投石機
クロスボウ部隊の訓練を始めてから三週間後。
「ほらー! 順番にー! 矢を番えて準備してー! 慌てなーい!
ゆっくりー! 確実にねー!」
今日も、実戦さながらの訓練に励んでいた。
「ふむ、若様よろしいですか?」
「ん? どうかしたジィ」
「何故、クロスボウを撃つ者と、矢を番え準備する者に別たのです?」
「うーん、最初は撃ったら後ろに退がる! の方法をとってたけど。矢の命中率があまり良く無くて・・・・。だったら、命中率が高い人を撃つ事に専念させて、それ以外の人は、矢を番える準備に専念させたんだ」
当初は、信長がもちいた三段撃ちをやってたけど。どうやら、合わなかったようだ。そこで、狙撃手と弾込め係を別けたのだ。これにより、命中精度と、次々と矢を放つ回転率の両立に成功した。
「成る程、さすが若様ですな。それに、魔法兵の連携も、日に日に良くっていっておりますし」
「まあね。今回の訓練は、クロスボウ部隊の訓練だけじゃなくて、実は魔法兵の訓練も兼ねてたんだ」
「さすが若様! クロスボウ部隊を鍛えるだけでなく、己まで・・・・ジィは感服いたしまぞ!」
「そりゃどうも」
「ですが、どうしてまたそのような?」
「別に深い意味は無いよオットー。ただ、こんな演習まがいの訓練じゃないと、魔法兵の部隊運用訓練なんて出来ないから」
「確かにそうだと思いますが・・・・」
「さて、今日はこのくらいにしようか。みんなー! お疲れさまー! そうだ、暫く訓練は休みにするねー! そろそろ、畑仕事が忙しいだろうし。じゃあ、解散!」
「「「「「「お疲れしたー!」」」」」」
「さてと・・・・これからドワーフさんの所に行くけど。ジィはどうするの?」
「わたくしはそろそろ失礼致します」
「ジィも忙しいね。オットーが着いてるからまあいいけど」
「オットー、若様を頼んだぞ」
「はい!」
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「それで若様、ドワーフの鍛治士に何用ですか?」
「頼んでおいたのが完成したらしいから見にね」
「あーーぁ、アレですか?」
「そう、アレです!」
「どうだ? 良い出来だろ?」
「おぉ! さすがドワーフ!」
「コレが若様の頼まれた物・・・・」
「そう、投石機だ!」
クロスボウと並行して開発していたのだが、中々納得のいく物が出来なかったらしく。クロスボウより、開発が遅れていた。正直、ドワーフさん達の職人魂を舐めていた。
「試射はまだだよね?」
「まあーな。その辺で撃つ訳にはいかんからな」
「だよね。明日にでも試射してみようよ。クロスボウの訓練は休みにしたから、あの広い草原が使えるよ」
「おう、あの場所ならいけるな。よっしゃあー、明日は投石機の試射と行こうや!」
「うん。あっ、コレお礼ね」
俺は、ドワーフと言う種族にとって、最大の感謝と受け止められる物を、ドワーフさん達に渡した。まあ、何かは分かると思う。
ドワーフと言えば? 勿論・・・・。
「酒かっ?!」 ・・・・お酒である。
酒の入った小樽を渡すと、奪いとるが如くの勢いで、それを受け取った。
「ぐわっはっは、コレを貰えれば文句は無いわい」
ほんと、チョロいドワーフだな。酒好きにもほどがあるよ。
「はあー。じゃあ、明日ね」
「おう! 明日たな」
次の日・・・・。
「なんでこんなに人が・・・・」
「こん物運び出したら、そりゃあーなー」
「それもそうか」
投石機の試射をするため、クロスボウ部隊の訓練場となっていた草原に来たのだが。何故か、ギャラリーがたくさん・・・・。
「・・・・見物客が多いけど、さっさと撃っちゃおう。じゃあお願いねぇ」
「おうよ! オメェ達! 酒分の働きをみせろよ!」
「「「あたぼうよ!」」」
酒の為なら命すら賭けそうなドワーフさん達。ちょっと、心配になるレベルだな。酒を渡せば、なんでもしそうで怖い。こちらとしては、チョロくて良いけど。
「おーし、まずは一発目! 行くぞぉー!」
「「「おぉーー!!」」」
『ガチャ、ギギィーーーガチャ・・・・』
「準備出来たぜー!」
ドワーフさん達が投石機の準備を、僅か十秒足らずで済ませてしまう。さすがドワーフである。こう言うのは強いなと、素直に思ってしまう。弾には削って丸くした石。それもバスケットボールより、少し大きい物を使ってる。
よし! さて・・・・「それじゃあ・・・・発射!」
「おうよ! おら!」『ガチャ・・・・ビューーーーン!』
「「「「「「「「おぉーーー!!」」」」」」」
発射と共に、ギャラリーから歓声があがる。俺も思わず声を出した一人だ。なんせ、凄かった。発射台から、ブォンと飛んでいく様子は、見る価値のあるものだと思う。
さて、発射された石は・・・・おぉ、結構飛んでるな!!
