クロスボウ部隊の強化
「中々様になって来たね」
「はい、命中率も良くなって来ました」
募集した屯田兵に創設した、クロスボウ部隊の訓練を始めて一ヶ月あまり。皆、クロスボウにだいぶ慣れたのか、的に命中する確率も、格段に向上していた。
「うん、うん。だいぶ良くなったけど。やっぱり、動かない的じゃ限界があるね」
「確かにそうですが・・・・動く的などありませんよ?」
「そうでも無いよ。俺の魔法を使えばね」
「えっ、まさか!」
「そのまさかさ、オットー。ふっはっはっはっ! と言っても、今日は無理だから三日後くらいにしとこう。みんなには、そう言っておいて」
「・・・・分かりました」
城に帰宅後・・・・。
「それで、ジークスヴェルト。今度は何をやらかす気だ?」
父さんから、やらかす前提で問いただされた。ちょっと悲しい。
「・・・・酷くない? やらかす前提なのは・・」
「自分の胸に手を当てて、よく思い起こしてみろ。やらかさ無かった事などないだろうが!」
・・・・・・うっ、言い返せない。
「それで、何する気だ?」
「別にたいした事じゃないよ? 魔法兵を使って、実戦さらながの、訓練をするだけだから」
「・・・・ふむ。それは・・・・怪我とかしないよな?」
「あくまで訓練だよ。怪我人を出す程の騒ぎにするつもり無いから!」
「・・・・うーーん、ならいいだろう。そのかわり、父さんも見に行く。ちょっと心配だからな」
「・・・・単に父さんが見たいだけなんでしょ」
「ち、違うぞ! ジークスヴェルトの父として、責任があるからな」
「はいはい、そう言う事にしとくよ」
素直に、気になるって言えばいいのに。
「貴方達、食事中は静かに」
「「・・・・・・・・」」
そう言って、母さんは自分の手や、胸元を見てうっとりしている。さっきから、別な意味でうるさい。
「母さんこそ、家族だけの夕食に。わざわざ、それを着けなくても」
母さんの指には、ダイヤモンドの指輪。首には、ダイヤモンドのネックレス。耳には、ダイヤモンドのイヤリング。俺が母さんにプレゼントした、ダイヤモンドのジュエリー、三点セット。
かなり気に入ったのか、プレゼントしてからずーーーっと着けてる。正直、キラキラと眩しくて目が痛い。
「ジークちゃんの贈り物なんだから、大切に着けてるのよ」
「みんなに見せて、自慢したいだけでしょ」
「ち、違うわよ! そんなんじゃないわよ?!」
夫婦は似ると言うが・・・・ほんと、そっくりだ。
「あううーー!」
「リィーナは、あーなるなよ」
「あうあ?」
リィーナはいい子に育ってほしい。・・・・母さんみたいにはならんでくれ。頼むから。
それから三日後・・・・。
「訓練にはちょうど良い天気ですなぁー若様!」
「なんで、ジィまで居るの?」
「すいません。どうしても見ると言って・・・・」
「まあ、いいんだけど。それじゃあ、始めよう!」
「「「「「「おぉぉー!!」」」」」」
「随分と士気が高いな?」
「ベルハルト様、若様は皆に、結構慕われておりますよ」
「ほう、ジークスヴェルトは、中々人望があるのだな」
「さすがは、若様ですなぁー」
「それで、ジークスヴェルト。どのような訓練をするのだ?」
「実戦に近い訓練だよ。これでね・・・レギオン!」
「「「「「「おぉーー!」」」」」」
ズラッと、千体の魔法兵が現れる。その数と、槍と盾を装備し、
威風堂々とした姿に、歓声が思わず上がった。
「おぉ、これだけの数が現れると、なんとも壮観だなぁー」
「ですな、ベルハルト様。見事な兵隊達のございます! 若様と戦場を駆けるのが、楽しみでございます!」
「それで、ジークスヴェルト。どうするのだ?」
「まあ見てて。それじゃあ・・クロスボウ部隊のみんなは、この柵の中に居てね。そんでもって、ここから攻撃してね。魔法兵は・・・・向こうから進撃してくるから、狙って撃って見て!」
「「「「「・・・・・・・・」」」」」」
「あれ? みんなどうかした?」
さっきまでの元気が、嘘のように静まりかえる。
「若様。恐らく若様の魔法兵ですよ!」
「魔法兵? あぁ、そうか。みんな、魔法兵は魔法だから気にしないで攻撃してね」
きっと、人の姿をしてるから。攻撃に躊躇いが出たんだな。みんな優しいな。
「いえ、そうでは無く。魔法兵に、ビビったんだと思いますよ」
「えっ、そっち?」
「はい。そっちです」
オットーの言葉を肯定するように、うんうんと、みんな一斉に首を縦に振った。
「・・・・兎に角、始めるよ。コレは実戦じゃないから、ビビってもいいけど。いざと言う時のために、慣れてもらうからね。分かった?
みんな! 返事は?!」
「「「「「「は、はい!」」」」」」
「それじゃあ、訓練開始!」
百五十メートル程の離れた距離から。槍と盾を装備した魔法兵隊を、横一列に百人に、縦に十列で隊列を組ませて、進撃させる。俗に言う、ファランクスと言う奴だ。詳しくは知らないので、あくまでもどきではある。しかし、魔法兵は俺の思い通り、隊列を一切乱さず動くさまは、かなり恐ろしく見える。故に・・・・。
「「「「「ひぇーー!」」」」」
となった。
「ちょっと、みんな! まだこの距離でビビってどうすんの!」
「ですが・・・・」「そうだ、怖ぐてしかねぇだ」「おら達には無理たぁ」
「戦わずして、戦意を奪うとは! さすが若様!」
ジィ、ちょっと黙って!
「ジークスヴェルト、さすがにアレが迫って来たら、正規の兵でもこうなると思うぞ」
「うーーん、仕方ない。今日は兎に角、慣れる事から始めよう」
「慣れる所からですか?」
「うん。この様子じゃ、訓練にならないもん。まずは、魔法兵の威圧に慣れてもらって、そこから本格的な訓練に入るしかないよ」
「・・・・ですね。みんな怯えてますし」
ふう、思った通りには中々いかない。まあ、仕方ない事ではある。こう言うのは、積み重ねが大事だしね。




