真珠のイヤリング
「んぬぬーーーー。ふう、出来ちゃったな真珠」
為しに、魔力変換生成による錬金魔法で、真珠を作れるか試した結果・・・・出来てしまった。
「うーむ。ちょっと色がなぁー。慣れていけば大丈夫かな」
錬金魔法で生成した真珠は、光沢が少しイマイチ。色もホワイトパールと言うより、ブラック? いやグレーかな?
ヤミ貝の真珠層は、ホワイトより何だけどな。魔力変換生成は、コピーと言う訳じゃ無いのか。
まあ、作り続ければ、いい物が出来るようになると思う。
「さて、問題はここから」
錬金魔法で生成は出来た。しかし、ゼロから真珠を作り出すとなれば、色々問題になるだろう。なので・・・・。
「ヤミ貝の真珠層から、真珠を作り出せるか試してみようっと」
まずは、貝の真珠層を剥がしてみる。貝殻を一つ、机に置いて、貝殻に魔力を流していく。真珠層とそれ以外を、流した魔力から真珠層のみを感知し、真珠層を貝殻から剥離させていく。
「ゆっくり・・慎重に・・。よし・・取れた!」
薄っぺらな真珠層を、綺麗に剥がせた。厚さは0.1とか2の世界、鼻息で飛んで行きそうだ。ペラペラだと扱いにくいので、それを丸める。薄い真珠層が、中心に集まっていき、米粒の半分程度の大きさになった。
貝殻一つだとこんな物か。まあ、真珠層全てで作る必要は無いよな。養殖真珠みたいに、核となる物を作って、その周りを真珠層で包めばいいかな。
「そうと決まれば! まずは・・・・真珠層をどんどん剥がして行こう!」
籠に入った貝殻を、次々と真珠層を剥離していく。最初の方は、一個あたり一分程かかったが。慣れてくると、十秒とかからなくなる。
・・・・・・・・ふう。これで終わりっと。
最後の貝殻から、真珠層を取り終えると。机に溜まった、真珠層の小さな粒を見つめた。
うーん、これでだけか。結構な量から、真珠層を剥がしたが。取れた量は精々1センチの真珠二個分と言った所だ。
「あれだけ頑張ってコレだけ・・・・しょうがないか。核をちょっと、大きめにしちゃえ」
今度は真珠の核作りだ。これも、貝殻から作る。真珠層を剥離させ、白くなった貝殻の内側から、白い部分だけを魔法錬金で削っていく。ヤミ貝の表側は真っ黒なので、そこだけ残していく。真珠層より量は多いので、貝二個分で充分な量になった。
「形はどうしよう・・・・まん丸は止めた方がいいかな?」
核の形が、そのまま真珠の形になるのだが。まん丸にするのは止めた方がいいかな? 恐らく、多くの人は真珠って丸でしょ? と思う人もいるかも知れないが。まん丸の真珠は全て、養殖物である。真珠は、貝の中に異物が入り込む事で作られる。丸い真珠は、丸い核を貝に仕込む事で、丸い真珠を作っている。自然界には丸い物が無いので、丸い真珠が作られる事はほぼ無いのだ。
なので・・・・まん丸の真珠が世に出たら、大騒ぎ所では無いのだ。
「うん、涙型にしよう! 涙型なら大丈夫だよね? そんで持って、イヤリングにしてみようかな」
貝殻から削りだした白い部分を、魔法錬金で涙型に成形していく。それを、カッチカチに固める。大きさは、縦に約八ミリ、厚さは六ミリに作る。その上に、真珠層を塗り込む様に貼っていく。完成した真珠は、縦に十四ミリ。厚さは十ミリ。中々良い出来だ。
「ぬうーーぬ! っと! 出来た!」
「後は、イヤリングの部分を金と銀の合金で・・・・ふぬーーー! 完成!」
むっふーー! 我ながら、中々の出来! 早速母さん達に見せてみよう!
「母さーーん! コレ見てーー!」
「ちょっとジークちょん! 使者の方か来てるのよ。騒がしくしちゃダメよ」
「コレ見て母さん!」
「どうしたって言う・・・・・・・・」
俺の手にある真珠のイヤリングを見て、母さんは沈黙し固まった。品定めする様にジロジロと見つめ、俺の顔を見た。
「・・・・ジークちゃん? コレはどうしたの?」
「作った」
「作った? ジークちゃんが?」
「シエナさん、どうしたのです? ジークちゃん。いま忙しいから後で・・・・」
今度は、おばあちゃんが沈黙して固まった。大丈夫? かと思った瞬間。おばあちゃんは、俺の肩をガシッと掴んだ。
「ジークちゃん! コレどうしたの!」
「お義母様! ジークちゃんが作ったらしいの!」
「作った? コレを?」
「はい!」
何か怖い。コレは見せはいけ無い物だったのでは!
