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リカルドへの誓い

「お疲れ様、アンセルマ」

「リカルド様こそお疲れ様でした」

「アンセルマの謝辞とても素敵だったね」

「ちょっと長くなってしまいましたけど、大丈夫でしたでしょうか」

「大丈夫だよ。皆聞き入っていたから長くなんて感じなかったんじゃないかな」

「そうだと良いのですけど」

「これからこのスタイルの結婚式が流行るかもしれないね」


部屋の前まで辿り着くとアンセルマは護衛として両脇を歩いていた兄達に向き直った。


「エルナンド兄様、ガスパル兄様、兄様達にもとても可愛がって頂いて守って頂いて幸せでした。これからも兄妹であることは変わりませんから仲良くして下さいね」

「アンセルマぁ!!」


教会でも晩餐会でも泣いていたエルナンドの涙腺が更に崩壊する。

エルナンドがアンセルマを抱き締めたが今回ばかりはリカルドも譲ることにしたらしい。

隣で少し不満そうにアンセルマをぎゅうぎゅうと抱き締めるエルナンドを眺めている。

ガスパルもアンセルマの言葉にはぐっときた様だが、エルナンドとリカルドの反応に我に返ったらしい。

やれやれとため息を吐いて少ししてからエルナンドを引き剥がした。


「兄上、これ以上は殿下の不興を買いますよ」

「ガスパル、妹が可愛くないのか!これからリカルド様としょ」

「兄上!!」


余計な事を言いそうになったエルナンドの脇腹にガスパルの鉄拳が下される。

アンセルマは兄の言わんとした事をなんとなく察したが分からなかった顔をしておいた。


「ガスパル、明日はエドゥアルドを手配しておいてくれ」

「畏まりました。それでは我々はここで失礼します、殿下」

「ご苦労様」


2人をリカルドの部屋に送り届け、別の騎士達に護衛を任せるとガスパルはエルナンドを引きずって部屋を後にした。

リカルドはそのまま続き間のドアを開けてアンセルマを侍女達に託す。


「とりあえずその格好も疲れるだろう。身軽になっておいで」

「はい」


ララも何かあった場合の為に大聖堂の端で見守っていたらしい。

神の加護が光となって散り、ステンドグラスに反射する様が如何に美しかったかを興奮気味に語ってくれた。

ドレスもアンセルマが憧れていたプリンセスラインはタイトなドレスが主流なこの世界では最近まで見られなかったものだ。

アンセルマは普段着については色々リクエストする事があったものの、ドレスを着ることがなかったので今までほとんど提案してこなかった。

リカルドの卒業に向けて色々ドレスを着る必要が出てきて注文するにあたりパフスリーブやプリンセスライン、エンパイアラインなどをお願いしたのでアンセルマ周辺から今後はドレスのデザインの幅も広がっていくに違いない。

ついでに言うと、少し前までのドレスは着る時に縫い付けて合体させるというなんとも着脱が難しいものだったらしい。

ボタンやら紐で結ぶようになったのはアンセルマが子供の頃に普段着にリクエストし、母様が自分のドレスに取り入れたのが始まりだったようだ。

オシャレは我慢にも程がある。

自分1人で着れもしなければ脱げもしないって服と言えないのではないかと思うのだが、アンセルマの今日のドレスも綺麗に着る為に1人では着れないのだからオシャレはやっぱり大変なのだと思い知った。

