支援物資を送ろう
爺ちゃん達が暮らすクラメルから、帰って来て十日後の事だった。父さんの治めるバルクート領に、激震が走ったのだ。
それは・・・・。
「ニューデルンで戦が?!」
「あなた・・・・」
「大丈夫だ、シエナ。軽い衝突程度だったらしい。お義父さんも無事だ」
「ならいいのですが・・・・」
ニューデルンは、母さんの旧姓。つまり、母さん故郷の領地。
そこに、戦火が迫っていると手紙が届いたのだ。
「ウォルター爺ちゃん大丈夫かな? 会った事無いけど」
一応、心配ではある。正確には、会った事はあるのだが・・赤ん坊の頃なので、それを言える訳ない。
「ジークちゃん。お爺ちゃんとは、赤ちゃんの頃に会ってるのよ?」
「そうなの?」と、とぼけておく。
「シエナ。赤ちゃんの頃に会った事を、覚えてる訳ないだろ?」
「まあ、そうね」
・・・・思いっきり覚えてますけど。それにしても、心配だなぁー。どうにかして、ウォルター爺ちゃんを助け・・あっ、そうだ!
「クロスボウ送ったら?」
「クロスボウをか? ふむ、良いかもしれんが・・・・どうやって?」
「船で運べば? ニューデルンって、確か港があったよね?」
「確かにあるな港。お義父さんがここに来た時も、船だったからな」
「そうね。それなら早くたくさん運べるわね」
父さんと母さんも、船なら問題ないと同意した。でも・・・・。
「うちに船は無いから、誰かに頼むしかないよね?」
「まあ、そうだな。でだ、ジークスヴェルト。誰か心当たりはないか?」
「あるけど・・・・うーん」
「なんだ? ダメそうたのか?」
「いや、そうじゃなくて・・・・たんに、引き受けてくれるかなと思ってさ。それに、クロスボウは出来るだけ秘匿したいから」
「うむ。まあ、そうだが。それを言ってたら、爺ちゃんを助けてやれんだろ?」
「そうなんだよね」
「ジークちゃん」
母さんが、心配そうにこちらを見てくる。背に腹は変えられない。
「知り合いに頼んでみるよ」
「あぁ、頼んだ」
「お願いねジークちゃん!」
「うん」
・・・・と言う訳で「荷物をニューデルンに届けて欲しいんだ」
「「ニューデルンに荷物・・・・」」
今日は、領地唯一の港で、商船を持つロームとアスタリッサの二人に、クロスボウをニューデルンに届ける相談をしていた。
「うーーん、荷物つ運びねぇ」
「やっぱりダメかな? ローム」
「ダメと言う訳じゃ・・・・」
「そうですね。代金を貰えれば・・・・ただ」
「ただ?」言い淀むアスタリッサに、視線を向ける。僅かだが顔に、不安のようなものが見えた。
「ジークスヴェルト様もご存じだと思いますが、ニューデルンは現在、戦争に巻き込まれつつあります」
「うん。母さんの出身領地だから知ってるけど。それで?」
「あぁーそれでな、海の方でも、海賊が良く出るようになってるんだ」
「「海賊!!」」
答えたロームの内容に、衝撃が走る。
「えっ、オットー。そんな話し聞いた?」
「いえ、海賊の話しは初めてお聞きしました!」
海賊・・・・まさか、海を封鎖して、物資の遮断を・・・・。
「ローム。もしかして、海賊を誰かが雇って?」
「・・・・あぁ、だろうな。俺の商船は海賊くらい屁でもねぇが。他の商船は無理だろうな」
うーーん、さすがに危険な海域に行って欲しいとは言えないな。
「ジークスヴェルト様、私の商船も大丈夫ですが・・・・危険を冒してまで、運ばなければならない物なのですか?」
「それは・・・・」うーーん、爺ちゃんの領地を助けるためには、必要な物だ。けど、二人を危険に晒すような事は・・・・正直躊躇う。
どうにかして、危険を最小限に・・・・危険を最小限。となると、海賊船をどうにか・・・・海賊船、船? 船!
「ん? あっ! そうだ! アレがあった!」
「お、おい、どうした急に?」
「ジークスヴェルト様?」
突然立ち上がる俺に、ロームとアルタリッサが驚く。
「アレだ! アレを使えば!」
「ジークスヴェルト様、落ちついて下さい!」
「オットー。俺は至って落ち着いてる!」
「どう見ても、興奮なさってると思いますが?」
オットーの冷静なツッコミは流しつつ、俺は思考する。
でもアレは・・・・まだ試作も試作の未完成品。上手くいくのか? でも、無いよりは・・・・。
「おい? 本当に大丈夫か?」
「ジークスヴェルト様?」
「あっ、ごめん。考え事してた」
「「考え事?」」
「うん」しかし、アレの事を言うべきか? んーー、海賊退治にはいいと思うけど。そもそも、作れるだろうか? まだ、模型なんだよねぇー。
「その考え事ってのは・・・・一体なんだ?」
ロームが、何やらワクワクした顔で聞いてくる。
「ジークスヴェルト様の事です。きっと凄い物なのでは?」
アスタリッサも、クスクスと微笑みながら、こっちをチラチラと見てくる。
「えっとねーー。考えていた事は、船なんだ」
「「船?」」
「そう、船」
二人は俺の船発言に、顔を見合わせ、首を傾げた。
「あっ、今なんか心配したでしょ! ただの船じゃないんだからね! よいしょっと」
「なんだこいつは!」
「まあー!」
長机の上に、俺作の船の模型が置かれた。従来の木造船とは違う作りに、二人は目を丸くした。
「驚いた、なんだこの船は! と言うか、何処から出した?」
「それは企業秘密です」
何せ、俺もら分からないし。収納魔法とも違うんだよねコレ。
魔法兵が採取した物、及び俺が錬金魔法で作った物だけが、出し入れ自由と言う、設定だと言う事は分かっている。
「・・・・ジークスヴェルト様、この模型の船は何処に?」
「まだ無いよ。模型の段階だし」
「はあー、そうだよな。港には無かったし、造船ドックも無い。
・・・・ん? だったらどうするんだ? 模型じゃ意味ないぞ?」
「これから作る」
「「はい?」」
「だから! これから作るの!」
「「・・・・・・・・」」
あっ、なんか凄く不安そうな。いや、と言うか諦れた顔してる。
むうーー、やったるからな!




