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全学年参加の武力大会

聖女候補について両極端な噂が聞こえてくる。

言葉遣いも礼儀作法もなってない、馴れ馴れしい女だという良くない噂と、分け隔てなく誰にでも優しく魔術の授業では抜きん出た能力を見せその姿はまさに聖女だという褒め称える噂だ。

アンセルマはなるべく人目につかない様に食堂以外は出歩かず教室で本を読んでいる事が多い為見たことさえなかったが、全学年参加の武力大会で初めて聖女候補を見る事ができた。

魔力量が高位貴族並みに多いとは言え、所詮平民だった割にという話だ。

剣と魔法を両方とも使って良いこの大会では馬鹿みたいに子供の頃から訓練してきたアンセルマやリカルド、ガスパルの敵ではない。

そもそも得意なのが光魔法であって、攻撃魔法はあまり得意ではない様で2回戦まで残ったもののそこで早々に敗退してしまった。王子は準々決勝目前で敗れたようだ。

一方、我々3人は準決勝まで3人とも残っている。


「アンセルマ様は見た目と違ってやはりグロスター伯爵家の御令嬢ですのね」

「子供の頃から魔物駆除をしてますから腕に覚えはあります」

「頼もしいこと」


学校ではなるべく顔を隠す為に認識阻害の眼鏡をして、髪はおさげだ。

それで本ばかり読んでいるので大人しい令嬢に見られがちだが、魔術や剣術の授業ではそれなりに振る舞っていた。

今日は魔法を使わないで剣のみで戦っているが、それでも誰もまるで敵わないらしい。

皆弱すぎじゃない?

この国の行く末が心配すぎる。


「アン、今日は魔法はなしかい?」

「ガスパル兄様、私目立ちたくないのですよ」

「十分もう目立ってると思うよ?」

「兄様だって半分も力出してないじゃないですか。皆様、弱すぎじゃありません?」


自分達の試合までの間、アンセルマとガスパルは隣に座ってこそこそと話し合う。

反対隣に座るリカルドがそんな姿に笑った。

朝、散々2人に脅かされて、馬車の中で初めての武力大会に上級生も一緒なんて乱暴な大会では?とビクビクしていたのが馬鹿馬鹿しい。

2回戦目までは学年毎成績順に戦い、3回戦目からは先生によって割り振られたトーナメント戦となる。

我々3人は準決勝まであたらない様に割り振られていた様だ。

準決勝はアンセルマとガスパルが戦う事になっている。


「アンはどうしたい?」 

「どうしたいって優勝しても宜しいのですか?」

「僕は構わないけどね」


冗談で言ったつもりだが、リカルドは笑っていいよとアンセルマの頭をポンポンして立ち上がると、自分の出番に向かってしまう。

エドゥアルド兄様がまだ在籍していた一年目は1位がエドゥアルド兄様、2位がガスパル兄様、3位がリカルド様だったらしい。

2年目はリカルド様が優勝で2位がガスパル兄様、3年目はガスパル兄様が優勝で2位がリカルド様と交互に優勝を譲り合った形だ。

アンセルマは2人による予定調和を疑っている。

そもそも一年目の結果からして怪しい。

剣術だけなら確かに順当な順位かもしれないが、魔術と組み合わせた総合力で言うとリカルドの方が強いと思う。

もしも1年目が剣術縛り、2年目が魔術縛りと隔年で縛りを2人で決めて戦っているなら今年は魔術縛りになるからガスパル兄様が不利だ。

剣術も最近はリカルド様がかなり強くなったからどちらが勝つのかやってみないとアンセルマには予想がつかない。

準決勝第一試合の為にコロシアムの真ん中の舞台にリカルドと去年3位だったらしい5年生が向かい合う。


「兄様、あの相手の方はどんな方なんですか?魔法は苦手そうですね」

「王子の新しい側近になられたゾルムス伯爵の三男バレンティン様だ。確かに魔法より筋肉で押し通るタイプだな」

「側近なのにそんな事で宜しいのですか?」

「この学園で僕達を除けば1番強いからな。脳筋だが、来年は1年騎士団で揉まれてからの配属になるだろう」


舞台上ではリカルドとバレンティンが礼をし、剣を構える。

バレンティンの方が全体的に大きく鍛え上げられた肉体がいかにも武官なのに対してリカルドはスマートで文官にしか見えない。

開始の合図と同時にバレンティンがリカルドに向かって駆け出し、剣を振りかぶった。

一方リカルドはその場から一歩も動かず剣で宙に文字を描く。

バレンティンの剣がリカルドに届く寸前でバレンティンの大剣が何かに弾かれる様に彼の手元を離れて宙をくるくると回転しながら飛んでいってしまう。

剣は場外に落ちたので本来であれば試合終了だ。

しかしバレンティンは諦めるつもりがないらしく拳に風魔法を纏わせ果敢にリカルドに打ち込んだ。


「カスペル!!」


魔法でリカルドに敵うはずがない。

どんなに頑張っても学生では中級魔術がせいぜいだ。

しかも彼は脳筋で魔法は初級魔法止まりらしい。

学園入学前から宮廷魔道士レベルの上級魔術が使え、ほぼ出来る人間が居ない無詠唱魔法を扱う異常な私達に敵うはずがないのだ。

リカルドが撃ち込まれた風に露でも払うかの様に剣を振る。

風は綺麗に2つに割れてリカルドを避ける様に通り過ぎた。


「風魔法とはこう使うのですよ」


アンセルマもだが、リカルドも学校では決して上級魔法を使わない。

使うのは中級魔法の途中までだ。

しかし今リカルドは中級魔法ではなく、バレンティンと同じ魔法を剣に纏わせ振り下ろす。

まるで違う魔法の様に凄い威力で今度はバレンティンを場外に吹き飛ばした。

同じ基礎魔法でも魔力を多く込めれば威力は強くなる。

普段から魔力を使えば練度が上がるのに、バレンティンは得意な剣ばかり練習しているから魔力もそれなりにしか増えないのだろう。

普段からアンセルマと一緒に鍛錬したり、上級魔法である転移を日々行なっているリカルドとの差だ。

場外に吹き飛ばされ壁に激突した事で意識を失ったらしいバレンティンは試合続行不可能となり今度こそリカルドの勝利が宣言された。


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