祖父襲来
家に帰って、風呂に入った後。突如、父さんから言い渡された。
「明日、グスタフ爺ちゃんが来るぞ」
「えぇ!! 何しに?」
「何しにって、ジークスヴェルト! お前に用があってだ!」
「えっ、何で? 何かしたっけ?」
「お城の件だ」
「あぁー、それか。でも何で?」
「恐らく、見てみたいのだろう。後、俺の所にも作れ、とか言うかもな」
うーん、爺ちゃんならありえる。領主の座を父に譲って五年。前は一緒に住んでいたが、前領主が居てはやり難いだろうとの事で、父さんの弟、つまり俺の叔父の家に、ばあちゃんに叔父家族と一緒に住んでいる。ただ、今でも現役バリバリで、戦に備えて鍛えている。武闘派な、筋肉モリモリなじいちゃんなのだ。
「お城かあ。でも何処に建設する気かな? 北?」
「十中八九、そうだろう。ダスティンに任せている、我が領地の北部に作る気だろ」
「三つ領地に接する、領地境界があるもんね」
「おっ、良く勉強しているな。偉いぞ」
「ジィに聞かされた。何度も言うから、耳にタコが出来そうだよ」
「ルーファスは、先の戦に出兵しているからな。知識は豊富だぞ」
「知らない事を、教えてくれるのは嬉しいけど。だからって、腕を切り落とされたとか、内臓が飛び出してとかは、六歳の子供に教える事じゃ無いと思う。教えられたその日のスープ。そのせいで吐いちゃったし」
「あれってそうだったのか? ・・・・ルーファスに言っておく」
「うん、お願い。夢に出そうだよ」
「あぁ、出来るだけ早く言っておく。ハァー・・・・兎に角、お爺ちゃん来るから」
「それで、爺ちゃんはいつ来るの?」
「明日には着く筈だ」
「えっ、明日!」
「そう、明日」
いきなり過ぎない? もうちょい早く言ってよ。
次の日の午前中。
「ジーク、お爺ちゃんが来たぞー!」
「はーい!」
☆☆☆
「おぉー! ジークスヴェルト! 大きくなったな!」
「爺ちゃん、髭が痛い」
「おっ、すまぬ」
爺ちゃんのお髭ジョリジョリ攻撃が、俺のぷにぷにほっぺ
を、チクチクして来た。
「ジークちゃん」
「あっ、おばあちゃん!!」
爺ちゃんから離れ、おばあちゃんに抱きついてギューっと
した。俺は、おばあちゃん子なのだ。
「うむむ、リーファばかり狡いではないか」
「あなたのは、力が強くて痛苦しいからですよ」
俺が、おばあちゃんに抱きついたものだから、ちょっと拗ねる。面倒臭いなぁ。
「お義母様、お義父様。ようこそ来て下さいました。ほら、リィーナ。お爺ちゃんとおばあちゃんですよー」
「あうーー、ぶーぶー」
「あらあら、リィーナちゃん。おばあちゃんですよー」
「おぉー、リィーナ! んー、かわいいのぉー」
爺ちゃんとおばあちゃんを、妹に取られた。ふぬぬ、赤ちゃんに嫉妬するほど子供じゃないもん、ふーんだ。
「それで親父、一体何の用なんだ?」
「何だ、ただ孫に会いに来たら行け無いのか!」
「リィーナが生まれた時は来なかっただろ。どうせ、ジークの建てた城を見に来たんだろ」
「べ、別にそう言う訳では・・・・」チラチラ。
爺ちゃん・・・・それなら、こっちをチラチラ見ないでよ。
「あなたったら、ジークちゃんが建てた城を見に行くぞって、張り切っていたじゃないですか」
「な、なっ、ちがっ・・・・」
「爺ちゃんにお城見てほしい!」
「そうかそうか。では一緒に、見に行こうなぁ〜」
満面の笑みを浮かべる爺ちゃん。ふう、爺ちゃん思いの孫も大変だ。言っておくが、俺は爺ちゃんの事が大好きだ。
「あら、私も見たいわ」
「おばあちゃんも一緒に行こう!」
「えぇ、そうね。一緒に行きましょうね」
「うん、どうせならみんなで行くか。リィーナはまだ連れて行ってないしな」
「いいですね。どこまで進んでるのか気になっていましたし。リィーナ、お兄ちゃんのお城見に行きたい?」
「あう! あぶぶーー!!」
「そう、行きたいのね」
いや、あぶぶーって、言っただけだと思うよ。とは言わないでおこう。
「じゃあー、出発!」
「そして到着!」
「あがっ、はがっ! こここ、これをジークスヴェルトが」
「ジークちゃん・・・・凄いわ、ジークちゃんは天才ね!」
「いや、リーファよ! これは天才とかそう言う話では・」
おばあちゃんは、何かキャピキャピしながら褒めてくれたが、爺ちゃんは顎が外れそうなくらい驚いていた。
「あら、だいぶ出来てきたわね」
「あぁ、城の建設だけでなく、城下町の方まで・・・・」
「ふっふーー。最近、工兵隊の格も上がって、仕事が速くなったんだぁー」
「凄いな。ジークスヴェルトよ、お前の魔法兵とか言ったか? どのくらい出せる?」
「うーんと、今は・・・・数だけなら千五百くらいかな?」
「千、千五百だと・・・・」
「確か、数をたくさん出すと、魔法兵は弱くなるとか言っていたな?」
「うん、何故かは分からないけど」
「ほう、面白い力だの」
「リィーナ、お兄ちゃんのお城はどう?」
「あうー、きゃっきゃっ!」
「あら、喜んでるわね」
「うん、嬉しそう。よし、頑張ってリィーナのお部屋も作るからね!」
「あうーー!!」
「「「「「あはははっ」」」」」
「でも、本当に凄いわ。お城もかなりの広さになりそうね。・・・・完成したら、ここに移ろうかしら?」
「お、お義母様?!」
「お袋?!」
「おばあちゃん?!」
「リーファ?!」
「あう?」
リィーナ以外は、驚きの声をあげた。リィーナは赤ちゃんだけど。一緒に暮らすねぇ・・まあ、俺は別にいいけどね。おばあちゃん大好きだもん。後、爺ちゃんも一応。
取り敢えず、見学は無事終了した。そして、爺ちゃんは案の定。
「ゴホン、ジークスヴェルトよ。爺ちゃんの所にも作ってくれ」
との事だった。うーーん、爺ちゃん達が住んでる所は、山岳地帯で山が多い。となると、山城か? ふむ、面白そうではあるな。
ただ、建設となると・・・・暫くあっちに行く必要がある。・・ちょっとくらい、良いかな? ただ、もう直ぐ秋だから、作物の収穫が終わったらだな。
「ジークスヴェルトや・・このコーンとやらは美味いな!」
「あら本当。コレ、うちの所でも育てましょう」
育てるのはいいけど、あんまり食べると、来年の種が無くなっちゃうんだけど。
爺ちゃんの襲来は、楽しく終わった。ただ、コーンを大量に持ってっちゃった。・・・・来年に植える分、足りるかな?