ニューデルンへの船旅 その2
ロームの船、青き海神号にて。
「ロームの頭! 前方の島影から、海賊船二隻!」
「くそっ! 挟み撃ちか! 後ろの、ジークスヴェルト殿とアスタリッサは?!」
「ちゃんと着いて来てやす!」
「よし。しかし、前の海賊共をどうすれば・・・・」
「頭! 後ろのジークスヴェルト様の船から、手旗信号が!」
「手旗信号・・・・何と言っている?!」
「えーと。ロームへ? 前から退いて? 海賊をやっつける?
と言ってます!」
「はあぁー? 一体、何をする気だ?」
「どうします頭?」
「・・・・おし! ジークスヴェルト殿の船を! リヴァイアサン号を前にやれ!」
「「「「アイアイサーー!!」」」」
リヴァイアサン号甲板上。
「それで若様。何をしようってんです?」
「まだ、試してない兵器をね」
「それって・・・・船首にある、アレ?」
「そう、アレ! みんなぁーー!! 準備はぁーー?!」と、金属製のパイプに話しかける。伝声管という奴だ。
「「「「準備完了! 何時でも行けます!!」」」」と、船首内にある部屋で、待機している船員の声が返ってくる。
「それじゃあ、ロームに手旗信号! 前を退くよう伝えて! アスタリッサには、後ろで待機! よーーし! 二隻の海賊船に、真っ直ぐ突っ込むよ!!」
「若様!! き、危険です!!」
「大丈夫、大丈夫。オットーは心配がすぎるよ」
「敵に突っ込むと言えば、誰だって心配します!」
「いや、あくまで敵を前方に捉えるためであって、本当に突っ込む訳じゃないよ?」
「そうだとしてもです!」
「オットー。兎に角今は、海賊に集中! いざとなったら、乗り込んで来た海賊と、近接戦になるかもしれないんだからね」
「分かっています!」
アスタリッサの船、白き羽根の妖精号にて。
「アスタリッサ様! ジークスヴェルト様が前に出るようです。
我々には後方にて待機と」
「あらあら。ジークスヴェルト様ったら今度は何を見せてくれるのかしら?」
「アスタリッサ様、宜しいのですか?」
「何がですか?」
「ここは、逃げの一択では?」
「挟み撃ちされては、仕方ないでしょう。私の、私達の船・・・・白き羽根の妖精号も、ジークスヴェルト様のおかげで。強化されて、海賊船など恐れるものでは無くなりましたし」
「しかし・・・・」
「エルランド、あなたも良く見ておくといいわ。ジークスヴェルト様の規格外っぷりが分かるわ」
「はぁー?」
リヴァイアサン号にて。
「操舵手の人ーー。もうちょい右ーー! 行き過ぎーー!
そう、後ちょっとーー! ・・・・よーーーし、そのまま!!」
「まだですか、若様? このままだと・・・・」
前方から近づく二隻の海賊船。
「このままだと、正面衝突しかねない」とオットーが心配する。
「大丈夫。きっと上手くいく! 多分!」
「・・・・・・・・」
何か言え! おっ、そろそろ射程内だ!
「・・・・ハッチ開けてー! 発射準備!!」と伝声管に叫ぶ。
すると「了解でさーー」と返って来た。
船首部分から、小窓が開いて金属製の、二つの筒が突き出た。
準備は完了。後は・・・・発射のタイミングだけ。
「・・・・・・・・今だ! 発射ぁぁぁぁ、!!」
海賊船を、ギリギリまで引きつけ、発射の合図を出す。その瞬間、金属の筒から『バシュン』と何かが飛び出た。
かなりの速さで飛び出たそれは、海賊船に一直線に向かっていく。そして、バキッと木造船に突き刺さった。
島影から現れた二隻の海賊船。
「獲物だーー! それも三隻! 準備しろーー!!」
「へへっ。船長、獲物が来やしたね」
「あぁ。最近は、警戒してか、まったく来なかったからな。
絶対に仕留めるぞ。頭も喜ぶだろうぜ!」
「へいっ! ん? 船長・・・・真っ直ぐこっち来ますぜ?」
「あぁん? まさか、俺達に挑む気か? 馬鹿な野郎共だぜ。
まあ、頭が率いる三隻に向かうよりはマシか。
やるぞ野郎共ーー!!」
「「「「「「「おぉぉぉーーー!!!」」」」」」
へっ、金目の物は全部俺達の物だ。後、女が乗ってたら最高なんだが・・・・ん? 何だあの船? 見た事ない船影だな? 新型か?
「おーし! お前等ー!! あの新型の船を無傷で手に入れろ!!
そして、俺達の新たな船に・・」
「船長! 船が何かを・・・・」
「あぁん、何だって?」
『バガァーーーーン!!』「ぐおわっ!!」
何だってんだ一体? 船に何か当たった? ・・・・へっ?
「火だー! 消せーー!」
「船長ー! 船首より火が!」
「クソッ! どんどん燃え広がるぞ!」
「ど、どどどうなってやがる?」
「船長! 後方の船が!」
「よけろーー!」「無理だ! ぶつかるぞ!!」
『ドガァーーーーン!!』
リヴァイアサン号甲板。
「おぉー、当たった当たった! 良く燃えてるねぇー!」
「前の船だけにしか当たりませんでしたね」
「でも、凄い混乱ぶり。あっ、後方の船が突っ込んだ。
ありゃ、二隻共沈むね」
「若様、またとんでもない物をお作りに」
「すげぇっす。ジークスヴェルト様、マジぱねぇっす!」
海賊に向けて放ったのは、改良したバリスタ。正確には改良した矢を放てるバリスタだ。
矢には、度数99%のアルコールと、油を混ぜた壺のような弾頭をつけてある。つまり、火矢だ。威力は桁外れだけど。
燃え広がる速さが、普通の火矢とはまるで違う。ボワっと、一気に燃え広がる。消す暇など与えない。
それに、木造船はその名の通り、木で出来ている。故に、腐らないように、防腐剤としてタールを使ったりする。だから、余計に良く燃えるのだ。
「おーーし、それじゃあー逃げようか?」
「若様、そうしましょう。今なら逃げ切れます」
「ティム。ロームに先導するように伝えて!」
「了解っす!」
ロームの船、青き海神号。
「まったく、ジークスヴェルト殿は・・・・。
面白い奴だよほんと」
「ロームの頭! ジークスヴェルト様の船より手旗信号でさぁ!」
「何て言ってる?」
「前に出て、先導しろと」
「了解と送れ!」
「はいでさぁ!」
ジークスヴェルト殿は、一体これからどんな男になるんだか。
前に出る際、リヴァイアサン号の横を追い越す。その際、ジークスヴェルト殿がこちらに手を振っていた。緊張感のかけらも無い。
自分がとんでもない事をしたという自覚も感じられない。
ただただ、面白い。目が離せない。そんな存在になっている。
そして俺は思った「あぁ、これが歴史に名を残す。英雄を見た時の感情なのか」と。
アスタリッサの船、白き羽根の妖精号。
「・・・・成る程、アスタリッサ様が気にかける訳ですね」
「うふふ。本当に面白い方。お爺様にも、一度紹介したいわ」
「ルドガー様にですか?!」
「あら、貴方は反対?」
「・・・・いえ、賛成です。どうやら、ジークスヴェルト様というお方は・・・・私の常識では測れない方のようです。それに」
「それに?」
「私には、金のなる木に見えます。それも、巨万の富を生む」
「貴方も気に入ったのね」
「はい、お嬢様」
「それじゃあ! ニューデルンに向けて! レッツゴー!!」
「レッツゴー? なんてすかそれ?」




