娘と共に幸せに、と!」



ここから弱小国と言われていたエスタバン・ヴェルトハイム=ローゼンベルクを王とするローゼンベルク王国の快進撃が始まる。

それがエスタバン王を隠れ蓑にリカルド王太子が愛するアンセルマ王太子妃の願いを叶えようと奮起した結果であることは案外知られていない。

医療や教育が無償で平等に提供される様になり、近代化が他国の追随を許さないレベルで進んだ。

その為、立憲民主制を王族が提唱したが貴族に限らず国民の大反対により叶わなかった。

それほど王族は国民に尊敬され、愛されているのは間違いない。


世界一幸せな国と呼ばれ、周辺の国からは属国になりたいとの打診は多く出たが、国の境界線を乱す事を良しとせず、連合という形に留まっている。

隣国で唯一、元王妃の国だけが加盟を許可されずジリ貧の様相は高まるばかりだ。古典荘園制のまま農民は貴族に奴隷の様に扱われ、古い農具や農法ではローゼンベルク王国に倣う他連合国にも敵うわけがない。

元王妃、元王子、元聖女候補、それに連なる犯罪者達は一律国外追放とされ二度とローゼンベルク王国に踏み入れられない様に契約魔術を結ばせて隣国に送り返された。

彼らは懲りもせず隣国の王侯貴族として復帰した様だが、それにより彼らが何故ローゼンベルク王国から追放され、何故自国が連合に加盟出来ないのかが知られれば王侯貴族に国民の怒りが集まるのは当たり前のことだろう。

加盟を阻害しただのとローゼンベルク王国に攻め込もうと戦争を仕向けられもしたが、圧倒的な戦力差で元王妃の国軍は半日も持たず瞬殺された。

その賠償金などにより重い税を課された国民達の不満が膨れ上がり、農民を中心とした抵抗がペストの広がりと共に高まるばかりで近い内に元王妃の国は滅びるだろうと囁かれている。


王太子妃が10人の子供を産み終え、8男が言葉を話し始めてすぐに子供の戯言に理解がありすぎる王太子妃と共に更なる色々な無双を繰り広げていくのはまたその後の話である。

おしまいです。

いつも通っているマッサージ店で先生と異世界転生の話で盛り上がり、

「異世界転生するならどうなりたいですか?!私はですね、イケメンの剣士になって…」

と語られ、

「次回来るまでにどんな異世界転生するか考えておいて下さいね!」

と送り出された結果こういう話になりました。

結局、スパダリに溺愛されるチート、コレ。

いや、全然アンセルマになりたいとは思いませんが…。

皆様はどんな異世界転生したいですか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。 溺愛で甘々ですし、とても面白かったです! あとがきの「スパダリに溺愛されるチート」異世界転生するとしたら私もコレがいいです。 私はアンセルマになりたいですよ~…
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