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休日は突然に

良い匂い。

なんだかとても好きな匂いがしてアンセルマは寝ぼけた頭でクンと匂いを嗅いだ。

この匂いなんだっけ?

とても好きな匂いのはずだ。

ていうか今何時?

時計を見る為にサイドテーブルの方に振り向くと顔面が何か硬くて柔らかいものにぶつかった。

わっぷ。

ぼんやりと目を開けると、頭上から小さく笑う声が聞こえて枕が小さく揺れる。

ふにゃ?

視線を上に上げると、リカルドのドアップがそこにはあった。


「にゃっ!?」

「おはよう、アンセルマ」

「おおおおおはようございます、リカルドさま?!」


どうやらリカルドの腕枕で眠っていたらしい。

慌てて起き上がろうとしたが、すぐにリカルドの腕に抱き締められてしまう。

色気!

ガウンがない柔らかいシャツ一枚の布越しにリカルドの鍛えられた肉体を感じてアンセルマも逃げ腰になる。

朝から刺激が強い!

しかしこうなった経緯を思い出し、アンセルマは両手で顔を覆った。

ああああぁ!はぁずぅかぁしいぃぃぃぃ!

悶絶するアンセルマにリカルドはまたクスクスと笑った。


「朝から可愛いね、アンセルマは。体調はどう?」

「元気でふ」

「顔は見せてくれないの?アンセルマ」


指と指の間を開いてその隙間から片目で覗く。

リカルドに覗き込まれて手の甲にキスをされた。


「ふふ。ほんと生殺しだな。この可愛い寝起きのアンセルマを前にして」

「なんで同じベッドで寝ているのですか?!」

「昨日、母上からお許しが出たの覚えていない?」

「手を出さないと約束していたのは何となく聞こえていた気がします」

「なんでそこだけ覚えてるかな。でも約束は守るつもりだからアンセルマも協力してね」


そういう割にぎゅうぎゅうにアンセルマを抱きしめて、手からはみ出す耳や額にキスを浴びせまくる。

甘んじて受けていたがくすぐったくなってきて、顔を覆っていた手でリカルドの顔を押し退けた。

しかしその手もすぐに捕まえられてしまう。


「リカルドさまっ!自重するのではなかったのですか?!」

「自重すると僕のお姫様は不安になるみたいだから自重は止めるよ。だからアンセルマがちゃんと抵抗しないとダメだよって言ってるの」

「ズルいっ」


余裕満面の笑みで笑うリカルドにアンセルマはふくれてみせる。

だけど内心はあぁなんて幸せな朝なんだろうと喜んでしまっている。


「リカルドさま、キスして」


ポロリと溢れた言葉にリカルドがぎょっとした顔をした。

アンセルマの手首を掴んでいた手が緩んだ。


「アンセルマ、僕の言ったことをちゃんと聞いてた?」

「してくれないんですか?」

「あぁ、もう、この小悪魔め」


リカルドの唇が降りてきて、キスをする。

啄む様なキスを繰り返すリカルドの首にアンセルマがしがみつくと焦がれた様に舌が入ってきた。濃厚なキスに脳みそが溶かされる。

甘い。

リカルドとのキスは痺れる様に切なくて甘い。

リカルドの手が胸に触れたところでアンセルマはリカルドの口を手で塞ぐ。


「リカルド様、おしまい」

「アンセルマ」

「これ以上はダメですよ、めっ!」


キラキラからギラギラになってしまったリカルドがアンセルマに鼻の先をツンと突かれてハァと特大のため息を吐く。

アンセルマの胸に顔を埋める様にしてリカルドは両腕でぎゅっとアンセルマを抱き締めた。


「あぁ、なんて酷い仕打ちだ」

「抵抗しなさいと言ったのはリカルド様ではないですか」

「あぁ、間違っていないよ。今はね、今は・・・結婚したら楽しみにしてるといいよ」


なんか怖い事を言われた気がするが、聞かなかった事にする。

窓の外は既に割と明るくて、アンセルマは視線を彷徨わせて時計を探した。

眠っているのは自分の部屋ではなくリカルドの部屋の様でいつものベッドサイドには時計が置いていない。


「リカルド様、今何時ですか?」

「10時過ぎかな。今日は珍しくよく眠っていたね」

「えっ!?こんなのんびりしている場合ですか?!」


アンセルマはいつも6時過ぎには起きる。

10時となればかなりの大寝坊だ。

特に誰と約束をしている訳でもないが、普段ならば公爵と朝ごはんを食べてお見送りし、鍛錬を終えて次の仕事に取るかかる頃だろう。

リカルドもいつもならばとっくに迎えにきたガスパルと一緒に仕事に出掛けているはずだ。

それなのにまだ2人とも寝間着のままお布団の中でいちゃついてる場合ではないのではないだろうか。


「今日は僕もアンセルマもお休みだよ」

「リカルド様も?!」

「昨日の今日で王宮を彷徨く訳にもいかないからね。今日は父上も母上もだいぶ早く家を出られたよ」

「お義母様も?」

「第一継承権を持つのは母上だからね。王位に関わる今日の裁決には招聘されたんだ」

「あれ、リカルド様も今まで寝ていたのですよね?どうして知っているのですか?」

「2人が王宮に行く話は昨夜から聞いていたけど、2人が出る前にこの部屋に来てアンセルマの寝顔を見て行ったからかな?」

「なっっ!!」

「可愛い寝顔にご満悦だったよ」


ガクッと死んだフリを決め込んだが、すぐにアンセルマは起き上がった。

こうしてはいられない。

