大海原へ その1
「うわーー! 風が気持ちいなぁーー!」
「そうだろ、ジークスヴェルト殿。それにしてもこの船。
足もなかなか速いな」
「そうなんだ?」
「設計したのはジークスヴェルト殿だろ?」
「設計と呼べるものでもないんだけど。殆ど、ドワーフ達のおかげだしね」
進水式から二週間後。今日は、ロームの商船の船員を借りて、新造した軍船で海を散歩中だ。
「うーーーん! やっぱり海はいい・・・・」
「おぇーーー!!」
「・・・・・・・・」
護衛に着いて来たオットーは、船酔いによりダウンしていた。
「大丈夫オットー?」
「大丈・・・・おぇーーー!!」
「・・・・・・・・」
「ジークスヴェルト殿。あまり見ん方がいい。うつるぞ」
「・・・・そうだね」
ロームにそう言われて、視線を海に戻した。実は、ちょっと酔ったぽい。吐くほどではないけど・・・・うん、ちょっと気分がすぐれない。まあ、風が気持ちいいから何とか頑張れる。
「ジークスヴェルト! これ凄いわ!」
「分かったから揺さぶるな」
何故かレミーシャが乗り込んでいる。何で着いてきた?
それと、さすがに危ないからと「ジークスヴェルトよ。凄いなこれは!」爺ちゃんも着いてきた。ただ、乗りたかっただけな気もするけど。
騒がしい二人は、ロームに任せ。俺達の後ろで、優雅な立っている女性に話しかけた。
「アスタリッサ」
「あら、ジークスヴェルト様。どうかいたしましたか?」
「うん。ちょっとね。アスタリッサに任せた件て、どうなってるかなぁーって?」
「大丈夫です。ご心配なく。バルクート領の若い漁師を、立派な船員にしますから」
「うん。お願いね」
アスタリッサには、募集に集まった若い漁師達を鍛えてもらっている。これは、ロームにもしてもらっている。いずれは、バルクート領に海軍を創設するつもりだ。まだ、三十人といないけど。
「あっ、そうだ。アスタリッサと、今度取引する物についてだけど・・・・」
「ジークスヴェルト様! 何でしょう!」
商売の話しになった途端、アスタリッサが目を輝かせる。美人な顔が余計に美人に。ちょっと、ドキドキしてしまう。
しかし、そんな俺を・・・・「ジークスヴェルト! 何、鼻を伸ばしてるのよ!」とレミーシャが俺のほっぺを抓る。
「いひゃたたたた! れみーひゃ! つねるは」
「あら、凄い伸びるわ! それに柔らかーい!」
俺のモチモチほっぺを気に入ったのか、これでもかと引っ張ったり、揉んだりと。俺のほっぺは弄ばれた。
もう・・・・お嫁にいけない。
「あら、楽しそうですわね。では、わたくしも・・・・」
何故か、アスタリッサも参加してくる。アスタリッサは、優しく俺のほっぺを堪能した。
ふむ。良きにはからえ。あーー、いい匂いがする。アスタリッサの指の感触・・・・。逆に俺も堪能する。
「また鼻が伸びてるわよ!」
「いひゃーーーい!」
レミーシャから解放され、赤くなったほっぺをさすりながら。
アスタリッサと商談について、話しを戻す。前回に、独占交渉件についてだ。
「痛ててて。レミーシャの奴、思いっきり引っ張りやがって」
「とても仲が宜しいですね」
「いや、良くないから」
「あら、まあまあ」
何か、とても可愛いものを見る目で「うふふ」と笑うアスタリッサ。いや、本当に良くないからね?
「えーと、アスタリッサ。今度の商売で、独占交渉する物についてなんだけど」
「はい、何でしょう?」
「コレとかどうかな?」
そう言って、俺はポケットに入っていた物を、アスタリッサに見せた。
「まあ! コレは一体・・・・貝? でしょうか?」
「うん。貝を加工して作った、カメオだよ」
「カメオ?」
俺が見せたのは、分厚い貝殻を浮かし彫りして作った、昔ながらのカメオだ。今ではと言うか、地球では、多くの物が大理石などになっているが、昔は貝で作る物だった。長く生きた貝は、大きく厚みのある貝殻になるので、カメオの材料として、とても珍重された。しかし、今では乱獲により採れなくなり。代替品として、大理石などに置き換わっている。
「カメオ・・・・と言うのですか? とても美しいですね。貝にこの様な細工を施すなんて・・・・」
「そのう、モデルにしたのはアスタリッサなんだよね」
「わたくしなのですか? ・・・・うふふ、ジークスヴェルト様には、この様に写っているのですか?」
「えーと、まあ」
カメオには、アスタリッサの横顔が彫られている。まるで、女神の様に。実際、アスタリッサはそれだけ綺麗だし。それに、カメオは大体、女神なんかが彫られてるから・・・・。
そう言えば・・・・この世界には女神っているのかな? 俺を転生させてくれた神様は、男だったけど。他にも神がいるような事言ってたし。いるのかもな。知らないだけで・・・・。
ふと、転生前の神の事について思い出していると。
「ジークスヴェルト! これ何よ!」と、カメオを見たレミーシャがやって来た。
「レミーシャ様。カメオと言うらしいですよ?」
「カメオ? へぇーー綺麗! ジークスヴェルト!」
「いや、あげないよ?」
「なんでよ!」
「なんでよって、コレはアスタリッサにあげる物だから」
「むーー!」
「まあ、頂いても?」
「うん。お世話になってるから」
「ありがとうございます。ジークスヴェルト様」
「おい、俺にはないのか?」
アスタリッサとの会話を、チラチラと見ていたロームが割って入ってきた。
さすがに、ロームの顔を彫るのはやだな。野郎の顔を彫るなんざ、趣味では無い。なので・・・・。
「ロームには・・・・無い」
「おい、酷くねぇか? 扱いがよー!」
「男には厳しく! 女性には紳士に優しくだよ。ローム」
「ぬう、ガキんちょの分際で・・・・」
「ジークスヴェルト! 私には無いの?! 私にも寄越しなさい!」
「はいはい。そう言うと思って、作っておいたよ。はい」
「わあ!!」
レミーシャが絶対欲しがると思って、一応用意しておいた。
「まあ! こちらも美しいですわ。ジークスヴェルト様」
アスタリッサのカメオとは、デザインが違う。アスタリッサに渡した物は、アスタリッサがモデルだが。レミーシャに渡した物は、人物の顔はいれずに、薔薇をあしらったデザインになっている。
ピンク色の貝殻と、とてもあっていて綺麗にできた物だ。
「わぁぁぁぁ!! はっ! ゴホン! ・・・・まあ、ジークスヴェルトにしてはやるわね」
「そりゃ、どうも」
「おぉ、コレは・・・・リーファも欲しがるだろうな。見事な細工だ」
「おばあちゃんの分なら、母さんに預けてあるから。きっと今頃、お茶を飲みながら、キャッキャウフフしてるんじゃない?」
「がぁーーはっはっは。そうであろうな、きっと!」
「うん。あははは」
爺ちゃんと、母さんとばあちゃんがキャッキャウフフしている所を思い浮かべて、思わず笑ってしまう。きっと盛り上がっているだろうな。
船の甲板で盛り上がっているそんな時だった。マストにある見張り台にいた船員が声をあげた。
「海賊だーーー!!! 東の方から、海賊がくるぞーー!!!」
ま、マジか!




