未来の為の農業
「さてと、今日は畑に行くかな」
「お城の建設は良いのですか?」
「父さんの言う通り、お城にはお金が掛かる。建設費用だけじゃ無くて、維持費もバカにならない。だからこそ、金を儲けないと」
「若様、商売でもする気ですか?」
「正確には商売になりそうな物を作る事かな」
オットーを連れて畑へ。ここは、屋敷がある街の近くに作った俺専用の畑だ。
「さて、どうかな? おっ、それなりに育って来てる!」
「妙なものを、沢山育ててますね」
「妙とは何だ! 妙とは! ここにある作物が、この領地の助けとなるんだぞ!」
「はあー」
まったく、これだからオットーは! この世界は、麦に依存し過ぎている。だから、病気や天候不良によって、簡単に打撃を受けてしまう。だからこそ、麦以外の主食になる物が必要なんだ。
そして、俺は見つけた。そう! それは・・・・米! とうもろこし! 大豆! 更にはジャガイモやサツマイモまで!
正直、森やその辺に、普通に生えていたのを見つけた時は驚いた。何故誰も、食べようとは思わなかったのだろうか?
得体の知れない物だからか? それとも、食にこだわりがないからか? まあ、良く分からんが、あまりこの世界のご飯は美味しく無い。それに、単純に食べれる物が少ない。
「こっちも順調順調と!」
今は、季節で言うと夏の終わり頃、米と大豆はもうすぐ収穫になる。その前に、収穫を迎えた物・・・・そう! とうもろこしだ!
「おぉー、大きく実ったな! おし! 収穫するぞ! オットーも手伝え」
「あの、私は護衛であって、農夫じゃありません」
「何、文句あるの? 忠義を、誓った癖に」
「うっ、分かりました。やりますよ」
「それでよし! それにしても、遅いな?」
「誰がですか?」
「カル達」
「あぁ」
「仕方ない、来る前に収穫してまおう。オットーも手伝ってねぇー」
「ハァー・・・・はい、やりますよ」
オットーと一緒に、とうもろこしを次々ともいで収穫していく。ここには、約五百本程植えてある。今回は食べる分だけだ。
うん、とうもろこしの粒も、中々大きく実ってる。一本あたり、粒の量もそれなりだ。最低でも、二百粒くらいかな?
「本当に食べれるのですかコレ?」
「食べれるよ。そして、美味しい」
「本当に?」
「本当に!」
「おーい!」
「あっ、カル達が来た」
「悪い遅くなった」
「今、始めた所だから。みんなも収穫手伝ってね」
「「「「はーい」」」」
「ジーク、コレって食べれるのか?」
「食えるから安心しろ」
☆☆☆
「さて、後は茹でるだけ。カーネルさんお願い」
「はい、若様」
農夫のおじさんが、大きな鍋を運んで来た。彼は農民のカーネルさん。俺が見つけて来た作物の、管理をやってもらっている。決して、カーネルでサンダーな人では無い。
「葉と毛を綺麗に取った奴を、投入して、水を注いでと。後は火かけて、茹でるだけと」
「コレで美味しくなるのか?」
「いいから黙って、待ってろってカル。美味しいのが出来るから」
「ジーク様は、何故この様な物を育ててるのですか?」
疑問を投げかけたのは、青髪の少女だった。彼女がレメーネだ。母さんの護衛として来た、ライネル・サー・スタルツの娘。父親譲りの、青空のように青い髪が特徴的だ。
「何でって、色々考えてかな?」
「色々考えてですか? ・・・・そう? 何ですか」
「そう言えば、レメーネの家って、土地持ちになったんだろ? 良かったじゃん」
カルが腕を組みながら、ニカッと笑顔で祝福した。
コヤツ・・・・レメーネに気があるな。
「はい、ジーク様のおかげと聞いてます。ありがとうございます」
「開拓したのは俺だけど、そう決めとのは父さんだから、別にお礼とかいらないから」
「だとしても、ありがとうございます」
ふわりと青い髪をなびかせ、レメーネは綺麗に一礼した。
そして、俺は見逃さない。カルが見惚れていたのを!
やはりコヤツ・・・・惚れておるな。
「若様、そろそろいいでないか?」
「そうだね。うん、いいと思う」
カーネルさんが鍋の蓋を開ける。俺は、長箸でとうもろこしを取り上げる。
「若様、なんですかソレ」
「ん? コレ? 箸」
「はし? ですか。 指で挟んで・・・・よくそれで掴めますね」
「慣れかな。あっ、オットー。皿とって!」
「あっ、はい!」
木製の皿に茹でたとうもろこしを、次々と載せていく。熱々なので、湯気がとうもろこしから立ち上がっている。
「熱いから気をつけてな」
「あっちー!!」
「いや、だから熱いって言っただろ。カル」
「悪い悪い。でも、熱すぎて食え無いぞ」
「ちょっと冷ますか。えーと、クールウインド」
そう唱えると、涼しい風が、とうもろこしに吹き当たる。
「涼しい・・・・ジーク、コレたまにやってくれ」
「自分で覚えろ」
「ジーク様は、この様な魔法まで」
「一応、各系統の魔法の初歩は習ったから」
「わたくし何て、まだ一つの系統しか出来ません」
「魔法は慣れだから、その内出来る様になるよ。それより、冷めたから食べよう」
ムシャリと、とうもろこしにかぶりつく・・・・うまい!
甘さも中々。うむ、上出来! コレ、地球でも通用するだろ。
「うめー! 何だこれ!」
カルは恐る恐る食べたが、うまいと分かると、無心でかぶりつき始めた。
「これは!」
「うめーだ!」
オットーとカーネルさんも、感嘆して更にもうひと口。顔が綻んでいる事から、かなり気に入ったようだ。
「美味しゅうございます! ジーク様!」
「それは良かった」
「若様、こでは何て言うだか?」
「コレの名前? コーンだよ」
「コーン、うめーだ」
「若様のおっしゃる通り、このコーンは、領地に莫大な利益となる筈です!」
「だろ。さて、半分は来年の種として残すけど。残りは食べるようだな。みんなもお土産に、何個か持って行っていいから」
「「「「「本当に?!」」」」
「あっ、うん。一人五個までね」
「「「「「はい!!」」」」
みんな、どれが一番いいかと、見定める様にお待ち帰りようを選んでいた。これが食の力。人類は、食と共に進化した様なもんだ。今後もさらにうまい物を・・・・ふっふっふ。
帰宅後。
「ジーク! これは何だ!」
「コーンだけど」
「コーン! うまい! うまいぞジーク」
「ジークちゃん、いつの間にこんな物を育てていたなんて、それにしても美味しいわ」
両親からも、とても好評価だった。
「あうーー!」
「リィーナはもうちょっと大きくなってからね」
コーンは消化しにくい。一歳のリィーナにはまだ早い。
「あううーー!!」
よこせと言わんばかりに吠える妹に、癒される夕食時だった。