「シエナ義姉様、お義母様。どうされたのです?」
はっ! 更にアイーシャさんが! マズイ! 何か、非常にマズイ気がして来たぞ。
「アイーシャさんコレを見て」
「?。どうしたと言うのです、お義母様・・・・!」
逃げたいが・・・・母さんが俺の後ろに回り込み、肩をガッチリと掴んで、逃げられない。
「ジーク君? コレはどうしたの?」
「作ってみました。贈り物にいいと思って・・・・」
「ジークちゃん。確かに素晴らしい贈り物だと思うわ。でも、お母さんにはくれないの?」
「えぇ。とてもいい贈り物ね。・・・・おばあちゃんにはくれないの?」
「ジークちゃん。きっと、エルナさんも喜ぶわ。・・私にもお願いね」
にこやかに微笑んでいるが。三人からは、私達の分も作ってねと、強い圧力しか感じない。
「作りたいのはやまやまだけど。もう、材料が無い」
「「「!!!」」」
あっ、凄くショックを受けた顔をしてる。
「材料は何かしらジークちゃん?」
「ヤミ貝を使ったけど・・・・もうヤミ貝は無いよ、母さん」
「ヤミ貝? ヤミ貝って・・・・あの真っ黒の?」
「そう」
「ヤミ貝・・・・毎年、春先によく食べてたわね。その貝を使ったのかしら?」
「うん、おばあちゃん。えーーと。あっ、居た! この人が、ヤミ貝の貝殻をくれたよ」
「ふえっ? はえぇっ?」
「「「ん?」」」
突然三人から目線を集めた事に、メイドさんはビックリして、変な声をあげた。
「確かあなたは・・・・」
「お義母様。三年前から働いてる、エネイです」
「そうそうエネイね。エネイ、他にヤミ貝の貝殻はないのかしら?」
「えっ? あ、はい! 若様・・・・ジークスヴェルト様に渡した物で全部です奥様」
「そう・・・・」
「エネイ。何であなたは、ヤミ貝の殻を取っておいたのかしら?」
「はい、若奥様。内側の所が綺麗でしたので・・・・」
「そう・・・。あなたが取っておく様になったのは、三年前から?」
「はい・・・・そうです。それがどうかしましたでしょうか?」
「いえ、それまではどうしてたのかしら?」
「アイーシャさん! それだわ!」
おばあちゃんが何かに気づいたらしく、大声をあげた。
「マーサ、マーサ来てちょうだい!」
「はい奥様! マーサはここに」
調理場の奥から、ふくよかなベテランメイドさんがやって来た。
「どうされましたか? 奥様」
「マーサ。ヤミ貝は、どう処分してました?」
「ヤミ貝ですか? それならエネイが欲しいと言うので・・・・」
「そうではなくて、エネイがここで働く前です」
「それでしたら・・・・裏庭に穴を掘ってそこに廃棄してました」
「「「!!!」」」
「まだあるからしら!」
「はい。十数年間そこに廃棄してましたから、相当な量です。そうそう無くならないかと」
「人を集めて回収して来て頂戴!」
「えっ、今ですか?」
「そう今!」
「おばあちゃん。おもてなしの準備は?」
「そうですよ、お義母様。今メイド達に抜けられると準備が出来なくなります」
「えぇ。シエナ義姉様の言う通りです。ここは・・・・」
三人が俺を見つめる。逃げ・・・・ガシッ!
「どこ行くのジークちゃん?」
「そうよジークちゃん。おばあちゃん達は忙しいから」
「ジーク君にお願いするわ」
「えぇーーー!!」
「奥様。庭師のオースさんに頼んで、若様を手伝ってもらいましょう」
「えぇ、そうね。ジークちゃん、お願いね」
俺はこの時、嫌と言う程知った。女性はジュエリーに目がないと。
「こっちだぁ、若様。こっちにあるだよ」
お爺さん庭師のオースさんに案内されて、貝の廃棄場所にやって来た。はあ、何で俺が。
「ここだぁよ、若様」
「結構あるな。十数年分って言ってたしな」
掘られた、直径五メートル程の穴には、大量のヤミ貝が廃棄されていた。
「こんなんどうするだか?」
「ちょっとね。それにしても・・・・土で汚れてるじゃん。それにこの量・・・・回収も一苦労だよ」
ん? ちょっと待て! おばあちゃん達、何か急かす感じだったけど。まさか、これから作れって事なの?!
「若様? どうしただか?」
「何でもないよ・・・・オース。兎に角、回収しよう」
「んだ」
はあー。麻袋にヤミ貝を、ひたすら詰めていく俺であった。はあー。




