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神様テンプレート

気がつくと白い空間に立っている。

ここ、私、知ってる。

そう気づいてアンセルマは絶望的な気分になった。

そう、ここは、前世で死んだ後に転生後の希望を神様に聞かれた所だ。

またここに居ると言うことは、また自分は死んでしまったに違いない。

足の力が抜け、アンセルマは床に膝を打ちつける勢いで崩れ落ちた。

しかし膝は痛まない。

全身に力が入らず、涙だけがボタボタと零れ落ちる。


「其方は何を泣いておるのだ」

「だって、幸せだったのです。大好きなリカルド様と結婚出来て。なのに私は何故死んでしまったのでしょう?」


目の前にあの時と同じ様に白い姿のイケおじ神様が現れる。

不思議そうにアンセルマを見下ろしていたが、アンセルマの言葉にあぁと納得して顎の髭をひとつ撫でた。


「其方は死んでおらん」

「えっ?!」

「転生テンプレートは末永く幸せに暮らしましたとさ、となっておるのだから結婚して1日で死ぬわけがなかろう」

「転生テンプレート・・・?」

「そもそも其方、リカルドに18歳になったら子供を沢山産むと約束していたではないか。其方が望んだ通りに8男シリーズのテンプレートを付け足しておいたから安心せい」

「8男シリーズとは・・・?」

「8男が活躍する物語の転生テンプレートだ」


いや、そもそも転生テンプレートって何だよって話である。

よくよく聞けば神様は何パターンかある人生テンプレートのパラメータを本人希望やらその時の気分で適当に弄って転生者にくっ付けて転生させるのが仕事らしい。

アンセルマの元の魂は本来死ぬ予定ではないタイミングで誤って転生させる事になってしまった手前、今回の転生については償いとして本人の希望を可能な限り叶える事になったそうだ。

ただある程度の定型がテンプレートで定められているので、どうしても最後は王子様と結婚トゥルーエンドになったらしい。

公爵家の長男と王妃教育なしなのだから希望通りであろうと神は言う。

チートを希望したので本来は転生聖女に付けるパラメータをアンセルマに全て割り振った為、聖女候補はモブ予定の伯爵令嬢が本来与えられる程度の能力値に置き換わったそうだ。

本来、攻略対象であるリカルドやガスパルも聖女メラニアに向けて与えるべき好感度がアンセルマに全て割り振られたので、2人が好感度0%のメラニアに落ちることはないらしい。

妹に好感度100%のガスパル兄様大丈夫?って気もするけど。

他の攻略対象に与えられるチートも全てグロスター伯爵家に割り振ってしまったので他の攻略対象であるコルデーロの側近候補はショボい能力揃いとなったのだろう。

ご愁傷様である。


そして今回神様がこうしてアンセルマを再び呼んだのは、王族の秘技である王位を継ぐ者(王様又は王太子)が嫁を娶った際に浮気防止、托卵防止、子孫繁栄の魔術契約の契りをリカルドと結んだせいらしい。

そこも神様が介在する部分なので、可能な限り希望を聞いてあげようという慈悲深い神の思し召しだそうだ。

だったら8男シリーズなんで付ける前に呼んでくれなかったのかと思うが、子沢山は8男と相場が決まってるのだとか。

難儀である。


「8人も産むのですか・・・大変だ」

「女子も2人産まれるから10人となる」

「じゅ、じゅうにん!?」

「普通は側妃や愛妾が別々に産むところを全て其方にパラメータを書き換えたからな。リカルドも其方以外とは交わらないと神に誓っておるから致し方あるまい」


てぇへんだ。

初婚で、初体験の後に聞く話じゃない。

10年近く妊娠出産を繰り返す羽目になるのですね、と言ったら、双子が2回生まれるからそこまではかからぬ、と有難くもない事実を知らされた。


「8男は何をしでかす運命なのですか?」

「なに、後を継がなくても良いから自由なだけだ。其方に似た事をするに過ぎぬ」

「その子はもしかして転生者なのですか!?」

「そうなるな。だが善人の魂だから悪い事にはならぬ」

「他の子は!?相続争いとかになっちゃうのですか?!8男が最強なのですか?!」

「両親の魔力が高ければ高い程魔力の高い子供が産まれるものだ。どの子も両親が同じなのだから能力はそう変わらぬ。そして其方の運命は”末永く幸せ”なのだから後目争いなど起こるはずもない」