発射台から発射されて石の弾丸は、弧を描きながら飛んでいき、数秒もすると石は見え無くなった。
「見え無くなったなぁー。結構飛んだよね?」
「おう、当然よ! 計算では、三百メートルは飛ぶ筈たがらな!」
「へぇーー!」ふむ、これは攻城兵器に向いてるかな?
「うん、じゃあ次は、散弾を試してみようか?」
「おう、この石をたくさん詰めた奴だな?」
「そう、それ!」
城を取り囲んだ、敵の軍勢を倒す事を考え作った散弾。広範囲に、野球ボールくらいの石を百個程バラ撒く散弾。喰らったら痛いよ?
『ガチャ・・・・ガチャ。ギギィーーー』
「おし! 出来たぞ坊主!」
「そんじゃあー・・・・発射!」
『ガチャ・・・・ビューーーーン!』
「「「「「「「おぉーー!!」」」」」」
『ヒューーーン・・・・・・ボスボスボスボスボス!!』
うん、射程距離は単発より落ちるな。
散弾は、百メートルほどしか飛ばなった。
何より・・・・石の落ち方と言うか、散り方? と言うか。思った感じと違うなぁ。「まあ、成功と思おう」
「若様? これは成功で宜しいのですか?」
「成功でいいんじゃない? 初めての物としては、上出来だと思うよ、オットー」
「おい、坊主! 聞き捨てならんぞ!」
おっと、ドワーフの琴線に触れたか?
「いや、いい出来だと思うよ。それでなんだけど・・・・」
「なんじゃい?!」
「取り敢えずなんだけど、コレを・・・・五十台くらい作って欲しいんだけど」
「「「「ご、五十だと!」」」」
「うん」
俺の注文に、ドワーフさん達が顔色を変える。多かったかな?
でも、これぐらいはいるよな?
「無理かな?」
「む、む、無理じゃねぇ! ただ・・・・」
ただ? なんだ? あっ! アレか?
「分かってるよ! アレでしょ?」
「そう! アレだ! アレさえ貰えれば、俺達は文句ねぇ!」
「分かった! 前金代わりに、工房に届けておくから!」
「よっしゃあー! 大仕事前の祝いに、一杯やるぞー!」
「「「おぉーーー!!!」」」
「ほんとチョロいな」
「若様は、本当にドワーフの扱いが上手いですね」
よし、これを城に設置さして、守りを固めるぞ。
特に岐阜城に・・・・早く設置しないとな!
・・・・爺ちゃんの所にもう一度行くかな。真珠城の完成もあるし。
「「「「宴だーーー!!!」」」」
「酒をやれば、働いてくれるけど。うるさいのが問題だな」
「ですね」
旨い酒が飲めるからと、大騒ぎするドワーフさん達を、俺とオットーは遠くから見つめていた。
「マジでちょっとうるさい」




