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不登校で農地開拓

話すべき事を話し合うと既にお昼の時間だ。

2人で食堂に下りると、何やら盛り上がっているが何故かその中にガスパルの姿がある。

どうやら昨夜作った魔術具のコテについての話らしい。

公爵夫人もライムンダも昨日と同じ様に綺麗に髪が巻かれている。


「アンセルマ、おはよう。どうかしら、うまく出来ていると思うのだけど」

「おはようございます、御義母様。今日もとても素敵だと思います。初めてなのにその出来はさすが公爵家と感嘆していたところです。ライムンダ様も」

「時間がとてもかかってしまったけれど、最後の方はコツを掴んでいたようだから毎日巻いていれば上手くなると思うわ」

「毎日やらなくても良い様に固定の時間を延ばせるようにしますね。丸める時に熱を加えてますのであまり毎日やると髪が傷む可能性もありますので。御義母様たちは聖水を使ってますので問題ないかと思いますけど、他の方はそうはいかないと思いますから」

「まぁそうなの?じゃあ改良された原石を貰ってから商品化する事にするわ」


公爵夫人との会話を終え、アンセルマは隣に座ったガスパルに小さい声で声をかける。


「兄様は今日はどうなさったの?」

「どうって、お前達午後は領地に行くんだろう?僕を置いていくつもりか?」

「兄様も新種に関わるのですか?」

「残念ながらリカルド様の仕事は僕の仕事だ。大体、結婚するまではお前達を2人きりにするつもりはないよ」


昨日は?と思ったが、下手な事は突っ込まない事にする。

家に着くまで甘えていたとか、泣いたとか余計な事まで話す事になったら自分が恥ずかしい想いをするだけだ。

そもそも昨日ガスパルが学校に残ったのはアンセルマへの注目を逸らす為だったらしい。

アンセルマが残してきた荷物を引き上げてきたのもガスパルだと昨夜リカルドに聞いた。


「兄様、ありがとうございます」

「今の流れでお礼を言うのはおかしくないか?」

「私がお礼を言ったのは昨日後始末をして頂いた件です」

「今後も誤解のなき様に言ってくれ。隣の御仁が案外心が狭いからな」


そう言われて反対隣を振り向くと、リカルドがにこりと笑う。

確かにちょっと怖い笑みだ。


「もちろん、リカルド様にもたくさん感謝していますよ」

「アン、そうじゃなくて・・・」

「昨日可愛い本音を聞かせてもらったから誤解はないよ」


にこりと笑うリカルドにアンセルマは恥ずかしくて目を伏せる。

それとは逆にガスパルは恐ろしいものを見た様に目をぎょっと見開く。

公爵家の皆に話を聞いてもらったり、学校に当分行かなくて良いと言われたのが良かったのか、今日は朝ご飯も昼ご飯も残さず美味しく食べられた。

聖女の出現以来、強制力が怖くて食も細くなっていたのだ。

チキンな自分が恨めしい。

11歳の割に出る所は出始めてきたから、栄養はしっかり摂っておきたいところだと言うのに。


それからアンセルマの忙しい日々が始まった。

各領主に新しい種の扱いについて説明し、ある程度選ばれた農民全員と採用面談をして、アンセルマが大丈夫そうだと思った平民と契約してもらう。

今まで匂い判断ばかりでほとんど使ってこなかったが、もちろんアンセルマはチートの代名詞、鑑定持ちである。

ステータスを見れば頑張ってくれそうな人は分かるのだ。

採用された人にはすぐに与えられた家に引っ越してもらい、アンセルマが無理矢理魔法で開墾した地に有機肥料を混ぜ込んで土を作るところから始めてもらっている。

それが終わったら温室での苗づくりから指導するつもりだ。

温室は苗づくりの為に共同領地に作ったガラス張りの建物である。

アンセルマの作った結界魔術具で守られているし、えげつない罠も仕掛けてあるから苗を盗もうとしても盗むことができない。

登録した農民しか入れないので何かあった場合は農民達のシェルターにもなる場所だ。

あ、防犯カメラや定点カメラがあればわざわざ来なくても苗の様子見られるんじゃない?

最初のお出掛けの後にカメラは作ったのだが、動画については作っていなかったのを思い出して開発したりもした。

録音機や自動入力も喜んで貰えたものの、公爵が黒い笑顔で防犯カメラを喜んでいたのがよく分からない。

理由は怖そうなので聞かないでおいた。

リカルドもガスパルもほとんどアンセルマの側に居てくれたし、他の用事でどうしても側に居られない時はエルナンド兄様やたまに父様が外出に付き合ってくれる。

あれからずっと公爵家に留め置かれているけれど、母様もたまに公爵夫人と商売の事を話す為か訪れるので一緒にお茶をするし、お見舞いのお手紙をくれた友人のアイダ嬢も最初は文通だけだったけれど、公爵夫人に遊びにいらっしゃいと声をかけられてからは2週間に1度遊びに来ては学校の様子を教えてくれる。

その中には聖女候補のメラニア嬢がコルデーロ殿下の婚約者である侯爵令嬢の派閥から虐めを受けているという話や、コルデーロ殿下やその側近達がメラニア嬢を庇ってデレデレしているテンプレの内容も含まれていた。

そんな話を聞いた日は決まってリカルドが夜アンセルマが落ち着くまで話を聞いて抱きしめてくれる。

気がつけば武力大会から2ヶ月が経過して1学年の終わりに差し掛かっていた。


「リカルド様、私すっかり学校に行っていないのですけど学年末の定期テストはどうすれば良いでしょうか?」

「あぁ、それなら明日自宅で受ける予定だ。ガスパルと3人でね」

「あ、明日?!聞いておりませんよ!」

「今言ってるじゃないか。なにか問題あるのかい?」

「テスト勉強しておりませんが?!」

「アンセルマがテスト勉強?必要ないだろう」

「そもそも実技のテストはどうするのです?」

「武力大会のトップ3が揃っているのに実技なんて今更だろう?」


公爵家の食堂で3人並んで試験を受けるという不思議な空間が次の日出来上がった。

学校から派遣された先生2人が監視員として机の向こう側に座り、リカルドとガスパルは同じ学年なのでアンセルマを挟んで3人横並びだ。

1日で全教科やる事になるので午後は丸々潰されたが、異様に量が多かったものの、リカルドの言う通りテスト勉強をしていなくても問題なく簡単に解けた。

昨夜は徹夜してでもテスト勉強してやろうと思っていたのだが、そもそも教科書が公爵家には置いていないし、リカルドがアンセルマが寝るまでベッド横でアンセルマを寝かしつけるというイベントが発生して何も出来なかったのだ。

算術のテストが4桁だったのは不思議に思ったが、まさかそのあと自分の名前が1年生から3年生までの学年一位として張り出されるとはアンセルマは知る由もなかった。

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