アブスト滞在 その1
「わぁーー!! 大きな街だねぇー!!」
「そうだろう! 我が家の城も大きいぞ!」
「へぇー、楽しみ!」
アブストの街を、馬車に揺られながら見物する。人口一万なだけあって、かなり大きな街だ。商店が立ち並び、とても活気がある。
うちの領地も、こんな風になったらなぁー。まあ、人口も増えてるし、まあいずれね?
「あっ、あれがお爺ちゃんのお城?」
「おお、そうだ。大きいだろ!」
「うーーん、うちのハウゼルの城と同じくらい? いや、ちょっとこっちの方が小さいかな?」
「そう‥‥ですね若様。ハウゼルより一回りくらい小さいでしょうか?」
「な、なんじゃと!」
うちの城より小さいと聞き、声を張り上げるお爺ちゃん。
お爺ちゃん。小さい物は小さいの。ハウゼルの城を作った、本人の俺が、アブストの城の方が小さいって言ってるんだから。
そうなの、認めてよね。
「むむむっ! これは一度、見に行かなければな」
「うん。是非来てお爺ちゃん!」
「うむ」
「あら、私は?」とおばあちゃんが横目で見ながら言ってきた。
‥‥‥あーーうん。
「おばあちゃんも!」
「えぇー、勿論行くわ」
そんなこんなで会話していると。お城に到着した。ふむふむ。
作りは‥‥以外と古いな。石垣などの風化具合からして、それなりの年月をかさねた感じだ。
「お爺ちゃん。このお城って、建てられてどのくらい?」
「うむ。ざっと、二百年近くは経っとるな。わしから数えて、七代から八代前のご先祖が建てた物じゃからな」
「へぇーー、凄ーーい」
そんな前からこんな立派な城が‥‥半端ないな、母さんの実家。うちとは違う歴史の重みに、凄いの一言しかない。二百年も前にこれほどの城を建てられるという事は、昔から発展していたということ。うちとは格が違う。
母さん、よく父さんの所に嫁いで来たな。
◆◇◆◇◆
おぉー、なんかいい感じ!
城の中も、やっぱり大領地らしい装飾だ。歴史と格の違いを、まざまざと見せられた。
「凄ーーい」
「がーーはっはっは! そうであろうジークスヴェルト!」
お爺ちゃんの笑い声が、城に響く。褒められて凄く嬉しそうだ。
「あなた、まずはお部屋へ」
「おっとそうだな。ジークスヴェルト、コッチだ」
「ほーい」
お爺ちゃんの左横を、トコトコと歩く。因みに、俺の左横をおばあちゃんも歩いている。孫愛からか、左右をガッチリと固められている。
「着いたぞジークスヴェルト。この部屋で一息いれよう」
連れて来られたのは、豪華なリビングで。お客に対応するためなのか、かなり豪華な造りだった。
「おぉ、凄い」
「確かに凄いですね、若様」
うーーん、ウチの城にも豪華な部屋でも作ってみようかな? 金箔を貼って、黄金の間とかどうかな? 或いは、金剛石の間とか真珠の間とか‥‥‥。うん、辞めとこう。成金みたいで趣味悪すぎ。
それに‥‥‥‥なんか心が痛む。
「ジークスヴェルト、何をブツブツ言っとる。どうかしたか?」
「うんうん。なんでもないよ、爺ちゃん」
考え込んでいると、爺ちゃんに心配された。失敗失敗。
壁の方を見ながらブツブツ言うのは、さすがに自分でも怪しいと思う。‥‥‥‥気をつけよう。
見事な装飾の椅子に腰かける。作りは凄いけど‥‥‥座り心地はイマイチだ。ちょっと固い。でもまあ、一休み。「ふう」と俺が息を吐くと、オットーが「さすがに若様も疲れましたね」と声をかけてきた。うん、始めての船旅は‥‥‥確かに疲れたかも。
「お風呂入りたい」その呟きに、何故かみんなが固まる。目を点にして、こちらを見ていて。俺としては、何か変なこと言ったかな?
と感じなのだが‥‥‥なんで? その答えを、お爺ちゃんが教えてくれた。
「ジークスヴェルトよ、お風呂とはなんだ?」
「えっ‥‥‥あっ、そうか。そこからか」
うちでは、普通にお風呂が普及したので失念していたが、この世界に風呂なんて無い。例え、お爺ちゃんちみたいな大貴族でも、基本はお湯で体を洗い、布で拭くだけ。湯船に浸かる文化や習慣そのものが無い。
「えっと、そのお風呂ってのはね」とお爺ちゃん達に懇切丁寧に教える。教えるが、みんな「ふむ?」といった感じに首を傾げた。
そう簡単に、理解してもらえないとは思う。
お爺ちゃんは「お湯に浸かる‥‥‥のう」それ必要なのか? といった感じで、おばあちゃんは「あらあら、うちにはそういった物は無いわよ?」とあたふたしていた。まあ、無い物は仕方ない。
けど、俺はお風呂に入りたい。数日間、海に揺られて潮風でベトベトだ。湯船に浸かってさっぱりしたい。
だから、無いのであれば、作ればいい!! である。
ふっふっふ、材料はたくさんあるから問題ない。石造りでも、木造りでもいける。我が魔法兵達にかかれば、あっというまに完成する。
「お爺ちゃん、おばあちゃん」
「なんじゃ、ジークスヴェルト?」
「どうしたの? ジークちゃん。なあーに?」
「お風呂作るから、井戸の近くの部屋とか空いてない? あー、それと出来ればタイル張りの方がいいかな? お風呂場にしたいから。無いなら、お風呂専用の建物作るよ?」
「「‥‥‥‥‥‥えっ? ジークスヴェルトが?」ジークちゃんが?」
「「作るの?」」
「うん!」
俺の工芸技術、見せやろうじゃないか!!
お風呂を作ると言い出した俺に、目を丸くして呆然とする二人を前に、俺は静かに燃えていた。
だって、お風呂入りたいんだもん!!