再び風呂に入り寝間着に着替える。

用意されていた寝間着が昼間着たものより隙の多いデザインになっているのはそういう事なのだろう。

首元が詰まったプルオーバータイプではなく、胸の下を紐で窄めたエンパイアラインなので胸が強調されている。

いつもより柔らかく滑りも良い滑らかな生地だ。

胸元も結構開いているし、肩を引けばすぐにポロリしそうな心もとなさである。

ただまぁ、妄想で生きてきた喪女だってそう言う事に興味がない訳ではない。

どうすれば良いかはよく分からないが、今日まで我慢を強いられてきたリカルドがあとは何とかしてくれるだろう。

アンセルマは意を決して支度を済ませリカルドの部屋に戻った。


「身軽になったね」

「リカルド様も」

「あぁ。緊張しているの?」

「そ、そうですね。そりゃ緊張くらいしますでしょう?」

「私は嬉しさの方が勝っているかな」


そう言ってリカルドはいつもの様に腰を抱きながらアンセルマの髪をいじる。

いつもに増してリカルドの雰囲気が甘い。

意識してしまうと恥ずかしいのでアンセルマはなるべく視線は前を向いたまま隣に座るリカルドを見ないように心がけた。


「そう言えばドレスを白にしたのはどうして?」

「あ、あれは・・・あ、あなた色に染めて下さいって意味で・・・」 


語尾が小さくなるアンセルマの言葉に髪を弄んでいたリカルドの手がピクリとして動きを止める。

ややあってその手がアンセルマの頬を撫でて嬉しそうに微笑んだ。

その嬉しそうな口元が視界の端に入って、つい背けていた視線をリカルドに向けてしまう。


「アンセルマ」

「な、なんですか」

「今日、自分が教会でなんて誓ったか覚えている?」

「すみません、あまりちゃんとは覚えていなくて」

「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓いますって言ったんだよ、アンセルマは」

「そうですね、その様な内容だったと思います。本心ですよ」

「じゃあ、2日前にした約束は覚えている?」

「り、リカルド様しか受け入れないという魔術契約ですよね」

「うん。もう取り消し出来ないからね」


念を押すリカルドにアンセルマはリカルドもいつかアンセルマが裏切るのではないかという不安に思っているのだと気が付いた。

いつも飄々としているリカルドだが、王妃の裏切りをずっと見守ってきたのもあり、それが現実にあり得る事だと嫌でも実感していたに違いない。

そう思うとなんだかリカルドの念押しも可愛らしく思えてくる。

今まで強制力を疑ってリカルドがヒロインに奪われてしまうのではないかと心配していた自分ともしかしたら似た者同士なのかもしれない。

アンセルマはリカルドに向き直って相手の目を真っ直ぐに見てキッパリと言う。


「そこはまるきり覆すつもりはありませんから契約魔術でも何でもしますよ」

「アンセルマはそういうとこ潔いよね」


嬉しそうに目を細めたかと思うと軽く啄む様なキスをする。

何度か繰り返してからリカルドはアンセルマの身を攫ってベッドに移動した。

リカルドに組み敷かれ見下ろされるとアンセルマは動揺して頭が真っ白になる。

何をすれば良いのか分からずオロオロと目が泳いだ。

そんなアンセルマにリカルドが優しく頭を撫でながら微笑みかける。


「アンセルマ、僕を見て」

「り、リカルドさま、わたし何をすればいいのかわからなくて・・・す、すみません」

「うん、アンセルマへの閨教育は敢えてパスしてもらってたからね。ただ僕を見ながらしがみ付いてれば良いよ」


リカルドはベッドの横に用意されていた飲み物を煽ると、口移しでそれをアンセルマに飲ませた。

トロリと甘い果汁の様な味がする。


「賢者の石に習って作った避妊薬だ。媚薬の効果もあるから痛みも軽減出来る筈だよ」

「甘いです」

「婚姻の為にも、契約の為にも閨は必須だから頑張ってね」


媚薬が早々に効いているのか心因的なものなのかリカルドの手がするりと頬を撫でるだけでアンセルマはビクリと肩を揺らす。

心臓が飛び出してしまいそうな胸を押さえていた手を取られてリカルドの首へ誘導され、アンセルマは言われた通りにしがみつく。

それだけで精一杯なアンセルマはただただリカルドに翻弄されて夜は更けていったのだった。

確実に年齢設定をミスりましたが、今更なのでこのまま…

マリーアントワネットも14歳で結婚したことですし

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