開拓した土地のアレコレ
六歳になりました。
コツコツと開拓を始めて一年。この辺もだいぶ開拓したな。
俺の目の前には、かつて森だった場所に広がる畑。広さはどのくらいだろうか? よく使う東京ドームで・・三、四個くらい? いや、もっとかな? 兎に角、広大な畑が広がっている。
「凄い眺めですね。若様一人でここまで・・・・しかもここで三箇所目ですし」
「別に俺一人と言う訳じゃないけど?」
「確かに大勢ですけど、若様の魔法ですよね?」
「まあそうだけど」
「実質一人だと思いますよ」
・・・・まあ確かに。
「そろそろ、日が暮れます。帰りましょう若様」
「そうだね。帰ろうオットー」
帰って風呂に入った後の夕食の時間に、父上が開拓した土地について聞いて来た。
「所でジーク。あの土地はどうするのだ?」
「ん? どうするって・・・・どうするの?」
「考えて無かったのか?」
「多少は自分で使うつもりだったけど・・・・開拓し過ぎたかな?」
この世界、食料自給率が低い。農家が多い田舎のウチでも、他所から小麦を買っている状態。なので、畑を増やしてみた訳だが・・・・コレと言って植える物が無い。
麦だけではなく、米やとうもろこしに、大豆などの穀物類を栽培したいが、そもそもあるのか? と言う状態だった。所が最近、それらを見つけたのだ。それも、森の中で・・・・まあ、それは今度話すとして、使い道か・・・・。
「父さんの好きにすれば?」
「好きにとは?」
「家臣にあげれば良いと思う」
「ふむ、褒賞として土地をか・・・・ふむ」
「あれ? 何か問題でもあった?」
えっ、もしかして何か問題でもあるの?
「いや、人選をどうするかが問題でな」
「ちょっと、あなた。食事中にする話では無いですよ。ジークも、今は食事に集中しなさい」
「はい、母さん」
「すまないシエナ。ジーク、話は食事の後にしよう」
「所で母さん」
「何かしら」
「リィーナが、零してる」
「あうー」
一歳になる妹のリィーナが、離乳食をボタボトと零していた。
「・・・・えっ! あらあら。誰か、ふくものを!」
「はい、奥様」「只今お持ち致します」
☆☆☆
「それで、どうするの?」
食事の後、父さんの部屋に呼ばれ、開拓した土地についての話をする事に。
「うーん。一応、何人か候補はいるが・・・・」
「だったら、何でそんなに悩むの?」
「誰かを取り立てれば、別の所と確執を生んでしまうものだ。だから、慎重に決めないといかん」
「へー、大変だね」
「大変も何も、将来この領地を継ぐのはジーク、お前だぞ?
今ここで決める事は、将来のお前の問題に直結するぞ」
「あっ! そう言えば!」
「まったく・・・・ジークは賢いが、どこか抜けているな」
「えへへ、ごめんなさい」
「まあ、まだ子供のお前に言う事でも無いか。さて、どうしたものか。一箇所は、ジークの後ろ立てとして、ルーファスにとは思っているが・・」
「ルーファス? あぁ、ジィの事か。そんで、オットーのお爺さんの。ジィとしか呼ばないから名前忘れてた」
「・・・・兎に角、ルーファスの家・・・・サー・ベッジ家に一つは任せてみるか。後は、残りニ箇所・・・・」
「レメーネの家は?」
「レメーネ? あぁ、ライネルの娘か。ふむ、サー・スタルツ家か。うん、悪く無い人選かもな。あそこは、土地無しの騎士家だからな。働きぶりも悪くないし、いいかもしれんな」
ルーファス・・・・ジィの家は土地持ちの騎士家。あっ、因みにサーは騎士家と言う意味だ。ジィの家は長くウチに仕えていて、信頼出来る忠臣だ。レメーネの家、スタルツ家は、ウチに仕え始めて十年程しか経っていない。そもそもは、別の貴族に仕えている家だ。
と言うのも、母さんの護衛として来た家なのだ。
母さんは、テンネイス出身の貴族で、隣りの地方出身。ナインテイルもテンネイスも、北海道くらいの大きさがある。母さんの実家の領地まで、馬でも八日は掛かってしまうくらいだ。
兎に角、スタルツ家は外様なのだが、基本嫁入りの時には、複数の護衛と側仕えがついて来る。スタルツ家は、その一つと言う事だ。
「レメーネも喜ぶだろうな」
「ん? まさかその為か?」
「その為?」
「いや、好きとかそう言う・・・・」
「仲良い友達だけど・・・・そんなんじゃ無いよ?」
「あぁ、そうか・・・・ジークにはまだ早かったな。まあ、スタルツ家で問題無いだろう。残りは一つ・・・・」
うーん、他に・・・・特に思いつかない。案外難しいなぁ。ある程度、信頼もないといけないし。
「最後のは保留にしとくか。取り敢えず、二つは決まった。今後の働きぶりで決めるとしよう」
「そうだね。あっ!」
「ん? どうした」
「父さんにお願いがあったの忘れてた」
「何だ?」
「えーとね。お城を建てても大丈夫?」
「はぁーーあ?」
「へへへっ」
父さんは息子の突然のお願いに、目を見開いて驚いた。