フライフィッシング
「最近、だいぶ暑くなって来たね」
「そうですね若様」
「暑くて畑を耕すのもひと苦労だよ」
「・・・・耕しているのは魔法兵ですが」
木陰でのんびりとらしながら、魔法兵を使って畑を耕す俺を、オットーは呆れた顔で見ていた。
「もう慣れましが・・・・」
何に慣れたかは知らないが、何かムカつくのは確かだ。それにしても、木陰でも今日は暑いな。夏が近いなぁ。
「引っ越しも終わって良かったよ。夏場に引っ越し何てしたら、倒れる人が出たかも」
「なそうですね。さすがに暑い中は・・・・大変でしょう」
新しく建てたお城へ、引っ越しはすんだ。前の数倍の広い城、広い部屋に、母さんは大満足。ただ、城下町はまだ・・・スカスカの状態だ。そもそも、数万人規模の人口を考え建設した。だから仕方ないと言えば仕方ない。その内、一杯になると思う。
そうそう、名前も決まった。その名も! ハウゼル! 決めたのは父さんだ。どう言う意味かは知らないけど、良い名前だと思う?
「引っ越しもすんで、難民の受け入れと食料問題も解決。
順調順調。それにしても・・・・暑い」
「ですね。そろそろ、お昼ですから益々暑くなりますよ。その前に帰りましょう若様」
「うん、そうしよう」
これ以上暑くなる前に、城に帰ろう。
だがしかし・・・・。
「城の中も暑い」
「ジークスヴェルト。だらけ過ぎだ」
「父さん・・・・だって暑い」
「暑い暑い言ってると、余計に暑くなるぞ」
暑いものは暑いよ父さん。
「川に涼みにでも行こうかな」
「それは良いかもな」
「そうだ! 釣りをしよう!」
「釣りかぁー。いいな釣り」
「父さんも行く?」
「うし! 行くか!」
「母さんとリィーサも行くかな?」
「うーん、どうだろうな? 聞いてこい」
「うん、そうする・・・・・・・・って事はなんだけど。行く?」
「涼しそうね。行くわ」
「それじゃあ、準備しなきゃ!」
*****
「と言う事で、やって来ました・・・・川に」
「川の近くだと、少し涼しいわね」
「そうだな。ほーらリィーナ、川だぞ」
「うあうあ」
家族水入らずでピクニック! とはいかない訳で・・・・。
「この辺りの安全を確保しろ!」「そちらの警備は、お前達だ」
「おい、そこ! さっさと荷を運べ!」
「この辺りに敷きものを」「あなたはそちらを手伝って」
「奥様、こちらはどうしましょう」
大所帯・・・・。護衛にメイドを引き連れ、川にやって来ました。
「こんなに、大袈裟にしなくても。そう思わない? オットー」
「仕方ありませんよ若様」
まあ、そうだよね。おっと、暑いからあれを使わないと。
「オットー、アレを建てるから手伝って!」
「アレですね」
アレとは一体! まあ、ただの日除けのテントだけどね。
「オットー、もうちょい引っ張ってぇー」
「こうですか?」
「うん、オッケー」
「オッケーって、何です?」
「あぁ、ごめん。良いよって事だよー! じゃあ止めてー! よし完成。後はパラソルも・・・・よし、準備万端!」
「あらー、これなら日除けが出来るわね」
「母さんとリィーナ用にね」
「あうー」
「ふふふ、リィーナも喜んでるわね。川の水も気持ち良さそうね」
「足だけでも入れば?」
「そうね。リィーナもチャプチャプする?」
「ううー!」
「したいみたい。だったらリィーナと母さん用に・・・魔法兵!
お前達! 石をどかして穴を掘るんだ! かかれ!」
「おい、ジークスヴェルト。今度は何をやらかす気持ちだ?」
「酷いよ父さん。何でやらかす前提なの!」
「決まっているだろ、前科があるからだ。それも複数のな」
「ぶーー!」
軽く抗議はするが、本当なので仕方ない。そんな事より、母さんとリィーナ用のプールを・・・・うん。足湯だなコレ。
完成したのは、見た目露天風呂。ただし、足を浸けるだけなので、ほぼ足湯だ。
思ったのと違うけど・・・・まあいいや。
「所でジークスヴェルト。釣りをするんだろ? 竿はどうした?」
「あるよ・・・・はいこれ」
収納していた釣竿を、取り出して父さんに見せる。すると父さんは「コレ釣り竿か?」と首を傾げた。俺が用意した釣り竿は、フライフィッシングなどに使う物だ。リールも毛針もそれ用に作ってみた。と言うのも、このあたりの川には、ニジマスやイワナに似た魚が多いのだ。俺は、前世で釣り好きだった事もあり。フライフィッシングをやってみたかったのだ。
「コレはどう使うんだ?」
「えーと、やって見せるね」この時の為に、密かに練習していたのだ!
「せーの、よっと」
フライフィッシング独特の動きで、毛針を遠くに飛ばす。
すると・・・・。
「「「「「おぉーー!!」」」」」
父さんだけでなく、護衛の騎士達からも驚きの声があがった。
「こうゆう風にして、この毛針を遠くに飛ばすんだ」
「若様、この毛針と言うは・・・・」
「虫に似せて作ったんだ。オットーも興味あるの?」
「あ、はい。釣りは好きで、子供の頃からよく行ってました」
「へぇー。じゃあ、コレあげる」
「いいんですか?!」
「うん、別に大丈夫。まだ、たくさんあるから」
そう言って、俺は沢山の釣り竿を取り出して見せる。
「ジークスヴェルト様! わたくしにも頂けないでしょうか?」
「若様! 是非俺にも!」「いえ、わたくしにも!」
「はいはい、分かったから。欲しがってくれるのは嬉しいけど。 まずは、護衛の仕事ちゃんとしなよ?」
「「「「「はっ! 申し訳ございません!」」」」
「さて、釣りを始めよー!」
*****
釣果は結局、たったの一匹だった。夕方まで粘ってコレだ。それもちっちゃい。うーん、毛針の改良が必要だな。魚の好みも調べる必要がある。
彼は知らない。このフライフィッシングが、のちの貴族達の間で、野外における三大嗜好と呼ばれるものになる事を、彼はまだ知らない。




