ニューデルンへの船旅 その1
「海の上の生活も、なんか飽きてきたな」
「若様はそう言われますが、私には、とても楽しんでるように見えますが?」
軍船、リヴィアサン号の、左舷の甲板から釣り糸を垂らして、のんびりと釣りを楽しんでいる最中だ。
「だってさー、最初は楽しかったんだけどね。
所で、オットーは船酔いに慣れたみたいだね」
「さすがに慣れました。五日も波に揺られれば・・・・」
かれこれ、バルクルート領を出てから五日日。
未だにニューデルンに到着していない。
「ニューデルンって、結構遠いの?」
「いえ、そんな事はないっす」
答えてくれたのは、ロームの所で働いていた船員の一人。
二等航海士のティムだ。
「ティム、そんな事ないってどう言う事?」
「ジークスヴェルト様。ニューデルンまでは、普通三日もあれば着けるっす」
「ん? 余計に分からない。既に五日たってるんだけど?」
「潮流の関係っす。俺達は、潮流に逆らって進んでるっす」
「あぁー、そう言う事」
距離的な話なら、二日だが。潮流に逆らって進んでる俺達は、言うなら川を無理やり遡るようなものだ。そりゃあ、時間がかかるわな。
「はいっす。それと、もう一つあるっす」
「もう一つ?」
「はいっす。海賊っす! 海賊に警戒して、かなり迂回しつつニューデルンに向かってるっす。そのせいっす」
「海賊かぁ」
まあ、そうだろうな。海賊対策に武装してるとは言え、わざわざ海賊に向かって行く必要は無いな。危ないから。
ただ・・・・海賊狩りも面白そうではあるけど。
「若様、危ない事はやめて下さいね」
「な、何も考えてないよオットー!」
「そうですか? 何かをしでかす前の顔をしていたものでつい」
しでかす前の顔って何? どんな顔だよ!
「それにしても・・・・釣れないなぁー」
「そう言えば、さっきから何を釣ろうとしてるっすか?」
「さあ? 取り敢えず、釣り糸を垂らしてみただけ」
「はあー? ・・・・若様って、変わってるっすね」
「ぶほっ」
ティムに変わってると言われ、それを聞いたオットーが、思いっきり吹いた。コイツ・・・・減俸にしてやろうか?!
そんな時だった。凪いだ波、青い空。ほぼ、バカンスを楽しんでるくらいの気分の時だった。
「海賊だーー!! それも、三隻!!」
「えっ、海賊? どこ? どっちの方から?!」
「あっちっす! ジークスヴェルト様! 右舷のほうっす!」
「右舷?! オットー行くよ!!」
「は、はい!」
右舷に移動し、身を乗り出すように遠くの海上に目を凝らす。
船が数隻、接近して来るのが分かった。
「海賊船・・・・どうしうようかオットー?」
「逃げの一択です。若様、お約束を覚えていますか?」
「覚えてるよ。ニューデルンに行く事を許す代わりに、危ない事はしない。でしょ?」
「はい。なので逃げの一択です!」
「まあ、約束だし、分かったけど。危険方が・・・・向こう方から来た時は?」
「・・・・えーと、それはですね」
オットーは言い淀む。危ない事をしなくとも、危険の方から寄って来た時はどうしようもないじゃん。
「兎に角、戦闘態勢をとりつつ・・・・逃げる!」
「「「「「了解!!」」」」」
「ロームとアスタリッサの船にも連絡して!」
「任せてほしいっす!」
船上が慌ただしくなる。この船だけではなく、ロームとアスタリッサの船も同じくだ。ロームの船が先行し、俺の船、そしてアスタリッサの船が続く。
さて、海賊船はどうだ?
望遠鏡片手に、海賊船に目をやる。何やら海賊船の方も、人が慌ただしく動いてる。小さな点にしか見えないけど。動いてる。
「ティム! どんな感じ?!」
「どうやら、船足はこちらが上っす! このままいけば、引き離せるっす!」
「よし!」
「どうにかなりそうですね」とオットーが俺の隣りで、安堵の言葉を漏らした。
オットー君。それはフラグかね?
「前方、島の影から二隻! 海賊の待ち伏せだ!」
「オットーの所為だよ」
「なんでですか!」
これは・・・・「やるっきゃないね」
「若様! 危険な事は!」
「オットー、さっき言ったでしょ。危険の方からやって来たら、どうしようもないよ」
「くっ、仕方ありません」
「おーーし! みんなやるよーー! ロームとアスタリッサにも連絡してー!」
「「「「「「はい!!」」」」」」
指揮は高いし。武装もこちらが上。うん。負ける気がしないね。




