マダガスカル攻略作戦
セイロン島に一時的に拠点を建てた日本海軍は、マダガスカル攻略作戦の発動を決定した。
マダガスカル島民は共産化には反対しなかったが、島の大部分の要塞化を知ると態度を変え、ソ連軍との戦闘が続行していた。
将来的に敵対するかもしれないが、日本はマダガスカル島民に協力することを決定。
その第一作戦として、潜水艦のバンカーを破壊することになった。
「まったく、マダガスカル攻略作戦とは名ばかりだな」
「まぁ、仕方ありません。あのバンカーの呼び名がマダガスカルというのですから。」
ややこしい話だが、マダガスカル島のマダガスカルバンカー(日本軍の呼び名)の攻略作戦なので、マダガスカル攻略作戦なのである。
よって島の攻略ではないのだ。
だがこのややこしい作戦名はソ連軍の誤解を誘発させた。
ソ連軍は戦力を島の全体に分散させてしまったのである。
潜水艦が脱出を図ったが、特戦隊によって撃沈されたり、追い返されたりした。
その為、新型潜水艦も出るに出れなくなってしまったのだ。
ソ連軍にも、特戦隊の噂は流れていた。
ジューコフはレニングラードのデータの解析をしていたが、陸上のでの戦闘力しか分からなかった。
その為、ソ連海軍は恐怖に駆られた。
恐ろしい力を持つ艦隊がここに来るのだと言う事実は、彼らの士気を著しく下げた。
一方の特戦隊は、新型潜水艦を拿捕できないか考えていた。本来の特戦隊の任務とは違うが、設立当初から特戦隊は拿捕を主任務にしていた。
「要するに、我々がバンカーの制圧をするのは不可能なわけです。そこで、爆薬を仕掛けた数人でそのまま新型をいただくのはどうでしょうか。」
「確かにな、だが数人でなんとかなるものなのか?新型は。」
「では、伊400で引っ張ってくるのはどうでしょう。」
「それのほうが現実的ではないよ。」
「ふーむ……。」
特戦隊はまたメンバーの増員が行われ、昔からの人もいれば最近入ってきた人もいた。
それだけに様々な意見がでる。
男女入り交じっている事も、意見が増える一因になっているだろう。
「拿捕が先でないと駄目だね。バンカーが吹っ飛んだら必ず逃げる。それでは捕まえられない。」
「逃げたところを筒状の罠にかけられたらいいのにな。」と一人の女性士官が呟く。
「それだ!今、草加艦隊を修理しに明石が来てるだろう?あいつに筒状の罠を持たせればいいんだ。」
と簡単なモックアップをつくる
こうして新型潜水艦拿捕作戦の大まかな案は決定した。
その夜、ソ連軍の制服に身を包んだ破壊工作員は現地に侵入した。
伊400達は晴嵐を飛ばし、バンカーの南にあった、マダガスカル島司令部へ爆撃を開始した。
さらに、特伊から上陸艇を出し、司令部へ攻撃しているように見せた。
「さて、敵は動くかな?」
「必ず動きます。」
ソ連軍は司令部防衛のため、兵力を移動させた。
さらに、島内のバンカー全てから潜水艦が始動、撤退を始めた。
「来たぞ、新型以外はすべて沈めてやれ。」
伊400にとって、旧型の潜水艦は相手にならなかった。
現地改造の魚雷の威力が発揮された。
潜水艦の多くは推力を失い、沈んでいった。
また、この頃にマダガスカルバンカーを工作員が爆破、使用不能にした。
その為、新型は出港せざるを得なくなった。
「音がしませんが、何か大きなものが動いています。おそらく新型です。」
「よし、脅し攻撃で罠まで連れて行こう。」
程よい距離を保ちながら、新型は徐々に駆り出される。
工作艦明石は、筒型拿捕装置を辺りに沈め、今か今かと待っていた。
草加艦隊もこれを支援していた。
明石の調整で、罠の口は大きく開き、新型を入れた。
袋の口が閉まり、新型は身動きが取れなくなった。
その後、一気に明石達が引き上げ、陸に押し上げた。
「作戦成功、敵の新型はもはや我々のものです。マダガスカル攻略作戦は成功です。」
マダガスカルバンカーの壊滅によって、インド洋の制海権は完全に日本軍のものとなった。
日本では、新型のリバースエンジニアリングを急ピッチで進めていた。
だが、この新型を日本に持ち帰るのは容易ではなかった。技術保持のため、艦内に爆薬が仕掛けられており、乗組員はそれから逃れるために、罠と知っておきながらこれにかかったのである。
この爆弾の解体に一週間が掛かり、更に魚雷の発射管等々で爆発が起こってしまい数名の死傷者が出た。
安全になった後に日本に持って帰ってからも、この新型は技術士を悩ませた。
この、ポンプジェット推進潜水艦は、なんと原子力機関によって動いていたのである。
日本はおろか、ソ連以外でこの様な物を持つのは無かったため、この研究に更に時間がかかった。
日本はこの新型潜水艦の情報を隠し、ソ連軍乗組員はすべて国内のソ連亡命者キャンプに身分を偽装し避難させ、その上で新型撃沈のニュースを大々的に発表した。
西園寺はこの研究について会議の場を作った。
この場には山本の他、核開発チームもいる。
彼らはアメリカの核開発に協力していたため、核兵器に最も詳しく、また日本で核兵器を作れる唯一のチームであった。
「実に恐ろしい話ですが、もしこいつを撃沈していたら、核汚染の恐れがありました。」
「しかし、この原子力機関はとんでもないものです。」と、山本が言う。
「しかし危険すぎる、この原子力は核兵器のみならず、様々な分野で活用できますが、如何せん危険だ。放射線は未だ未知の事が多く、この危険性を認識せずに使用するというのはあり得ない。」
と、そこで日本の核開発チームが言う。
「その点ですが、我が研究チームはトリウムなる物質を使えば、プルトニウムを消滅させられるということを発見いたしました。」
「私は文系なので、門外漢なのですが、それはつまり、危険な物質を消す事ができるという事ですか?」
「そればかりか、このときに発電まで出来るのです。まだ調査中ではありますが、これを潜水艦に搭載すれば、かなり有用と思います。」
「ふむ……なるほど、だが私はどうもピンとこない。もし撃沈されても大丈夫なのですか?」
「そこは工夫です、うまくやります。」
ソ連では、インド洋の喪失によってこの方面での問題を再確認し、ドイツ攻略軍の大半が、中東方面へ進出を開始、イギリス軍の駐留していたエジプトを攻略、道中のイラクイランはあっという間にやられてしまった。
イタリア、フランス植民地を合わせれば、もはやアフリカは彼らの物になったも同然である。
スターリンは地中海艦隊のドックに居た。
ここに、ソ連海軍のすべてが詰まっていた。
その隅っこに、50もの潜水艦が並んでいる
こいつらは例の新型を更に改良した超潜水艦なのだ。
乗組員たちも、精鋭な上、スターリンに忠誠を誓うまさにスターリンの海軍であった。
「素晴らしい、我々の大海軍が、いずれすべての海を支配する。」
その艦隊の主力艦をここで紹介しよう。
空母スターリン
蒸気カタパルトを搭載し、大型の航空機を運用できる。またその装甲は450mmにもなり、その上ミサイルを撃つことすら出来た。
果たして日本の空母で太刀打ちできるのだろうか……?