錬金チートの近況報告
「ふぬぬぬぬぬなっ! ハァー、ハァー、ふう! 今日のノルマは終わりっ!」
神様から貰った、もう一つのチート。創造錬金の力の一つ。魔力変換生成を使って、今日も魔力を元に、金属の生成に励んでいた。
日課として・・・・鉄、銅を生成している。他にも金と銀何かも作っている。ただ、無限に作れる訳では無い。
一日に、鉄を生成できる量は八十キロ、銅は五十キロ程が限界だ。銀と金何かは、生成出来る量がもっと少ない。銀は十五グラム、金に至ってはニグラムだ。コレでも、最初よりだいぶ生成できるようになった方なのだ。魔力の量には、余裕があるのだが・・制約でもあるのかな? それともレベルの問題?
コツコツ生成して、銀は十キロ。金は一キロちょっと程。
鉄や銅は、インゴットに生成し直して、売却している。ただし、鉄は使い道が多いので、三割程は売らないで残している。
特に、農機具何かに使っている。魔法兵に持たせている農機具は、コレを使って作っている。
みんなは思うのでは無いか? 金とか銀が作れるなら、遊んで暮らせるじゃんと・・・・そんなに甘くない。金と銀の使用量が急に増えたら、金山銀山を見つけたのでは? と思われる。これは非常にマズイ。
何故なら、戦争の理由になるからだ。俺の暮らしているこの大陸、デルドグランドのあちこちで、それが理由となって戦争が起きている。
因みに、ナインテイルは、デルドグランド南部一体の地域の一つ。州に近い。デルドグランド自体、かなりデカイ大陸らしい。デルドグランド南部には、十三の地域があり、ナインテイルは比較的平和だ。
他の地域では、血み泥の戦いが繰り広げられている。と言う訳で、いざと言うときに備えているのだ。
だから、今日もせっせと頑張っている。
「さて、今日の分を持って行くか」
*****
「親方ー、いますかぁー!!」
「おつ、若様じゃねぇか。親方にようか?」
「うん、いつもの奴をね」
「あぁ、アレですかい。待っててくだせぇ」
街にある鍛治屋にやって来た。俺が親方を呼ぶと、二人の若者鍛治士が出迎え、片方が親方を呼びに行った。
「親方ー!! 親方ーー!!!」
「うっせぇー!! 聞こえとるわぁ!!」
奥から野太い声が聞こえて来た。ノソノソと、子供くらいの背丈の髭もじゃのおじさんが、頭をポリポリ掻きながら出て来た。
「あぁん?! 何だ坊主か」
「親方、坊主はダメですよ。ご領主様の御子息ですよ」
「はあぁぁぁん?! 坊主は坊主だろ?!」
「別にいいよ坊主でも」
「ほら、坊主もそう言ってるだろうが!!」
「ハァー、もういいです」
弟子の鍛治士は諦めたように、ため息を吐いた。
「でっ! 坊主! 何の用だ!!」
いちいち声がデカイ。もうちょっと音しぼって!
「いつ物やつ、持って来ただたけだよ」
「おう! 悪ぃーな!!」
だから、声大きいって! 耳がキーンてなるでしょ!
「じゃあハイ、いつ物やつ」
近くの頑丈そうな机に、鉄のインゴット一キロを、三十個程取り出して置いた。
「おぉー! すまんな坊主! ・・・・それにしても、『キーーン』うむ、コレだわい!! いい鉄だ!!!」
親方は太い指で、鉄のインゴットを手に取り、インゴット同士を軽くぶつけて音を聞き、鉄の良し悪しを判断した。
とても良かったのだろう。耳を塞ぎたくなる程の大声で、喜んだ。
「もう、親方は声がデカすぎ!! 鼓膜が破けるかと思ったよ」
「だあーはっはっはっ!! 悪りい悪りい!!」
だからデカいよ!
「にしてもよぉー、この鉄のいい音色よぉ。こんないい鉄は、そうそうお目にかかれないぜ!!」
「そりゃどうも」俺が作った鉄だけど・・・・」
「おう、おめーら!! 仕事に戻るぞぉ!!」
「「へーーい」」
「じゃあーな坊主!! だぁーーはっはっはっは!!!」
「「若様、失礼します」」
「うん、仕事頑張ってねぇ」
俺は鍛治工房を後にした。因みに、鉄の代金は貰ってない。その代わり、格安で鉄製品を作ってもらっている。タダで生み出した物が、領地領民の為になるので、別問題ない。
それにしても親方・・・・声がデカい!!
あうぅ・・・・耳がキンキンするなぁ。弟子の人達はよく平気だな。
さて、鉄も届けたし・・・・帰るか。
俺は足早に、屋敷へと帰った。