そこまで聞いてアンセルマはほっと胸を撫で下ろす。

8男が転生者なのはアレだけど、前世の記憶でチートかましまくるだけなら領地の進化が更に進むだけだろう。

今から10年以上先の事を考えてもまた自爆するだけだ。

難しい事を考えるのはヤメておこう。

今までも強制力を疑って無駄に神経を擦り減らしてきたが、神様はちゃんと約束通り自分の願いを叶えてくれたのだから。


「では私の家族は特に危険なことも無く末永く幸せに暮らせるのですね?」

「多少の危険はあろうが、末永く幸せに暮らすのは間違いない。其方の周りは皆、美形で有能で万能なのだからその血を継ぐ者も変なモノが混じらない限り安泰であろう」


遺伝子ありがとうである。

“変なモノ”が混じらない様にする対策については必要そうだが、当面はリカルドが仕掛けた王家を害する者を排除する結界が張られているから王都は安全だろう。

そうだ、賢者の石に相談してみれば良いのだ。

何か判別の魔法陣を教えてくれるかもしれない。


「それで何か今後のことで希望はあるか」

「末永くというのは具体的にはいつまででしょう?」

「それは分からぬ。少なくとも其方と其方の8男が生きている間は大丈夫であろう」


どうせなら孫くらいまで幸せに生きて欲しいが、それ以上望むのは贅沢というものだろう。

それは子供達が自分達で自分の子供にしてあげるべき事なのだ。

自分がやるべきはちゃんとした親になって自分の子供達に幸せに生きる術を教える事。

今世は結婚も早いから孫どころかひ孫も見れそうだが、手が届くなら自分が手伝ってあげれば良いのだ。

わざわざ神様にお願いする事ではない。

お願いすればまたちゃんと願い通りに事が進むのかと心配になるだけだろう。

だったら最初から約束なんてしない方がいい。


「神様、願いを叶えてくれてありがとうございました。とても幸せな人生です」

「それは良かった。だがまだまだ人生の先は長い」

「8男2女産まないといけませんからね・・・」

「あぁ。それにリカルドはお前を失えば生きる意味を失ってしまう程其方を愛しておるようだ。リカルドの為にも長生きする事だ」

「それは私が溺愛されたいと願ったせいでしょうか」


リカルドの意志でなく、アンセルマの希望した設定のせいでリカルドやガスパルの望みを曲げてしまったのは申し訳ない。

だが、今更それを失うのは耐え難い事だ。

神様は微笑ましいものを見るように小さく笑った。


「愛がなくとも溺愛は出来るのだ。コルデーロが良い例であろう。私がリカルドやガスパルに与えたのは好感度であって愛ではない。愛は独自に育まれたのだ。其方が努力を怠れば好感度も下がるし、愛は保たれぬモノである」


愛は定められたものではないという言葉にアンセルマは自然と手を組んで神の前に膝をついた。

感謝の祈りを捧げる。


「私のような者を見守り続けて頂いたこと、感謝の念に絶えません」

「元はと言えば自分がしでかした事の罪滅ぼしに過ぎぬ。気にせずこれからの望みを言うが良い」

「永く平和の世である事を望んではおりすが、私の子供達の代まで幸せを保証して戴いているだけで十分で御座います。それ以上の自分の幸せは自分で作ってこそだと知りましたのでこれ以上は大丈夫です」

「そうか」


神様の手がアンセルマの頭に伸びて、孫にでもするように、慈しむように撫でた。

神様を見上げてその優しい笑顔を見上げて笑い返すと白い光が拡散する様にパァッと視界が神様の姿をかき消したのだった。

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