軍船建造 その3
「親方の娘・・・・」
「はい! よろしくお願いします!」
「うん・・・」
いい子だ。それに可愛い。ノノンは、栗毛に三つ編み。クリッとした目。鼻の上にそばかすのある元気っ子といった感じだ。・・・どうやったら、あのムサイ髭面オッサンからこんな子が・・・・いや、親方から産まれた訳じゃないし。
あっ、お母さん似・・・・いや、お母さん・・・・親方の奥さんの女将さんとも、似ても似つかない気が・・・・。
「あの・・・・どうかしましたか?」
「うんうん、なんでも無いよ。所で、君は・・・・ノノンは何しにここに?」
「あっ、はい。母さんが父さんを見張っておけと言うもので。
それで着いて来たんです」
「そう、なんだ」さすがは女将さん。と言った所なのだろうか。
けど・・・・正直女将さんも、親方の女性版と言うイメージしかないのだけど。
豪快に酒を飲む女性、そんなイメージなのだ。親方と一緒に、あげたお酒を飲む姿を何度も見ている。この子もいずれ、あーなってしまうのだろうか?
「兎に角、よろしくね」
「はい!」
その後、オットーとノノンの三人で、夕方まで一緒に見学して帰った。帰ったら帰ったで、荷物を運んでもらう手筈を整えるはずが、何故か船の建造を始めた事で、父さんに怒られた。
父さん曰く「何がどうなったら船の建造になるんだ!」との事。
俺はそれに対して「海賊対策」の一言で何とか乗り切った。
いや、乗り切ってはいないか?「ばかもん!」の雷がおちたから。
でも、正直。城の建設より、遥かにマシだと思うだけど?
母さんだって「まあまあ、あなた。ジークスヴェルトなんですから仕方ないわ」と言ってホローしてくれた。
・・・・いや、ホローされて無いよな? 諦められてるのでは?
取り敢えず、父さんに軍船の建造を認めてもらい。次の日から、ドックに足繁く通った。
『コンコン! カンカン!』
「板が足りねぇーぞ! もっと持ってこい!」
「おいそこ! 足元気をつけろー!」
「ここがこーなって、そこがあーだろ?」
「だから、こーでねぇですかい?」
「親方ー! ちょっときてくんなぁーー!!」
「おぉー! 今行くー!」
・・・・朝から元気だなぁー。
朝早くから、造船ドックに見学に来ている。今日で、軍船建造から二週間が経過した。すでに、船体は出来上がりつつあり、ドワーフ達の卓越した技術の高さが良くわかる。
「すんごいなぁーー。もうここまで・・・・」
「ドワーフ様様ですね。若様」
まったくだ。全長40メートルある造船ドックに、ギリギリおさまる規模の大型帆船。これが海を駆ければ、海賊なんて屁でもない筈・・・・大砲が無いのが残念でならない。船体側面には、大砲撃つ際に開ける小窓のような物が、左右に十箇所ある。大砲の代わりに、バリスタを搭載予定だ。
「ちゃんと浮かぶかな?」
「どうでしょうか? ドワーフの作る物ですから・・・・安心して大丈夫ではないでしょうか?」
「うーーーん、そうだね。オットーの言う通り、ドワーフの作る物なら大丈夫か」
「うんうん」と一人納得していると・・・・。
「ジークスヴェルト様!」
この声は・・・・「ノノン」
「はい! おはようございます! ジークスヴェルト様!」
「おはようノノン」
親方の娘、ノノン。最近、ドックにお邪魔するたびに、一緒になる。ドックの隅っこで、ぼーーっと見学していると。何故か俺の横に、いつの間にか居るのだ。居る以上、話したりする訳で・・・・なんか仲良くなったのだ。
「今日も見張り?」
「はい。お母さんから頼まれました」
嘘です。頼まれていたのは最初だけです。今はその・・・・若様とお話ししたくて来てます。
私はノノン。ドワーフ工房の親方ゴルドンと、母ノリンの娘。
私達ドワーフは、元々ナインテイルに住んではいませんでした。
お隣りの、テンネイス北部出身です。ドワーフは鍛治や大工などなどの職人が多いです。なので、戦争では重宝されます。テンネイスに戦火が訪れ、私達は否応なく、仕事をさせられました。強制的にです。
ドワーフは頑固者が多いので、怒ったお父さんのゴルドンが、ドワーフの仲間達を引き連れ、テンネイスから脱出をはかり。そして、この地にたどり着きました。この領地の領主様は、私達を快く受け入れてくれ。もう、ドワーフの技術を得ようとする者達から、逃げなくてすむと、あの時は皆、本当にホットしていました。
この領地に慣れ、毎日自分達の好きなように仕事をしていたある日でした。領主のご子息、若様が突然やって来たんです。最初は、
何か無茶な事を要求されるのかと思っていたら。若様はとても質の良い鉄や銅など、金属のインゴットをくれたのです。鍛治士にとって、金属は欠かせない物です。しかも、最高品質の物をです。
若様はドワーフ達とって、神様です! それに、若様は錬金魔法なる物で、剣を作ってしまうんです! ドワーフの制作する、一級品と遜色ない、いえ、それ以上の物を作ってしまうんです! それだけじゃないんです! クロスボウとか、投石機とか、バリスタとか・・・・兎に角もう・・・・凄いんです!
私は基本、工房の奥にいたので、若様と会う事はありませんでした。こそっと覗いて、お顔は見た事がありましが。ある日、若様が来られて、船の建造をしたいと仰り。父さん達がやる気になってしまい、工房から飛び出して行きました。お母さんと、呆れながらそれを見ていると。お母さんに「お父さんがやり過ぎ無いよう見張ってなさい」と言われ、造船ドックに行きました。そこで、若様と初めまして顔を合わせました。
若様はとっても、かわいい子供でした。あんな凄い発想をする人なのに・・・・見た目はかわいい子供です! 所で・・・・若様は私を年下のように扱うのです! 言っておきますが、私、若様より四つ上ですからね! お姉さんですよ!
作業終了後、ドックにて親方との会話。
「えっ! ノノンて俺より年上なの?!」
「ん? なんじゃ言っておらんかったか? つうか分かるだろ?」
「聞いてないよ親方! と言うか! あの見た目じゃ分からないっての!」
どうやら、ノノンはお姉さんだった。どうしよう、思いっきり年下のつもりで扱ってた。
「オットーは気づいてた?」
「いえ、若様より二、三才は下と思ってました」
「だよねえ」
少し離れた場所で、帰り支度をするノノンに視線を向けつつ。
「ドワーフは、見た目で分からない」そう思った。