リカルドが休みならばその間に手伝って欲しい事は山程ある。


「もう起きるのかい?」

「大寝坊なのに何を言っているのですか」

「2人でこんなにのんびり寝ていられるのなんてきっともうなかなか出来ないよ?」

「それはそうですけど、リカルド様がお休みならばしたい事が他にもあります」

「何だろう?」

「魔石の検証に決まってるじゃないですか」


今度はリカルドが死んだフリをする。

気持ちは分からなくもないが、アンセルマは起きてくださいませ、とリカルドの腕を引っ張った。

仕方なさそうに笑いながら、リカルドものそりと起き上がる。


「ではまず着替えて食事だね。アンセルマは何が食べたい?」

「うーん、黄金のトースト?」

「チーズとベーコンは?」

「要ります!」

「りょーかい。じゃあ着替えておいで、ドアの鍵は開けてあるから」


アンセルマはベッドから下りて、リカルドが示した2人の部屋が繋がるドアに手を掛けた。

いつも閉まっているハズのドアはリカルドが言った様に鍵は掛かっていない。

よくよく考えると試したことがないから昨日まで閉まっていたという確証はないのだけど。ドアを閉めるとリカルドが侍従を呼ぶベルの音が聞こえた。

すぐにアンセルマの部屋のドアがノックされ、ララが姿を現れていつもの様に朝の支度を手伝ってくれる。


「今日は顔色がとても宜しいですね」

「大寝坊だもの。ララも時間がズレてしまってごめんね」

「私はお嬢様のお嫁入りの準備の為に通常業務から外されましたから問題御座いませんよ」

「お嫁入りの準備?」

「公爵家に勤める事になった時も急で驚きましたけど、まさか王宮に勤める日が来るなんて本当に人生何があるか分かりませんわね」

「あー・・・それは私も想定外で。巻き込んでごめんね、ララ」

「楽しませて頂いておりますわ」


支度をしてリカルドの部屋を覗くとリカルドは支度を済ませて何か書き物をしている。

だがアンセルマに気付いてすぐにペンを置き行こうかと手を差し伸べた。

手を繋いで部屋を出るとエルナンドが立っていて、真面目な顔でリカルドに頭を下げる。


「エルナンド兄様、おはようございます」

「おはよう、アンセルマ」

「エドゥアルド兄様とはいつ交代されたのですか?」

「9時だ。また17時ごろ交代するよ」

「私が大寝坊したせいでお会い出来なかったわけですね」

「ゆっくり眠れたのなら良い事じゃないか。成長期はいっぱい寝た方が良いと昔私に教えてくれたのはアンだろう」

「そうですね。まだまだ身長が欲しいところです」


リカルドの身長は既に175cmを超えている。

公爵よりはまだ少し低いがもう少しで追い抜くだろう。

それに比べてアンセルマは155cm。

有難い事に胸はあるが、リカルドとの身長差を考えると少なくても160cmは欲しいところだ。


「僕は今のままでも可愛いから良いと思うけどね」

「並んだ時にカッコ悪くないですか?それにあまり身長差があるとキスがし辛いですよ?」

「アンセルマ・・・」

「あっ」


エルナンドにバツの悪い顔をされ、アンセルマも身内がいる所で言うことではなかったと首をすくめる。

結構リカルドにはキスされまくっている気がするが、いつも馬車の中とか2人きりの部屋とか大っぴらにする事はない。

両親や兄夫婦もイチャついてるのをそういえば見たことがない気がする。

王侯貴族にとってははしたない事なのだ。


食堂で席に着くとすぐにリクエストした焼いたチーズとベーコンの乗ったフレンチトーストが出てきた。

普段は出されたものを食べるが、たまに忙しくて食べるのが変な時間になった時はリクエストを聞かれるのでよくリクエストするメニューだ。

野菜のスープが付くとは言えフレンチトーストは他の人にしてみればオヤツなのでご飯として食べるのはアンセルマくらいである。

現にリカルドは野菜たっぷりのポトフに山盛りのロースト肉、サーモン、野菜サラダにパンだ。年頃だけあってスマートなのに食べる量が凄い。

見ているこっちが胸焼けしそうだ。


「そう言えば今日はライムンダ様の家庭教師の日なのですが」

「今日はガスパルに任せてあるから気にしなくて良いよ」

「ガスパル兄様もいらしてるのですか?」

「いいや、グロスター家だ」

「何故うちに?」

「婚約する事になるからね。その話し合いだ」


なんだか不思議な組み合わせだが、顔馴染みなのでライムンダも不安はないだろう。

5つ年が離れているから兄様にはちょっと幼すぎるかもしれないけれどお相手が決まったのは喜ばしい事ではある。

ガスパルは同年代ではリカルド様と並んで他の追随を許さないハイスペックだから次期公爵となれるなら良い事だと思う。


「ライムンダに取られるのは複雑かい?」

「いいえ、全然。私は嬉しいですよ。ただ5つ年が離れてますから、お互いはどうなのでしょう?」

「ライムンダは間違いなく昔から好意を持ってるね。ガスパルはよく分からないけど」

「そういう話はされないのですか?」

「ガスパルの話はした事がないな。いつもアンセルマの話ばかりだ」

「一体何を話してるんです」


どうせロクでもない事だろう。

それよりもライムンダの気持ちは一度聞いてみたいなと思うアンセルマだった。

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